更新日:2024.09.19リハビリ言語発達遅滞でも追いつくことはある?
うちの子はことばが遅いのではないかと感じる親御さんは多いかと思います。
筆者も二人子どもがいますが、上に比べて下の方がことばは遅いです。
中には検診などで言語発達遅滞の可能性などをしる方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、言語発達遅滞でも追いつくことはあるのかについて、
筆者の解釈はほどほどに、なるべく論文のままお伝えできればと思います。
皆さんの不安解消に多少なりともお役に立てれば幸いです。
目次
言語発達遅滞とは
言語発達遅滞とは、子どもが通常の発達年齢に達しても言語を理解したり、言葉を話す能力が期待されるレベルに達しない状態を指します。言語発達遅滞には、理解(受容的言語)や話す能力(表出言語)の両方、またはいずれかが遅れている場合があります。これには以下の特徴や原因が関連します。
特徴
- 単語の使用が遅い: 他の子どもと比べて、最初の言葉が出るのが遅い、または単語の数が少ない。
- 言語の理解が難しい: 指示を理解するのが難しい場合があり、複雑な文章や質問に応答するのが困難。
- 発音の問題: 音の正確な発音ができなかったり、言葉のつなぎが不明瞭であったりします。
- コミュニケーション意欲の低下: 他の子どもと比べて、言語を使ったコミュニケーションの試みが少ない。
原因
- 聴覚障害: 聞こえに問題があると、音を認識したり言語を習得する能力が低下します。
- 発達障害: 自閉症スペクトラム障害(ASD)や発達障害がある場合、言語発達が遅れることが多いです。
言語発達遅滞でも追いつける?
言語発達遅滞(言語遅延)が追いつく可能性
言語発達遅滞(言語遅延)が追いつく可能性については、以下の研究からいくつかの重要な点が確認されています。
- 追いつく可能性があるケース
多くの子どもが「遅い話し手」として特定されるものの、追いつく可能性が高いケースもあります。特に、言語遅延が発達初期に表れる場合、5歳までに正常な言語発達に追いつくことが期待できることが多いです(Whitehurst & Fischel, 1994)。ただし、遅延が継続する場合は、後に学習や読み書きに問題が発生するリスクが高まります。
- 特定のケースでは発達遅延が残る
一部の子どもたちは、初期の言語遅延が回復せず、後の発達に影響を与えることが報告されています。特に自閉スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもでは、言語発達遅延が残ることが多く、適切な介入が重要です(Henry et al., 2018)。
- 環境と早期介入の影響
早期の介入が言語発達遅延の改善に大きく寄与することが確認されています。言語発達遅延の子どもに対する適切な治療や教育的サポートは、後の学校での成功に寄与し、言語能力の向上をもたらす可能性があります(Davies et al., 2004)。
言語発達遅滞の予後予測
言語発達遅滞の予後予測について、いくつかの研究結果からの知見をまとめました。
- 早期の言語遅延が4歳時点で続く可能性
2歳での言語遅延があった子どもの約40%が、3歳または4歳時点でも言語困難を持ち続けることが示されています。ただし、早期の言語遅延が必ずしも持続するわけではなく、多くの子どもが発達に追いつくこともあります。リスク因子としては、複数の発達的リスクが存在する子どもが、持続的な言語困難を経験する可能性が高いとされています(Dale et al., 2003)。
- 幼児期の言語遅延の回復パターン
幼児期に言語遅延があっても、多くの子どもが5歳までに回復する可能性があります。しかし、持続する場合は、読み書きや学業においても問題が発生することがあるため、早期の介入が重要です。言語遅延の継続リスクは、遅延の重症度やその他の発達的問題の有無に左右されます(Sylvestre et al., 2018)。
- 自閉スペクトラム障害(ASD)との関連
言語遅延が自閉スペクトラム障害(ASD)と関連している場合、予後はより慎重に考慮する必要があります。ASDを持つ子どもでは、非言語的なスキルや社会的な関わりが、言語の発達に重要な予測因子となることが確認されています(Wodka et al., 2013)。
また、最近の(2020年以降の)研究では次のようなことも明らかになっております。
