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更新日:2022.11.17リハビリリハビリや産後ケアに使える助成金とは?生活費の不安を軽減する公的制度を確認しよう

思わぬケガや出産・育児で仕事を休むときに不安となるのが生活費です。
収入が途絶えるからと無理に働いては、身体への負担が増してしまいます。
生活費を稼がなくてはと焦る気持ちになるかもしれませんが、日本には公的医療保険制度で手当てをもらえるケースがあります。
公的保険制度を知ることは、将来のライフプランニングを行ううえでも大切な知識です。

そこでこの記事では、リハビリや産後ケアに使える公的保険制度などを紹介します。一つ一つ確認して、万が一の不安を軽減させましょう。

公的医療保険制度

保険は大きく分けて国が運営する原則強制加入の公的保険と、保険会社が運営する任意加入の民間保険があります*1

公的保険制度はさまざまな種類があり、そのなかの一つがケガや病気に備える公的医療保険です。

 

出所)金融庁 公的保険について はじめに

https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance-portal.html

 

日本は公的医療保険によって国民全員を保障する国民皆保険制度のもと、保険料に加えて公費を投入することで、国民が安全で安心して暮らせる環境を整えています*2

 

国民が納める保険料は次のような体系です*3

・国民健康保険:自営業者や非正規雇用者など

・協会けんぽ:中小企業の会社員

・健康保険組合:大企業の会社員

・共済組合:公務員

・後期高齢者医療制度:75歳以上の国民

協会けんぽ・健康保険組合・共済組合に加入している人の保険料は労使折半で納めるため、事業主が保険料の半分を負担しています*4

 

出所)厚生労働省 我が国の医療保険について p.1

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000913109.pdf

保険料や公費を財源とすることにより、日本は安い医療費で高度な医療の提供を掲げています*2

リハビリに使える制度

日本国民は公的医療保険によって、窓口での医療費が3割や1割などで済んでいます。

この自己負担軽減制度以外にも公的医療保険の制度があり、まずはリハビリ時に使用できる制度を紹介します。

高額療養費制度

高額療養費制度とは、ひと月の医療費負担額が上限を超えたとき、その超過分が支給される制度です*5

事故などのケガによって治療費に加えてリハビリ代も発生してしまった際、ひと月の限度額を把握できるので、安心してリハビリに通うことができます。

 

具体的な限度額は年齢と収入によって異なります。

出所)厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへp.5

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

 

出所)厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへp.4

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

 

以下のようなケースを考えてみましょう。

 

年齢:30歳

年収:500万円

状況:ひと月に50万円の医療費が発生

 

このときの限度額は表にあてはめると【80,100円+(500,000-267,000)×1%=82,430円】となります。

 

一方で窓口では3割負担のため、実際に支払った金額は【500,000円×30%=150,000円】です。

 

高額療養費制度を適用すると、差額である67,570円が支給されることとなります。

 

高額療養費制度は同月における複数の受診、同じ世帯の医療費を合算できる世帯合算や、過去12ヵ月で4回目以上の適用となった際に限度額が下がる多数回該当という仕組みもあります*6

 

このように医療費の負担には限度額がありますので、リハビリが続いて医療費が高くなるときは落ち着いて限度額を計算してみましょう。

 

傷病手当金

リハビリによって仕事を連続して休んだときは、傷病手当金が活用できます*7

傷病手当金とは、仕事を休んでいる無給の期間、被保険者と家族を保障するために設けられた制度です。

 

被保険者が仕事を連続して3日間休んだ次の4日目以降について、支給があります。

一日あたりの支給額は次のように決定されます。

 

(支給開始日以前12ヵ月の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3

 

もし支給開始までに12ヵ月の期間が無い場合、次のどちらか低い方の金額となります。

 

  1. 支給開始までの月の継続する標準報酬月額の平均
  2. 標準報酬月額の平均額(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の平均)

 

支給される期間は、支給が開始されてから通算で1年6ヵ月です。

 

ケガとリハビリによって長期間仕事を休むことになったときは、傷病手当金を利用しましょう。

 

一つ注意すべき点は、会社員が加入している健康保険には傷病手当金制度がありますが、自営業者などの国民健康保険には傷病手当金制度がないことです*8

 

 

産後ケアに使える制度

産後は身体的にも心理的にも不安定な状態で育児を行うため、働くことが難しい状態です。

産後で利用できる制度を知っておくことで、金銭面での不安を軽減できます。

 

