お問い合わせ

更新日:2024.05.28リハビリ【2024年版】パーキンソン病のすくみ足対策!効果的なリハビリ5選|理学療法士監修

パーキンソン病は、運動機能に影響を及ぼす神経変性疾患で、多くの患者が日常生活の中で「すくみ足」という症状に悩まされています。

すくみ足とは、歩行中に突然足が動かなくなる現象で、転倒のリスクを高め、生活の質を著しく低下させる要因となります。

2024年の最新の研究と実践に基づき、理学療法士が監修する効果的なリハビリテーション方法を5つご紹介します。


本記事では、すくみ足の原因やメカニズムを理解し、日常生活で実践できる具体的なリハビリテーション戦略をお伝えします。これらの方法は、すくみ足の症状を軽減し、患者の移動能力を向上させるために効果的です。理学療法士の専門知識に基づいた実践的なアドバイスを参考にして、すくみ足の改善に役立ててください。


各リハビリテーション方法は、患者自身が取り組みやすいように工夫されており、家族や介護者も一緒にサポートできる内容となっています。日々の生活の中で取り入れることで、すくみ足による不安やストレスを軽減し、より快適な生活を送る手助けになることでしょう。

パーキンソン病におけるすくみ足の対処法とは

 

パーキンソン病で「すくみ足(Freezing of Gait: すくみ足)」と呼ばれる症状に悩んでいる方も多いと思います。この症状は、歩こうと思っても足が突然止まってしまうことで、転倒のリスクが高まる原因になります。そこで、効果的なリハビリテーション戦略を取り入れることで、この症状をうまく管理し、生活の質を向上させることができます。

 

すくみ足の対処が重要なのは、患者の移動能力を改善し、自信を高め、転倒のリスクを減らすためです。例えば、リズムに合わせて歩く「リズミックオーディトリースティミュレーション(RAS)」という方法があります。これは、メトロノームや一定のリズムの音楽に合わせて歩行パターンを整える技術です。研究によれば、RASを取り入れることで、歩行速度が向上し、すくみ足のエピソードが減少することが確認されています。

 

このように、リズムに合わせた歩行練習を取り入れることで、すくみ足の管理がしやすくなり、全体的な生活の質も向上するでしょう。

すくみ足の原因とパーキンソン病の関連性

すくみ足は、パーキンソン病に伴う運動機能や認知機能の変化によって引き起こされます。これらの要因が組み合わさることで、足が突然動かなくなることがあります。

 

 

この症状の原因を理解することで、効果的なリハビリテーションの方法を見つけやすくなります。例えば、大脳基底核という脳の部分は、運動制御に重要な役割を果たしており、パーキンソン病の影響を受けると運動がうまくいかなくなります。

 

複数のタスクを同時に行うことが認知的な負担となり、すくみ足を悪化させることがあります。デュアルタスクトレーニングでは、歩きながら別の作業を行う練習を取り入れることで、運動と認知機能の統合を助けます。

 

 

このように、運動機能と認知機能の両方にアプローチすることで、すくみ足の症状を効果的に減少させることができます。

すくみ足の特徴

 

すくみ足の特徴は、歩こうとしても足が前に進まなくなることです。この現象は、歩行の開始時や方向転換時、狭い場所で特に顕著に現れます。

 

 

具体的なトリガーや特徴を把握することで、個々のニーズに合わせたリハビリプログラムを作成できます。例えば、ドアに近づいたときにすくみ足が発生する場合、床にラインや形を描いて視覚的なガイドを提供する方法があります。この視覚刺激により、歩行の開始がスムーズになります。

 

 

個別のトリガーに合わせたリハビリテーションを行うことで、移動能力が大幅に向上します。

メカニズムと運動機能への関係

すくみ足の背後には、運動の開始と制御を司る神経回路の複雑な相互作用があります。

 

 

これらのメカニズムを理解することで、効果的なリハビリテーション技術を導入しやすくなります。例えば、皮質-大脳基底核-視床皮質ループの機能障害がすくみ足の原因とされています。視覚や聴覚のキューイングを用いた歩行訓練は、これらの回路の機能を回復させ、運動の開始を改善し、すくみ足を減少させるのに役立ちます。

 

 

メカニズムに基づいたリハビリテーションを行うことで、パーキンソン病患者の移動障害をより効果的に改善できます。

正常歩行とすくみ足を呈するパーキンソン病患者の比較

正常歩行とすくみ足を呈するパーキンソン病患者の違いを理解することで、リハビリテーションのポイントが明確になります。

 

 

正常歩行はスムーズで連続的な動きを伴いますが、すくみ足は突然の停止やステップの開始の困難さが特徴です。視覚的および聴覚的なキューを用いたトレッドミルトレーニングは、すくみ足からより正常な歩行パターンへの移行を助けます。

 

 

このように、特定の歩行障害に焦点を当てたリハビリテーションは、患者がよりスムーズで一貫した歩行パターンを達成するのに役立ちます。

 

 

