更新日:2023.01.22リハビリ介護保険で利用できる福祉用具とは?利用の流れを福祉住環境コーディネーターが解説
人生100年時代の高齢社会は今後も続くことが想定され、高齢期の住まい方について長期的な視点で考えることが大切です。高齢者の多くは、介護が必要な状態になっても住み慣れたマイホームでできるだけ長く暮らしたいと希望しています。そのためには、要介護者が安全に暮らせ、介護する人に負担が少ない環境を構築することが必要です。
そのような観点から、この記事では介護保険を利用した福祉用具について解説します。
制度の利用方法や毎月かかる費用などにも触れますので、自宅で介護を受ける場合はぜひ参考にしてください。
目次
福祉用具とは
まず最初に、福祉用具とは何か?についてみていきましょう。
介護が必要な高齢者の日常生活をサポートする用具
福祉用具とは、要介護認定を受けた人ができるだけ自宅で独立した日常生活を送るために利用する用具や機器のことです。介護保険制度の居宅サービスの一つであり、原則「貸与(レンタル)」として支給されます。
福祉用具を利用することで介護を必要とする人が自宅で日常生活をしやすくなり、家族にとっても介護の負担が軽くなるなどのメリットが期待できます。
指定を受けた事業者が福祉用具を貸与・販売
福祉用具を利用する際には指定を受けた事業者が、利用者の要介護度・生活環境・希望などを検討したうえで適切な福祉用具を選び、取り付けやアフターサービスなどを行います。指定された事業所の福祉用具専門相談員が、利用者ごとに福祉用具貸与・販売計画を作成します。
福祉用具専門相談員は、介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所に2名以上の配置が義務付けられている専門職です。高齢者が自立した生活を送ることができる福祉用具を選びます。
給付対象となる用具
福祉用具は利用者の身体状況や要介護度の変化などにより、その時期に適切な用具が提供されます。
なお、用具によっては人が使用していたものをレンタルするには抵抗が感じられるものがあるため、その場合は購入することもあります。
ここでは「貸与」と「購入」に分けてご紹介しましょう。
福祉用具【貸与】
福祉用具で「貸与」の対象となる種目は下図1の通りです。要介護度により利用できるものに違いがあります。
要支援・要介護1の軽度者は原則、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、自動排泄処理装置以外については介護保険給付の対象外です。
ただし、市町村が医師の所見やケアマネジメントの判断等を確認して必要と認められたときには例外的に給付対象となります。*1
出典)厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
図1)出典:厚生労働省「介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について」 P2
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000921892.pdf
福祉用具【購入】
便座や浴槽、入浴用いすなど、肌に直接触れるものはレンタルとなると心理的に抵抗を感じる人が多いようです。その場合、自分専用の用具として購入することができます。
特定福祉用具購入費の支給方法には、「償還払い方式」と「受領委任払い方式」があり、償還払いの場合は利用者がいったん全額を支払い、費用の9割(一定以上所得者の場合は8割又は7割)が介護保険から払い戻されます。*2
受領委任払い方式は、最初に利用者が自己負担分(購入額の1割、2割または3割分)を指定の販売事業者に支払って購入します。
残りの9割〜7割分(所得により異なる)は自治体が販売事業者に直接支払う方式です。
事前の申請が必要であり、登録されている取扱事業者から購入しないと認められないので注意してください。*3
図2)出典:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
図2)出典)厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group22.html
福祉用具貸与・特定福祉用具販売の流れ
ここでは実際に福祉用具貸与と特定福祉用具販売の流れについて解説します。
福祉用具【貸与】の給付の流れ
福祉用具の貸与を受けたい場合には、まずケアマネジャーに相談しましょう。
ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて、適切と思われるサービス事業者を選定します。次に行うのは福祉用具サービス計画の作成です。事業者の福祉用具専門相談員が利用者の自宅に訪問し、利用者にとって必要なサービス計画を作成します。
作成した計画書の内容や使用する福祉用具については、利用者や家族にきちんと説明をしなければなりません。同意を得られたらサービス提供を開始します。使用後はモニタリングを随時行い、必要に応じて介護計画を変更することも必要です。
図3)出典:厚生労働省「福祉用具関係参考資料」 P13
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000931246.pdf
特定福祉用具【販売】の流れ
利用者が福祉用具を購入する場合も、基本的に貸与と同じ流れです。最初にケアマネジャーに相談します。
ケアマネジャーが作成したケアプランがある場合は、生活するうえで福祉用具の購入が必要である理由を販売事業者に伝えて商品を決定します。
介護保険を利用して購入する場合は、都道府県の指定を受けた福祉用具販売事業者を選ばなければ支給されないので注意しましょう。
同一年度で購入できるのは10万円が上限であり、利用者負担が1割の場合は9万円が介護保険から給付されます。(下図4)
図4)出典:厚生労働省「福祉用具関係参考資料」 P14
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000931246.pdf
福祉用具貸与の利用状況
福祉用具は高額なので、購入するとなると利用者の負担が重くなります。
しかし、レンタルをすれば毎月手頃な金額で利用することが可能です。
ここでは、福祉用具貸与の費用額など利用状況を解説します。
福祉用具貸与の費用額【1件あたり】
厚生労働省が調査した「福祉用具貸与の1件あたりの費用額」の一覧表は以下の通りです。
特殊寝台や移動用リフトなど高額な福祉用具を手頃な料金で利用できます。
※平成28年の調査
図5)出典:厚生労働省「福祉用具貸与(参考資料)」 P8〜10
福祉用具貸与の給付件数【要介護度別】
令和元年度の福祉用具貸与の費用額は約3,494億円で、前年度より約4%増加しました。*4
福祉用具貸与の利用者で最も多いのは「要介護2(日常生活においても部分的に介護が必要)」で、全体の25%を占めています。
2番目に多いのは「要介護1(部分的な介護が必要)」の17%で、3番目に「要介護3(ほぼすべての日常生活に介護が必要)」が入りました。
介護が必要であるものの、福祉用具を利用すれば自宅で過ごせる介護度の人が利用しています。
ただし、介護認定を受けている人は、家族の協力がなければ自宅で暮らすことは難しいといえます。
図6)出典:厚生労働省「介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について」P10
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000921892.pdf
福祉用具貸与の請求額割合【種目別】
福祉用具貸与で請求額が多いのは「特殊寝台(27%)」です。特殊寝台とは、背部または脚部の傾斜角度が調整できる機能や床板の高さを調整できる機能を備えた、いわゆる「介護ベッド」を指しています。起き上がり等を補助するのが目的です。
次に多いのは「手すり(22%)」で、工事を伴わずに設置できる手すり(据え置き型・突っ張り型)が介護保険の対象となります。3位は車いす(16%)という割合です。
図7)出典:厚生労働省「介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について」P12
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000921892.pdf
まとめ
介護保険制度の福祉用具貸与・購入の給付制度により、通常では在宅で過ごすことが難しい方が、家族の協力のもと、重い負担なしに自宅で暮らせるようになりました。福祉用具を利用すれば、高齢者の自立の可能性が高まり、介助する方の負担を軽減することが可能です。
終の住処として自宅を選ぶ場合は、介護保険制度の福祉用具給付を有効活用しましょう。
参考サイト・参考文献
*1 参考)厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
*2・3 参考)中央区「福祉用具購入費の支給」福祉用具購入費の支給
https://www.city.chuo.lg.jp/smph/kenko/kaigo/riyou/sarbisu/zaitaku/hukusiyougukounyu.html
*4 参考)厚生労働省「介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について」P10
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000921892.pdf