出産手当金

会社員で健康保険に加入している人は出産手当金が支給されます*9

 

健康保険の被保険者が出産日以前42日から出産日翌日以降56日の範囲において、会社を休んだことで給料の支払いがない期間が支給対象です。

 

支給金額は傷病手当金と同じで、次のとおりです。

 

(支給開始日以前12ヵ月の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3

 

もし支給開始までに12ヵ月の期間が無い場合、次のどちらか低い方の金額となります。

 

  1. 支給開始までの月の継続する標準報酬月額の平均
  2. 標準報酬月額の平均額

 

このとき、出産手当金よりも少ない金額で給料を受け取っていた場合、差額を出産手当金として受け取ることが可能です。

 

この点も傷病手当金と同じく、個人事業主などの国民健康保険加入者は受けることができません*10

自治体の制度

令和元年12月6日に公布された母子健康法の一部を改正する法律を踏まえて、産後ケア事業を令和6年度末までに全国展開を目指すと、政府は第4次少子化社会対策大綱で定めました*11

 

厚生労働省は産後ケア事業ガイドラインにおいて、市町村が母子に対して実施する産後ケア事業を3種類提示しています*12

 

  1. 短期入所型:利用者が短期入所して産後ケアを行う方法。
  2. 通所型:個別または集団で病院などに通う方法。
  3. 居宅訪問型:助産師などの介護職が自宅に訪問して産後ケアを行う方法。

 

自治体はこのようなサービスを提供するだけでなく、補助も実施しています。

 

例えば神奈川県川崎市では、市内在住の生後4ヵ月未満の母子に対して、次のような補助を行っています*13

 

  • 宿泊型:1日30,000円(自己負担9,000円)
  • 日帰り型:1回8,000円(自己負担4,000円)
  • 訪問型:1回10,000円(自己負担5,000円)

 

補助対象となるには市に協力している施設を利用することが必要です。

 

他にも京都府では、利用した産後ケアの半額を市が負担してくれる制度もあります*14

京都府では、まず利用者が全額自己負担で産後ケアを受け、後日に補助金の交付申請を行う流れです。

 

このように自治体によって補助制度は異なりますので、自分が住んでいる自治体の制度を確認しておくことが大切です。

万が一に備えて使える制度を知ることが大切

今回はリハビリや産後ケアに使える制度として次の4つを紹介しました。

 

【リハビリに使える制度】

・高額療養費制度

・傷病手当金

 

【産後ケアに使える制度】

・出産手当金

・自治体の制度

 

それぞれがどのようなケースで使えて、どのくらい手当てがもらえるかを知っておくことで、生活費に関する不安を軽減することができます。

改めて給料から引かれている社会保険料の意味を理解し、公的保険の知識を身に付けて現実的なライフプランニングを行いましょう。

参考文献

*1

金融庁 公的保険について はじめに

https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance-portal.html

 

*2

厚生労働省 我が国の医療保険について p.1

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000913109.pdf

 

*3

厚生労働省 我が国の医療保険について p.7

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000913109.pdf

 

*4

日本経済新聞 健康保険とは

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO56157980Y0A220C2EA2000/

 

*5

厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへp.3

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

 

*6

厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへp.6-7

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

 

*7

協会けんぽ 傷病手当金

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271/

 

*8

一般社団法人 公的保険アドバイザー協会 病気で働けなくなった時に受給できるお金

健康保険加入者が受けられる「傷病手当金」

https://siaa.or.jp/knowledge/cate3-03

 

*9

協会けんぽ 出産手当金について

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/

 

*10

一般社団法人 公的保険アドバイザー協会 2出産手当金

https://siaa.or.jp/knowledge/cate3-04

 

*11

厚生労働省 産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドラインp.0(p.1の前ページ)

https://www.mhlw.go.jp/content/000658063.pdf

 

*12

厚生労働省 産後ケア事業ガイドラインp.11

https://www.mhlw.go.jp/content/000658063.pdf

 

*13

川崎市 産後ケアのご案内

https://www.city.kawasaki.jp/450/page/0000061707.html

 

*14

京都府 産後ケア事業を利用してみませんか 内容p.1

https://www.pref.kyoto.jp/kosodate/pia/documents/sangokea.pdf

 

この記事を書いた人

田中凌平FP2級、AFP、証券外務員一種保持。 主に金融系の記事を執筆し、読者のマネーリテラシー向上に努める。 一般的な税金の知識から、経済ネタ、住宅関係など幅広く発信。

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