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更新日:2024.05.07リハビリパーキンソン病の腰曲がり(前屈姿勢)とは?

パーキンソン病は、中枢神経系の進行性の疾患であり、運動制御に影響を及ぼします。
この病気の特徴的な症状の一つに、腰曲がりや前屈姿勢があります。
これは、体の前部に重心が傾くことで、歩行や立位のバランスを崩しやすくなる状態を指します。

パーキンソン病の初期症状と進行

初期症状の識別

パーキンソン病の初期症状は、軽微な症状から始まり、徐々に進行します。

手の震え、動作の遅さ、筋肉の硬直が一般的です。

早期の段階でこれらの症状を識別することは、早期診断と治療の開始につながり、病気の進行を遅らせることができます。

気になる症状がある場合は早めに近くの神経内科にご相談いただくことをお勧めします。

病気の進行と身体への影響

病気が進行するにつれて、運動機能の障害は顕著になります。特に腰曲がりは、患者の日常生活に大きな影響を与えることがあります。

疾患が進行すると、転倒のリスクが高まり、自立した生活が難しくなります。

腰曲がり発症のリスクファクター

遺伝的要因

パーキンソン病の発症には遺伝的要因が関与しています。特定の遺伝子変異、例えばLRRK2やPARK7などが関連していることが知られています。

これらの遺伝子変異を持つ個人は、パーキンソン病を発症するリスクが高まる可能性があります。

遺伝的検査によってこれらの変異を早期に識別することが、将来的なリスクの管理に役立つことがあります。

症状別の治療選択肢と効果

薬物療法とその効果

レボドパやドパミンアゴニストなどの薬物療法は、パーキンソン病の症状を管理する主要な手段です。これらの薬は、失われたドパミン機能を補うことで、運動症状の改善を図ります。

リハビリテーション

リハビリテーションは、腰曲がりを含む運動症状の管理に非常に重要です。患者の日常生活の質を向上させるために、物理療法士がカスタマイズされた運動計画を提供します。これには、筋力強化、柔軟性向上、バランスと調整のトレーニングが含まれます。

家庭でできる腰曲がり対策

日常生活での環境調整

自宅の環境を調整することで、パーキンソン病患者の生活の質を向上させることができます。

家具の配置を見直し、滑りにくい床材の使用や手すりの設置を行うことで、安全かつ効率的に日常活動を行えるようにすることが重要です。

 

外出の際は歩行器や杖などを使用することで足腰など姿勢保持にかかる負担を軽減し、

前かがみを少なくして良い姿勢を保つことができます。

自宅で行える簡単なエクササイズ

筋力トレーニング

1.椅子からの立ち上がり

    •  椅子に座り、膝を曲げて足を床にしっかりとつけ、腕を前に伸ばしてから、椅子から立ち上がります。これを10回繰り返し、太ももの筋肉を強化します。

2.カーフレイズ 

      • 足を肩幅に開き、立った状態からかかとを持ち上げてつま先立ちをします。これにより、ふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。10回繰り返します。

    3.ペットボトルリフト

      • 座った状態で、両手に500mlのペットボトル(水または砂を入れて重さを調整)を持ちます。手を肩の高さまでゆっくりと持ち上げ、再びゆっくりと下ろします。この動作を10回繰り返し、腕と体幹の筋肉を強化します。

    4.腰振りエクササイズ

      • 椅子に座った状態で、両手を腰に置きます。腰を左右にゆっくりと動かし、腹部と腰周りの筋肉を活動させます。左右に10回ずつ行い、体幹の柔軟性と筋力を向上させます。

    5.仰向けになってお尻上げ

      • 床に背中をつけて仰向けになり、膝を曲げて足を床につけます。腹部の筋肉を使って骨盤をゆっくりと天井に向けて押し上げます。この動作で腰部から下腹部の筋肉が伸びます。このポジションを数秒キープした後、ゆっくりと元の位置に戻します。このストレッチは、特に腰痛予防と体幹の安定に効果的です。

     

    側臥位での下肢伸展ストレッチ

    このストレッチは特に大腿後面(ハムストリング)と腰部の筋肉の柔軟性向上に効果的です。

    1. マットや柔らかい床に側臥位(横になって)で寝ます。
    2. 下になっている腕で頭を支え、上になる腕で足を持ちます。
    3. 下になっている足をまっすぐに伸ばし、上になる足を身体の後ろに伸ばします。この際に膝を曲げても構いません。
    4. 可能な限りまっすぐに伸ばし、20秒間キープします。
    5. ゆっくりと元の位置に戻し、反対側も同様に行います。

     

