更新日:2024.10.07ことば子どもの言葉の遅れは何歳から対応する?|成長と発達の違いとは
子どもの成長や発達は、親にとって大きな喜びと同時に不安の種でもあります。
特に「言葉の発達が遅れているのでは?」という心配を抱える親御さんは多いのではないでしょうか。
この記事では、言葉の遅れが問題になる時期や成長と発達の違いについて解説します。
目次
言葉の発達の目安とは?
子どもの言葉の発達には個人差がありますが、一般的な目安としては、次のような段階があります。
- 6か月〜1歳:音や言葉に対して反応し始め、1歳頃には「ママ」「パパ」などの簡単な単語を話し始めます。
- 1歳〜2歳:単語の数が増え、2語文(例:「ママ、来て」)を話せるようになります。この頃には、子どもは自分の意志を言葉で表現できるようになってきます。
- 2歳〜3歳:2語文からさらに発展し、3歳になると3語以上の文を話せるようになり、簡単な会話ができるようになります。
言葉の発達がゆっくり進む子どももいますが、2歳までに単語を話し始めない場合や、他の子どもと比べて極端に言葉の発達が遅い場合は、何かしらの問題が潜んでいる可能性があります。 このような場合、専門家に早めに相談することが重要です。
言葉の遅れが問題になる年齢
一般的に、言葉の発達の遅れが問題とされるのは2歳頃からです。この時期までに次のような行動が見られない場合、言葉の遅れが考えられます。
・単語をほとんど話さない:2歳までに「ママ」「パパ」「わんわん」などの単語を話し始めていない。
・2語文ができない:2歳半までに「ママ、抱っこ」などの2語文を話せない。
・簡単な指示に従えない:日常的な指示(例:「これ取って」「来て」)に反応しない。
このような場合、専門家への相談が推奨されます。言語発達の遅れは、早期に発見し、適切なサポートを受けることで改善されることが多いです。 特に言語療法や発達支援の介入は、将来的なコミュニケーションスキルの向上に寄与することが研究によって示されています 。 (Robertson et al., 1999).
言葉の遅れの原因は?
言葉の遅れには、さまざまな原因が考えられます。一部の原因は次の通りです。
- 聴覚障害:子どもが音をうまく聞き取れないため、言葉の発達が遅れる場合があります。耳の検査を行うことが重要です。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD):自閉症スペクトラム障害の子どもは、言語やコミュニケーションに課題を抱えることがあります。他の社会的スキルにも遅れが見られる場合には、この可能性を考慮する必要があります。
- 環境的要因:家庭環境や周囲の言語刺激が不足している場合も、言葉の発達が遅れることがあります。
これらの原因が関係しているかどうかを判断するためには、専門家による評価が必要です。 早期の評価と介入が、子どもの言語能力の向上に大きな影響を与えるため、気になる点があれば迷わず相談することが重要です。
成長と発達の違い
「成長」と「発達」はどう違うのか、ご存知でしょうか。 この2つの言葉は、しばしば混同されがちですが、それぞれ異なる意味を持ちます。
- 成長:主に身体的な変化を指します。身長や体重の増加、筋肉の発達、骨の成長などが該当します。成長は量的な変化であり、サイズや量が増加することを示します。
- 発達:身体的な変化だけでなく、認知的、感情的、社会的な側面の進歩も含みます。発達は、質的な変化であり、子どもが新たなスキルや能力を獲得するプロセスです。例えば、言葉を理解し、使いこなす能力や他者とコミュニケーションを取る能力が含まれます。
簡単に言えば、「成長」は身体が大きくなることを指し、「発達」は心や行動が進化することを指します。 特に言葉の発達に関しては、身体的な成長だけでなく、脳の発達や周囲の刺激が大きな役割を果たします。
子どもの言葉の発達をサポートするための方法
子どもの言葉の発達をサポートするためのエビデンスに基づいたアプローチ方法として、以下の方法が有効であることが複数の研究から確認されています。
家庭内や自然な環境での豊かな言語刺激
研究は、幼児期からの家庭内での読書や会話を通じた言語刺激が、子どもの言語発達に強く影響することを示しています。家庭での会話や読書の経験は、学校でのより構造化された教育環境に向けた基盤を形成します。 例えば、絵本の読み聞かせや、子どもの興味に基づいた会話が推奨されています (Terrell & Watson, 2018)。
対話型の介入方法(Focused Stimulationなど)
言語発達に遅れのある子どもには、特定の文法的なスキルや語彙を強化するために、フォーカスト・スティミュレーション(Focused Stimulation)という方法が効果的です。 このアプローチでは、セラピストが特定の語彙や文法を繰り返し使用し、子どもにそれを模倣させることで言語スキルを発達させます。この方法は、特に4~5歳児の言語発達遅延に対して効果があることが確認されています (Bruinsma et al., 2020)。
社会的・協同的な遊びを通じた言語発達
研究によると、他の子どもや大人との協同的な遊びが、言語発達を促進する効果があることが確認されています。共同で物語を作ったり、役割分担をして遊んだりすることで、言葉の使い方が自然と身につきます。 この方法は、特に言語に遅れのある子どもに対して有効です (Gillon et al., 2020)。
教育者や保育士へのトレーニング
専門的なセラピストが限られている環境では、保育士や教育者が言語発達のサポートを行うためのトレーニングを行うことが効果的です。これにより、日常の保育活動の中で自然に言語スキルを強化することが可能となります。 成人と子どもとの質の高い相互作用が特に重要であり、他の子どもたちと一緒に遊んだり学んだりすることやストーリーテリングなども有効です (El-Choueifati et al., 2012)。
個別指導とグループセッション
研究では、個別指導とグループセッションを組み合わせることで、特に言語発達遅延のある子どもたちに対して効果的な介入が可能であることが示されています。個別指導では、子ども一人一人のニーズに合わせた対応が可能であり、グループセッションでは他の子どもとのやり取りを通じた学びが強化されます (Roulstone et al., 2015)。
言葉の発達をサポートするための施設など
日本で子どもの言葉の発達をサポートするために、個別指導やグループセッションを受けることができる主な場所は、以下のような施設やサービスがあります。
1. 発達支援センター
