お問い合わせ

更新日:2024.10.08ことば【3分でわかる】2歳の言葉の発達|遅れが見られる場合のチェックポイント

言葉の発達は、子どもの成長において非常に重要な要素の一つです。特に2歳児の時期は、語彙が急速に増加し、コミュニケーション能力が著しく発達する段階です。

しかし、すべての子どもが同じペースで言葉を習得するわけではなく、個人差が大きく見られます。

言語発達に遅れが見られる場合、親として何を観察し、どのように対処すればよいかは、早期に適切なサポートを行うために重要な課題です。

本記事では、2歳児の通常の言語発達と個人差について説明し、言語発達遅滞が疑われる場合に親が家庭でできるチェックポイントを紹介します。

これにより、親が日常の中で子どもの発達状況を適切に見極め、必要に応じて専門的なサポートを受けるための一助となることを目指しています。

2歳児のことばの発達

 

2歳児の言語発達は急速に進む時期であり、言葉を使ったコミュニケーションが活発になる段階です。

 

多くの2歳児は、語彙が急速に増加し、簡単な文を使って自分の気持ちや欲求を表現することができるようになります。一般的に、2歳児は以下のような言語能力を持っています。

 

語彙の増加

2歳児では、50〜100語程度の語彙を持っていることが一般的です。

多くの子どもは、1歳ごろに最初の単語を話し始め、その後急速に語彙が増加します。特に、2歳の間に言葉の学習が加速することがよくあります。

 

簡単なフレーズや文を話す

2歳児は、2〜3語のフレーズや短い文を話し始めます。

 

たとえば「ママ、行く」や「犬、見る」などの簡単な言い回しが一般的です。このようなフレーズは、要求や感情を伝えるために使われます。

 

理解力の発達

2歳の子どもは、簡単な指示を理解し、それに従うことができるようになります。

 

たとえば、「おもちゃを持ってきて」「靴を履いて」などの指示を理解し行動に移すことができます。

 

模倣と質問

親や周りの大人の言葉や行動を模倣する能力が発達します。

 

また、「これなに?」のような質問をすることも増えてきます。これは、言葉を学ぶ大切な過程です。

 

コミュニケーション意欲の増加

2歳児は、自分の気持ちや欲求を伝えるために、ますます言葉を使おうとします。

 

この時期には、言葉だけでなく、指差しやジェスチャーを使ったコミュニケーションも頻繁に見られます。

 

ことばの発達には個人差がある

 

2歳児の言語発達は急速であり、この時期に得られる言語スキルは、今後のコミュニケーション能力や社会性の発達に大きな影響を与えます。しかし、この成長速度には個人差があり、すべての子どもが同じペースで発達するわけではありません。

 

語彙数の差

2歳児の語彙数には幅があり、50語程度しか話せない子もいれば、200語以上話す子もいます。

 

これは、子どもの周囲でどれだけ言葉の刺激があるか、言葉に触れる機会が多いかなどが影響しています。例えば、親との会話や絵本の読み聞かせは、語彙の増加に大きな影響を与えます。

 

話し始める時期

言葉を話し始める時期にも大きな差があります。一部の子どもは1歳半までに多くの単語を話し始める一方、他の子どもは2歳を過ぎてから言葉が出始めることもあります。

 

このような場合でも、適切な環境や刺激が与えられれば、後に他の子どもと同じように発達することが多いです。

 

理解力と表現力のギャップ

2歳児の中には、言葉を話すのが遅れているが、言語理解力は年齢相応か、それ以上の子もいます。

 

例えば、簡単な指示には従えるが、自分からは言葉で表現できない場合などが考えられます。このギャップは言語発達の一時的な段階として見られることがあります。

 

性格による違い

内向的な子どもは、言葉を発することが少ない傾向があります。これは、言語能力が発達していないのではなく、性格的に言葉を使う機会が少ないためです。一方で、外向的な子どもは、日常的に多くの言葉を話し、コミュニケーションを取ろうとする傾向があります。

 

言語発達遅滞が見られる場合のチェックポイントと家庭でのチェック方法

言語発達には個人差があるため、他の子どもと比較して「遅い」と感じても、それが必ずしも問題であるとは限りません

 

しかし、言語発達遅延(言語発達遅滞)を早期に発見することは、その後のサポートや介入に役立つ場合があります。

 

50語未満の語彙

  • チェック方法: 子どもがどのくらいの単語を知っているか、実際にリストを作ってみましょう。1週間ほどの間に、子どもがどのような単語を使っているかメモを取り、合計語彙数を数えてみます。身近な物や家族の名前、動作などを含め、使われた単語を数えるのが効果的です。

 

  • 目安: 2歳で50語以上が目標ですが、それ以下でもすぐに異常と判断する必要はありません。言葉を使ってコミュニケーションしようとしているかどうかも重要です。

 

2語文を話せるか

  • チェック方法: 子どもが2つ以上の単語を組み合わせて使っているか観察します。例えば、「ママ、行く」「お水、欲しい」などの2語文を言うかどうかを確認しましょう。会話の中でどのように単語を組み合わせているか、普段の生活の中で観察します。

 

  • 目安: 2歳で2語文以上が目標ですが、それ以下でもすぐに異常と判断する必要はありません。語彙と同様に言葉を使ってコミュニケーションしようとしているかどうかも重要です。

 

簡単な指示を理解できるか

  • チェック方法: 日常生活の中で簡単な指示を出し、それに従えるか確認します。例えば、「靴を持ってきて」「おもちゃを片付けて」など、普段の生活で自然に出せる指示を使いましょう。子どもがこれらの指示にどのように反応するかを観察し、どの程度理解しているかを確認します。