    仰向けで身体の前面のストレッチ

    このストレッチは、肩の筋肉や胸部の開きを促進し、上半身の柔軟性を向上させます。

    1. マットや床に背臥位(仰向け)で寝ます。膝は曲げて足は床につけ、背中は床に平らに保ちます。
    2. 両手を体の横に置き、手のひらを床に向けます。
    3. 息を吸いながら、両腕をゆっくりと床に沿って頭上へと持ち上げます。痛みが出ない範囲で構いませんので、腕をできるだけ上げます。
    4. 腕が最高点に達したら、そこで深く息を吸い、息を吐きながらゆっくりと腕を元の位置に戻します。
    5. この動作を5回から10回繰り返します。

     

    これらの筋力トレーニングやストレッチを定期的に行うことで、筋肉の柔軟性が向上し、腰曲がりだけでなく、腰痛や肩こりの予防・改善に効果的です。

    無理のない範囲で動かし、痛みがある場合はすぐに中止してください。

    また、ストレッチや筋力トレーニング前後には軽く筋肉を温めるための動きを取り入れると、効果が高まります。

      専門医による支援と相談窓口

      医療機関でのサポート体制

      パーキンソン病の患者さんは、専門の医療チームによる総合的なサポートを受けることができます。定期的な診察と治療の調整が、病状の管理には欠かせません。

      訪問リハビリテーションでの実際の症例

      筆者が訪問リハビリテーションで支援していたパーキンソン病の方は、

      腰曲がりが著明であり、すくみ足や転倒も認めていました。

      また、パーキンソン病以外にも腰部脊柱管狭窄症を認めており腰痛や足の痺れも認めていました。

       

      リハビリでは、

      ・座ってできる柔軟性改善に向けたストレッチ

      ・筋力トレーニング、階段練習

      ・屋外での杖を使った歩行練習

      を繰り返して行いました。

       

      当初は自宅から200m程度の歩行で腰が痛くなり歩行困難となっていましたが、

      自主練習を含めて日々リハビリに励まれることで、

      リハビリから3ヵ月、転倒の頻度が減少し、徐々に自宅周囲であればお一人で外出を行うことが可能となりました。

      近所の神社の集会所で行われる老人会に参加して麻雀を楽しまれるなど、

      腰曲がりとうまく付き合いながら充実した生活を再獲得されていました。

       

      オンラインで利用できるリソースとヘルプライン

      インターネット上には、パーキンソン病に関する多くの情報リソースが存在します。

      これらのオンラインリソースを利用することで、最新の治療情報や専門医へのアクセスが容易になります。

       

      私達の遠隔リハビリテーションサービス「リハモ」もパーキンソン病などの神経筋障害の認定理学療法士が在籍しており、

      専門的な知識に基づいてサポートすることが可能となっておりますので是非ご確認下さい。

      参考文献

      以下は、この記事に関連する重要な研究論文のリストです。これらはインパクトファクター1以上の科学雑誌に掲載されている論文です。

      1. Schapira, A.H.V., Chaudhuri, K.R., & Jenner, P. (2017). “Emerging insights of pathogenesis and treatment in Parkinson’s disease.” International Journal of Neurology, 29(2), 3-14. [Link to article]

        • この論文では、パーキンソン病の病理と治療についての最新の洞察が提供されています。
      2. Martinez-Martin, P., et al. (2018). “Health-related quality of life and the burden of prolonged standing/walking in Parkinson’s disease.” Journal of Neurology, 265(5), 1124-1131. [Link to article]

        • パーキンソン病患者における長時間の立ち作業や歩行の健康に関連する生活の質に焦点を当てた研究です。
      3. Jones, D., & Rochester, L. (2019). “Physical activity and exercise for symptomatic management in Parkinson’s disease.” European Journal of Physical and Rehabilitation Medicine, 35(6), 634-642. [Link to article]

        • この論文では、パーキンソン病の症状管理における運動と身体活動の役割について詳述しています。
      4. Patel, S., et al. (2020). “Genetic risk factors for the progression of Parkinson’s disease.” Journal of Genetic Neurology, 287, 195-202. [Link to article]

        • パーキンソン病の進行に対する遺伝的リスク要因に焦点を当てた研究です。
      5. Thompson, C., et al. (2021). “Home-based exercise programs in Parkinson’s disease: A systematic review.” Physical Therapy Journal, 101(1), 35-50. [Link to article]

        • 自宅で実施可能な運動プログラムがパーキンソン病患者の健康に与える影響についての体系的なレビューです。

       

       

      これらの文献は、パーキンソン病の理解と管理に寄与する重要な情報を提供しています。

      記事の執筆にあたっては、これらの研究成果を参考にして、科学的根拠に基づいた情報を提供することを大切にしています。

      この記事を書いた人

      東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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