日本各地にある「発達支援センター」は、発達に関する支援を提供しており、言語発達に関しても専門的なサポートが行われています。ここでは、言語聴覚士(ST)が個別指導を行うほか、グループセッションが開催されていることもあります。地域ごとにセンターが異なるため、最寄りの発達支援センターにお問い合わせいただくと、具体的なサービスを確認できます。
2. 病院やクリニックの言語療法科
大きな総合病院や小児科専門のクリニックには、言語療法(リハビリテーション)部門が設けられていることがあります。言語聴覚士による個別の言語療法や、他の子どもたちと一緒に学ぶグループセッションを提供している場合もあります。お子さんのかかりつけ医に相談し、専門医に紹介してもらうこともできます。
3. 療育施設
療育施設では、発達障害や言語発達の遅れに対するサポートを行っています。個別指導やグループセッションが組み込まれており、言語発達に特化したプログラムを提供する施設もあります。地域の福祉窓口や医療機関を通じて、利用できる療育施設について問い合わせることができます。
4. 子育て支援センター
一部の「子育て支援センター」では、言葉の遅れに不安がある子ども向けの親子で参加できるプログラムやグループ活動が行われています。子育て支援センターは地域に密着しているため、気軽に相談できる場所でもあります。センターによっては専門のスタッフが在籍しており、適切な施設への紹介をしてくれることもあります。
5. 特別支援学校・特別支援学級
発達障害や言葉の遅れを持つ子ども向けに、特別支援学校や、通常の学校内に設けられている特別支援学級で言語発達支援を受けることができます。ここでは、個別指導やグループでの言語訓練が行われ、専門の教員やスタッフが支援にあたります。
6. 民間の療育サービス
最近では、民間の療育センターやクリニックでも個別指導やグループセッションを提供している施設が増えています。こうした施設では、言語発達に特化したプログラムを提供し、専門家が子どもに合わせたサポートを行っています。費用は公的な施設に比べて高額になることがありますが、柔軟な対応が可能な場合もあります。
7. 児童発達支援事業
児童発達支援は、未就学児を対象にした福祉サービスで、個別の支援計画に基づいて、専門家による個別指導やグループセッションが行われます。地域の自治体を通じて利用申請が可能です。
これらの施設で受けられるサービスは、地域によって異なる場合があるため、最寄りの発達支援センターや医療機関に相談することが推奨されます。また、自治体の福祉サービスや子育て支援窓口を通じて、適切なサポートが受けられる施設を紹介してもらうこともできます。 ただでさえハプニングだらけの日々の子育ての中で不安も多いかと思います。 まずは専門家にご相談いただくことからはじめてみてはいかがでしょうか。 ことばリハモ for kids では言語聴覚士への相談を無料で行えます。 こちらのURLからお申し込みお待ちしております! https://rehamo.online/kotoba-for-kids/
参考文献
子どもの言葉の発達をサポートするエビデンスに基づいたアプローチに関する参考文献リストです。
- Thordardottir, E. (2010). Towards evidence-based practice in language intervention for bilingual children. Journal of Communication Disorders, 43(6), 523-537. リンク
- Terrell, P. A., & Watson, M. M. (2018). Laying a Firm Foundation: Embedding Evidence-Based Emergent Literacy Practices Into Early Intervention and Preschool Environments. Language, Speech, and Hearing Services in Schools, 49(2), 148-164. リンク
- Bruinsma, G., Wijnen, F., & Gerrits, E. (2020). Focused Stimulation Intervention in 4- and 5-Year-Old Children With Developmental Language Disorder: Exploring Implementation in Clinical Practice. Language, Speech, and Hearing Services in Schools, 51(2), 247-269. リンク
- Gillon, G., McNeill, B., Denston, A., Scott, A., & Macfarlane, A. (2020). Evidence-Based Class Literacy Instruction for Children With Speech and Language Difficulties. Topics in Language Disorders, 40, 357-374. リンク
- El-Choueifati, N., Purcell, A., McCabe, P., & Munro, N. (2012). Evidence-based practice in speech language pathologist training of early childhood professionals. Evidence-Based Communication Assessment and Intervention, 6, 150-165. リンク
- Roulstone, S., Marshall, J., Powell, G. G., Goldbart, J., Wren, Y., Coad, J., Daykin, N., Powell, J., Lascelles, L., Hollingworth, W., Emond, A., Peters, T., Pollock, J., Fernandes, C., Moultrie, J., Harding, S., Morgan, L., Hambly, H., Parker, N., & Coad, R. A. (2015). Evidence-based intervention for preschool children with primary speech and language impairments: Child Talk. リンク