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更新日:2023.04.20リハビリパーキンソン病のすくみ足を改善するための自宅でできる運動3選

パーキンソン病は、神経伝達物質のドパミンが減少し、運動機能に障害を引き起こす疾患です。すくみ足は、パーキンソン病患者によく見られる症状の一つで、歩行時に足が地面に引っかかるような感覚を引き起こします。足が上手く上がらず、地面をこするように歩くため、転倒のリスクが高まります。本記事では、パーキンソン病のすくみ足の症状、原因、治療方法について解説し、自宅でできる運動3選を紹介します。

パーキンソン病のすくみ足の症状

パーキンソン病のすくみ足は、歩行時に足が地面に引っかかるような感覚を引き起こします。足が上手く上がらず、地面をこするように歩くため、転倒のリスクが高まります。また、歩幅が狭くなり、歩行速度が遅くなることも特徴です。さらに、すくみ足はパーキンソン病患者の自立性や生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすことが知られています1)

パーキンソン病のすくみ足の原因

すくみ足の主な原因は、脳内のドパミンの減少による運動機能の障害です。ドパミンが減少すると、筋肉の緊張が高まり、関節の可動域が制限されるため、歩行時に足がうまく上がらなくなります。また、バランス感覚や歩行パターンの変化もすくみ足の原因になることが示唆されています2)

パーキンソン病のすくみ足の治療方法

すくみ足の治療には、薬物療法や運動療法が一般的に行われます。薬物療法では、ドパミン補充薬やドパミン受容体作動薬が使用され、運動機能の改善を目指します。運動療法では、筋力や柔軟性の向上を通じて、歩行能力を高めることが狙いです。また、物理療法や職業療法、言語療法などを組み合わせた多職種によるリハビリテーションも効果的です3-7)

パーキンソン病のすくみ足に運動が効果的な理由

すくみ足に運動が効果的な理由は次の通りです。

 

 

  1. 筋力の向上: パーキンソン病患者は筋力低下がみられることが多く、運動により筋力を向上させることで、すくみ足の症状を軽減できます。
  2. 柔軟性の向上: 運動により関節の可動域が広がり、筋肉の柔軟性が向上します。これにより、歩行の際の動きがスムーズになり、すくみ足の症状が改善されます。
  3. バランス感覚の改善: パーキンソン病患者は、バランス感覚の低下がみられることがあります。運動によってバランス感覚を鍛えることで、歩行時の安定性が向上し、すくみ足の症状が軽減されます。
  4. 歩行スピードの向上: 運動により、歩行スピードが向上します。これにより、すくみ足の症状が軽減され、日常生活の質が向上します。
  5. 運動パフォーマンスの向上: 運動を継続することで、運動パフォーマンスが向上し、すくみ足の症状が改善されます。

 

また、自宅でできる運動は、継続的に実践しやすく、効果が期待できます。

運動を始める前に医師や理学療法士と相談し、適切な運動プログラムを決定して、安全に取り組みましょう。

パーキンソン病のすくみ足改善のための運動3選

パーキンソン病のすくみ足の症状を改善させるための自宅でできる運動はいくつかあります。以下の3つの運動は、研究によって効果が示されています。

 

  1. マーチング運動8)
  2. スクワット9)
  3. バランスボールエクササイズ10)

 

これらの運動は、筋力の向上、柔軟性の向上、バランス感覚の改善、歩行スピードの向上、および運動パフォーマンスの向上に役立ちます。自宅でこれらの運動を行うことで、パーキンソン病のすくみ足の症状改善が期待されます。ただし、運動を始める前に医師と相談し、適切な運動プログラムを決定することが重要です。また、運動を行う際は、安全性を確保し、必要に応じて理学療法士などの専門家のサポートを受けることが望ましいです。

 

以下に、それぞれの運動について、具体的なやり方と回数やセット数の目安を紹介します。

 

※運動の回数やセット数は個人差があり、パーキンソン病の症状の程度や運動経験、年齢などによって異なります。最初は無理をせず、自分に合ったペースで始めることが重要です。以下は一般的な目安ですが、医師や理学療法士と相談しながら適切なプログラムを決定してください。

1.足踏み運動

引用:自主トレばんく.

https://jishu-tre.online/%e8%b6%b3%e8%b8%8f%e3%81%bf%e9%81%8b%e5%8b%95/

 

  • 1セットあたり: 20回×2(片足ずつ)
  • セット数: 2~3セット
  • 頻度: 週3~4回

 

背筋を伸ばした状態で立ち、交互に膝を上げて行う運動です。手を振りながらリズミカルに行いましょう。

 

<方法>

Step 1: 背筋を伸ばし、肩をリラックスさせた状態で立ちます。

Step 2: 右膝を上げて腰の高さまで持ち上げます。その後、左膝を同様に上げます。

Step 3: 膝を交互に上げる動作を続けながら、手を振ってリズミカルに行いましょう。

 

 

 

2.スクワット

 

引用:自主トレばんく.https://jishu-tre.online/%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%af%e3%83%83%e3%83%88/

 

  • 1セットあたり: 10~15回
  • セット数: 2~3セット
  • 頻度: 週2~3回

 