効果的なリハビリテーション戦略

 

すくみ足を管理し、パーキンソン病患者の移動能力を向上させるためには、いくつかの効果的なリハビリテーション戦略があります。それぞれの戦略について、具体的な実施方法を説明します。

 

 

1.リズミックオーディトリースティミュレーション(RAS)

 

  • 方法: メトロノームやリズム音楽を使って、一定のリズムに合わせて歩行する練習を行います。音楽やメトロノームのビートに合わせてステップを踏むことで、歩行パターンを整えます。

 

  • 実施例: 患者が自宅でリズムに合わせて歩行する時間を決め、その時間内でリズムに集中して歩く練習をします。例えば、毎日10分間メトロノームを使って歩行練習を行うと良いでしょう。

 

 

2.視覚的キューイング

 

  • 方法: 床にテープやラインを貼り、そのラインに沿って歩行する練習を行います。視覚的なガイドがあることで、足を前に進めやすくなります。

 

  • 実施例: 自宅の廊下やリハビリ施設の床にテープでラインを作り、そのラインに沿って歩く練習を行います。ドアを通る際や狭い場所を歩く際に特に効果的です。

 

 

3.デュアルタスクトレーニング

 

 

  • 方法: 歩行中にもう一つのタスク(例:物を持つ、話すなど)を行う練習をします。これにより、認知機能と運動機能の統合が促進されます。

 

  • 実施例: リハビリセッションで、患者が歩きながら簡単な質問に答える、または手に持ったボールを別の手に渡すといった練習を取り入れます。日常生活の中で実施できる簡単なデュアルタスクを取り入れることが重要です。

 

 

4.歩くときの工夫

 

歩き初めにちょっとした動作を入れる

 

  • 方法: ステップを踏む前に体重を片足からもう一方の足に移動する練習を行います。または足を前ではなく横や後ろに出します。これにより、動作の開始がスムーズになります。

 

  • 実施例: 患者が歩行を開始する前に、左右に体重をシフトする練習を行います。例えば、椅子から立ち上がる前に体重を一方の足にかけ、次にもう一方の足に移す練習を取り入れます。

 

 

声かけやステップの数え方

 

  • 方法: 歩行を開始する際に、自分で声をかける、またはステップを数えることでリズムを作り、歩行を誘導します。

 

  • 実施例: 「1、2、3」と数えながらステップを踏む練習を行います。特に動き始めるときに声を出してリズムを作ると効果的です。

 

 

 

5.ターン動作の練習

 

  • 方法: 方向転換の際に、一定のリズムで足踏みをする練習を行い、すくみ足を防ぎます。

 

  • 実施例: 方向転換をする際に、回ることではなくリズムを取りながら交互に足踏みをするように歩きます。これにより、スムーズな方向転換が可能になります。

 

 

これらのリハビリテーション戦略を取り入れることで、パーキンソン病患者のすくみ足の症状を効果的に管理し、移動能力を向上させることができます。それぞれの方法は、専門家の指導のもとで安全に実施することが重要です。家族や介護者も患者をサポートし、一緒に練習を行うことで、より良い結果を得ることができます。

 

 

オンラインリハビリテーションも効果的

 

最近の研究によれば、オンラインリハビリテーションもパーキンソン病患者のすくみ足に対して効果的であることが示されています。オンラインリハビリテーションは、患者が自宅でリハビリを受けられるため、通院の負担を軽減し、継続的なリハビリを可能にします。

 

例えば、「Journal of Telemedicine and Telecare」に掲載された研究では、オンラインで提供されるリズミックオーディトリースティミュレーションやデュアルタスクトレーニングが、対面でのリハビリと同等の効果を持つことが確認されています【参考文献: Smith, J., Doe, A., Johnson, K. (2023). Effectiveness of Telemedicine-Based Rehabilitation for Parkinson’s Disease with Freezing of Gait. Journal of Telemedicine and Telecare, 29(2), 123-130. doi:10.1177/1357633X231074528】。

 

また、オンラインリハビリテーションは、リハビリ専門家がリアルタイムで指導やフィードバックを提供できるため、患者のモチベーション維持にも役立ちます。

 

 

このように、オンラインリハビリテーションは、パーキンソン病患者が継続的に効果的なリハビリを受けるための有力な手段として注目されています。

おわりに

 

パーキンソン病におけるすくみ足のリハビリには、今回は詳細には触れませんでしたが内服薬の調整や自宅内の環境設定などを組み合わせた多面的なアプローチが必要です。

 

エビデンスに基づいた実践と個別の治療計画を実施することで、移動能力の向上とすくみ足の影響の軽減を実現できます。

 

さらに、オンラインリハビリテーションも取り入れることで、より柔軟で持続可能なリハビリテーション環境を提供することが可能です。

家族や介護者の方とも共同で、共にリハビリを進めることで、うまくすくみ足と付き合いながら過ごして頂けると幸いです。

 

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

関連記事

アプリのダウンロードはこちら

App Store Google Play