 

  • 最初は簡単な1段階の指示から始め、少しずつ複雑な指示(例:「まず靴を持ってきて、そのあと座ってね」)に挑戦してみると、理解度の進展を確認できます。

 

社会的なやり取りやジェスチャー

  • チェック方法: 子どもが人とやり取りする際、言葉だけでなくジェスチャー(指差し、手を振る、頭をうなずくなど)を使っているか観察します。また、物を指差して見せたり、誰かに「これ見て」とアピールする行動があるかを確認します。親が何かを指差した際に、子どもが同じ方向を見るかどうか(共同注意)もチェックポイントです。

 

  • 家庭内で自然なやり取りの中で、子どもが他者に注意を向けさせるためにジェスチャーを使うかどうかを観察します。

 

模倣行動(ものまね)

  • チェック方法: 親や周囲の大人の行動や言葉を模倣(ものまね)するかどうかをチェックします。親が簡単な動作や言葉を示したとき、子どもがそれを真似しようとするかを確認します。たとえば、拍手を見せたり、手を振る動作をして、子どもが同じように行動するかどうかを観察します。

 

  • 生活の中で、食事中や遊んでいるときなど、模倣のチャンスを作り、どの程度模倣しているかを見てみましょう。

 

音や言葉に対する反応

  • チェック方法: 名前を呼んだときにすぐに反応するかどうかを観察します。子どもが別のことに夢中になっているとき、後ろから名前を呼んだり、音を立ててみて、すぐに反応するかどうかを確認します。また、テレビやラジオの音に対する反応も観察し、音に対して興味を示しているか確認します。

 

  • 音の出るおもちゃや楽器を使って、子どもがどの程度音に注意を向けているかも観察ポイントです。

発音

  • チェック方法: 子どもが話す単語やフレーズがどの程度明瞭か、他の大人(例えば保育士や親族など)が聞き取れるかどうかを確認します。もし親以外の人が子どもの発音を理解しにくい場合は、発音の問題がある可能性があります。身近な人に、子どもの言葉がどの程度聞き取りやすいかを聞いてみるのも良い方法です。

 

  • 簡単な言葉やフレーズを使って、特定の音(例えば、「た」「か」「ま」などの発音)を強調して発話させ、その明瞭さをチェックしましょう。

 

共同注意

  • チェック方法: 子どもが他者と注意を共有できているかどうかを確認します。例えば、親が何かを指さしたときに、子どもが同じ方向を見るかどうか、または逆に子どもが興味のある物を指差して「これ見て」と親の注意を引こうとするかを観察します。

 

  • 一緒に絵本を読んだり、物を見せたりするときに、子どもが同じ物に目を向けたり、興味を共有しようとするかがチェックのポイントです。

 

チェックの結果に基づくアクション

これらのチェックポイントに基づき、子どもの発達に遅れが見られる場合でも、必ずしも問題があるとは限りません。

 

個人差が大きいことも考慮しながら、もし複数の項目で遅れが見られたり、心配な場合は、小児科医や言語療法士に相談することをお勧めします。専門的な評価を受けることで、適切なサポートや介入が早期に行われ、子どもの言語発達を促進することができます。

家庭での日常的な観察と簡単なチェックは、子どもの成長を見守る上で大切な役割を果たしますが、専門家の意見を求めることも重要です。

 

参考文献

 

A Systematic Review of Academic Discourse Interventions for School-Aged Children With Language-Related Learning Disabilities
「視覚的なサポートを使った教育が、言語障害のある子どもに効果的」
本レビューは、言語障害を持つ学齢児に対する学術的な言語介入の効果を評価しています。結論として、視覚的サポートと生徒が作成した学習素材を用いた介入が特に効果的であり、特にリテラシーや言語障害を持つ子どもに有効であることが示されました(Peterson et al., 2020)。
詳細はこちら

 

Language development and its relation to social behavior and family and school environments: a systematic review
「家庭環境が言語の発達に最も強い影響を与える」
このレビューは、子どもの言語発達に与える家庭環境や学校環境の影響を評価しています。特に家庭環境、社会経済的地位、親の教育水準が重要な要素とされましたが、学校環境や社会行動との関連はほとんど確認されませんでした(Carvalho et al., 2016)。
詳細はこちら

 

A Systematic Literature Review: First Language Acquisition for Children in Linguistics Perspective
「子どもは日常のやり取りを通じて自然に言語を習得する」
この論文は、第一言語習得に関する体系的レビューであり、観察と日記を基にした研究が中心です。結論として、言語習得は無意識のうちに進行し、周囲との日常的な相互作用が習得において重要であることが示されました(Wulansari & Nida, 2020)。
詳細はこちら

 

A systematic review of environmental interventions to improve child language outcomes for children with or at risk of primary language impairment
「環境を整えることで、言語スキルが大きく向上する」
このレビューは、言語障害のリスクがある子どもに対する環境介入を評価しています。環境に焦点を当てた介入が、子どもの言語スキルの向上に効果的であることが明らかにされました(Pickstone et al., 2009)。
詳細はこちら

 

Predictors of Phrase and Fluent Speech in Children With Autism and Severe Language Delay

「非言語的IQと社会的関わりが言語の発達に強く関連している」

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と重度の言語遅延を持つ子どもにおける言語発達の予測因子を調査しています。高い非言語的IQ(例: 図形やパズルを解く能力)と社会的な関わり(例: 目を合わせる、簡単なジェスチャーを使ってコミュニケーションを取る)が、言語の発達に強く関連していることが示されました(Wodka et al., 2013)。

詳細はこちら

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

関連記事

アプリのダウンロードはこちら

App Store Google Play