足を肩幅に広げて立ち、ゆっくりと膝を曲げて腰を下ろしましょう。太ももが床と並行になるまで腰を下ろしたら、ゆっくりと立ち上がります。これを繰り返します。

 

<方法>

Step 1: 足を肩幅に広げて立ち、両手を前に伸ばします。

Step 2: ゆっくりと膝を曲げて腰を下ろし、太ももが床と並行になるまで腰を下ろします。

Step 3: 腰を押し出すようにしてゆっくりと立ち上がります。これを繰り返します。

 

3.バランスボールエクササイズ

 

  • 1セットあたり: 各動作を10~15回
  • セット数: 2~3セット
  • 頻度: 週2~3回

 

<方法>

Step 1: バランスボールに座り、足を肩幅に広げて床につけます。両手を頭の後ろに組みます。

Step 2: 背筋を伸ばしたまま足を交互に挙げ、バランスを保ちます。

Step 3: バリエーションとして、バランスボールに寝転び、両手を床につけながら足を上下させる運動も効果的です。

 

 

 

高齢のパーキンソン病の方が運動を行う際の注意点

 

運動によるリスクを最小限に抑え、安全かつ効果的な運動習慣を維持するために、

高齢者の方は以下の点に注意していただくことをおすすめします。

 

  • 医師や理学療法士と相談: 個々の状況に応じた適切な運動プログラムを決定するために、専門家と相談してください。

 

  • ウォーミングアップとクールダウン: 運動の前後に、筋肉をほぐすウォーミングアップとクールダウンを行って、怪我のリスクを減らしましょう。

 

  • 安全性確保: 安全な場所で運動を行い、必要に応じてサポートを受けてください。バランスが不安定な場合は、壁や椅子を支えにして運動しましょう。

 

  • 無理のないペースで進める: 高齢者は筋力や柔軟性が低下していることが多いため、無理をせず、自分に合ったペースで運動を運動の強度や回数を徐々に増やす: 最初は軽い負荷から始めて、徐々に運動の強度や回数を増やしていくことで、身体が適応しやすくなります。

 

  • 継続が重要: 運動の効果を最大限に発揮するためには、継続して行うことが重要です。無理のない範囲で継続して運動に取り組みましょう。

 

  • 状態の変化に注意: 運動中や運動後に症状が悪化したり、異常な痛みや違和感がある場合は、すぐに運動を中止し、医師に相談してください。

 

これらの注意点に留意して、パーキンソン病の高齢者が運動に取り組むことで、すくみ足の症状の改善や身体機能の向上が期待できます。運動を始める前に、必ず専門家と相談し、適切な運動プログラムを決定しましょう。

 

参考文献

  1. Bloem BR, Hausdorff JM, Visser JE, Giladi N. Falls and freezing of gait in Parkinson’s disease: a review of two interconnected, episodic phenomena. Mov Disord. 2004;19(8):871-84. doi: 10.1002/mds.20115
  2. Morris ME, Iansek R, Matyas TA, Summers JJ. Stride length regulation in Parkinson’s disease. Normalization strategies and underlying mechanisms. Brain. 1996;119(Pt 2):551-68. doi: 10.1093/brain/119.2.551
  3. Fox SH, Katzenschlager R, Lim SY, et al. International Parkinson and movement disorder society evidence-based medicine review: Update on treatments for the motor symptoms of Parkinson’s disease. Mov Disord. 2018;33(8):1248-1266. doi: 10.1002/mds.27372
  4. Tomlinson CL, Patel S, Meek C, et al. Physiotherapy versus placebo or no intervention in Parkinson’s disease. Cochrane Database Syst Rev. 2012;8(8):CD002817. doi: 10.1002/14651858.CD002817.pub4
  5. Oguh O, Eisenstein A, Kwasny M, Simuni T. Back to the basics: Regular exercise matters in parkinson’s disease: Results from the National Parkinson Foundation QII registry study. Parkinsonism Relat Disord. 2014;20(11):1221-5. doi: 10.1016/j.parkreldis.2014.08.002
  6. Shulman LM, Katzel LI, Ivey FM, et al. Randomized clinical trial of 3 types of physical exercise for patients with Parkinson disease. JAMA Neurol. 2013;70(2):183-90. doi: 10.1001/jamaneurol.2013.646
  7. Mak MK, Wong-Yu IS, Shen X, Chung CL. Long-term effects of exercise and physical therapy in people with Parkinson disease. Nat Rev Neurol. 2017;13(11):689-703. doi: 10.1038/nrneurol.2017.128
  8. Ferrazzoli, D., et al. (2018). “Integrated motor-cognitive training for freezing of gait in Parkinson’s disease: A randomized clinical trial.” Movement Disorders 33(6): 921-929.
  9. Schilling, B.K., et al. (2010). “Effects of moderate-volume, high-load lower-body resistance training on strength and function in persons with Parkinson’s disease: a pilot study.” Parkinson’s Disease 2010: 824734.
  10. Hirsch, M.A., et al. (2003). “Exercise-induced change in parkinsonian signs and in voluntary and involuntary motor responses in older adults.” Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 84(1): 5-14.

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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