- 自閉スペクトラム障害を持つ幼児の言語発達予測
自閉スペクトラム障害(ASD)の子どもにおける言語発達の予測因子を研究した結果、微細運動能力や共同注意の開始が、長期的な言語発達に重要な役割を果たすことが確認されました。これにより、ASDを持つ子どもの言語遅延の予後が評価され、早期介入が重要であることが示されています(Bal et al., 2020)。
- スクリーンタイムと幼児の言語遅延
幼児期にスクリーンタイムが長時間続くことが、言語発達遅延のリスクを増加させることが確認されました。この研究は、日常的なスクリーン時間の削減が言語発達に好影響を与える可能性を示唆しています(Maulana & Gunardi, 2020)。
言語遅延の予後は、遅延の原因やリスク要因によって大きく異なるため、早期に専門家による評価とアプローチを行うことが重要です。
言語発達遅滞の改善に親ができること
言葉がでるまでの3ステップ
そもそも、どのようにして人はことばを身につけるのでしょうか。
発達について知っておくことで理解が深まるかと思います。
1. ジェスチャーやサインによるコミュニケーション
言語発達の最初のステップは、子どもが非言語的な方法で意思を伝えることです。指差しや手を使ったジェスチャー、目線の動きなどで親や周囲の人に自分の意志を伝え始めます。サイン言語や絵カードなどを活用することも、この段階で効果的です。
- これにより、子どもはコミュニケーションの基礎を学び、言葉が出る前に「意図的に伝える力」が育ちます。
2. 音や単語の模倣
次に、子どもは音や言葉を模倣する段階に進みます。周りの人が発する言葉や音を繰り返そうとすることで、発音や言葉のリズムを学びます。この模倣が言葉を話し始めるための重要な準備段階です。
- 親が子どもに対してゆっくりとした、はっきりとした言葉を繰り返し伝えることで、子どもが音を真似する機会を増やせます。
3. 単語の使用と文の形成
最後に、単語を発する段階です。子どもは簡単な単語から始め、やがて短いフレーズや文を話すようになります。この段階では、周囲が子どもの言語発達を促進するために、正しい言葉を使ったり、言葉を拡張して応答することが重要です。
- 例えば、子どもが「みず」と言った場合、「お水が飲みたいの?」と応答することで、単語を拡張して使う力を育てます。
親ができること
最後に、どのようなことができるか、代表的なものについてその効果とともに示します。
お子様とともに学び、変化を感じ取ったり、失敗も前進と捉えて楽しみながら過ごせると良いかと思い思います。
- 共同読書を活用する
親が子どもと一緒に本を読む際、オープンエンドの質問を使ったり、子どもの言葉を真似して拡張することで、言語発達が促進されることが示されています。特に、対話的読書が言語遅延の子どもに対して効果的です(Dale et al., 1996)。
- 自然発生的な言語コミュニケーションの機会を増やす
親が日常の生活活動(食事や就寝前など)の中で自然に子どもと対話する機会を増やすことが、子どもの言語能力を高めることに寄与します。これは、親が日常的に簡単に取り入れられる効果的なアプローチです(Akamoglu & Dinnebeil, 2017)。
- 親が介入方法を学び実践すること
親が専門家からの指導を受けて、効果的な言語発達支援の方法を学ぶことで、子どもの言語能力が向上することが確認されています。これにより、親は子どもとより効果的に対話し、言語スキルの成長を促進することができます(Romero-Contreras, 2015)。
日常的にできるシンプルなことからやってみてはいかがでしょうか。
また、言葉だけでなく、いっしょに過ごす時間の中でのふれあいが心を育むようにも思います。
やや専門的な介入方法についてはまた別途お伝えできればと思います。
おわりに
子育ては不安なことが多いかと思います。
時に孤独に感じたり、冷たい言葉をかけられることもあるかもしれません。
育て方が悪いとか、うちの子がだめとかは思うかもしれませんが、
そんなことは決してありません。
みんな一生懸命に生きているし育てています。
今日1日を一緒に楽しむことから親子の成長は始まるのかなと思います。
不安な時は1人で抱えずに相談ください。
私達でも大丈夫です。専門家として、また親として一緒に悩みます。
皆様にとって今日が良い日になることを願っております。
ではまた~!