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更新日:2025.03.18リハビリ3週間の安静は40年の加齢と同じくらい体力を低下させる

病気やけがで長い時間ベッドの上で過ごすと、体はどのように変化するのでしょうか?
入院や自宅療養中に「体が弱くなった」「動くのがつらい」と感じたことがあるかもしれません。

実は、長期間の安静は、加齢による体力の衰えよりも速く、筋力や心肺機能の低下を引き起こすことがわかっています。


「Dallas Bed Rest and Training Study」とは?

1966年に行われた「Dallas Bed Rest and Training Study」では、健康な若い男性が3週間ベッドの上で過ごした結果、40年分の加齢と同じくらいの体力低下が起こったことが報告されました。つまり、短期間の安静でも、私たちの体には大きな影響を与えるのです。

本記事では、「ベッドの上で過ごすとどのような影響があるのか?」、また「それを防ぐためには何ができるのか?」について、分かりやすく解説します。

安静が体に及ぼす影響

① 心肺機能の低下

心肺機能とは、「心臓と肺がどれくらい効率的に酸素を全身に届けることができるか」を示す力です。

長期間ベッドで安静にすると、酸素を取り込む力が弱まり、動くとすぐに息切れしやすくなります。

研究では、たった2週間の安静で心肺機能が大きく低下し、回復するまでに4週間以上かかることが示されています (Hedge et al., 2023)

➁ 筋力・筋肉量の減少

ベッドの上で動かないと、筋肉が使われずに細くなってしまいます。

高齢者では、10日間の安静でも脚の筋力が約16%低下することが確認されています (Coker et al., 2015)

特に、座る・立つ・歩くための筋肉(太ももやふくらはぎの筋肉)が弱くなりやすいです。

③ 代謝や血圧への影響

ベッドの上で過ごす時間が長くなると、体のエネルギーを使う力(代謝)が低下し、血糖値のコントロールが悪くなりやすくなります。

また、血圧の調整機能が落ちるため、急に立ち上がったときに「立ちくらみ」や「めまい」が起こることがあります (Hajj-Boutros et al., 2023)

40年分の加齢よりも深刻?研究が示す驚きの事実

「安静」と「加齢」の違い

加齢による体力低下は数十年かけてゆっくり進みます。しかし、安静による体力低下はわずか2週間で加齢の影響を超えてしまう可能性があります (Arentson-Lantz et al., 2016)

若い人と高齢者の違い

若い人は短期間の安静では大きな影響を受けにくいですが、高齢者は筋肉を作る力が弱いため、短期間の安静でも筋力が大きく低下します (Drummond et al., 2012)

先述の Dallas’s bed study では、3週間の安静は40年の加齢と同じくらい体力を低下させ、若い男性でも元の体力に戻るのに8週間、高齢者ではそれ以上の期間が必要というデータが出ていました。

安静による体力低下を防ぐためには

長期間の安静は、筋力や心肺機能の低下を引き起こします。しかし、適切な運動を行うことで、体力の維持や回復が可能です。特に、脳卒中のリハビリを受けている方や、そのご家族の方にとって、無理なく安全に行える運動を知ることは重要です。

 

体力・筋力の維持に必要な運動

① 低強度運動

  • ウォーキングやストレッチ: 1日2,000歩程度の軽いウォーキングや、座ったままできるストレッチを取り入れることで、筋肉量の減少を抑えることができます。また、ベッドの上でも足首を回したり、膝を軽く曲げ伸ばしするだけでも効果が期待できます (Galvan et al., 2017)

 

② レジスタンス運動(筋力トレーニング)

  • チューブや軽いウェイトを使ったトレーニング: ゴムチューブを使って腕や脚を軽く動かしたり、500mlのペットボトルをダンベル代わりにして腕の曲げ伸ばしを行うことで、筋力の低下を防ぐことができます。これらの運動は、筋肉を適度に刺激し、衰えを抑えるのに効果的です (English et al., 2016)

 

体力・筋力の向上に必要な運動

① 有酸素運動(トレッドミル・下肢エルゴメーター)

  • 心肺機能の維持・向上: トレッドミル(ランニングマシン)でのウォーキングや、下肢エルゴメーター(自転車型のトレーニング機器)を用いることで、心肺機能を向上させることができます。

  • 運動負荷量の設定(カルボーネン法): 運動強度の設定には脈拍数が簡単です。カルボーネン法(目標心拍数 = (最大心拍数 − 安静時心拍数) × 運動強度 + 安静時心拍数)を用いて設定します。

    • 初心者:目標心拍数の50~60%(安静時70回/分なら約110~124回/分)

    • 中級者:目標心拍数の60~70%(安静時70回/分なら約124~138回/分)

    • 上級者:目標心拍数の70~80%(安静時70回/分なら約138~152回/分)

  • ご自分にあった負荷量はこちらから簡単に計算できます。https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228740

 

② レジスタンス運動+アミノ酸摂取

  • 筋力を向上させるトレーニング: 体の各部位(脚、腕、背中)をバランスよく鍛えるために、スクワット、腕立て伏せ、チューブトレーニングを取り入れましょう。初心者の場合は、自重でのスクワット10回×3セットなどが適しています。

  • 負荷量の目安: 10~15回の動作を1セットとし、1日2~3セットを目安に実施。

  • たんぱく質やアミノ酸をしっかり摂取: 筋肉の分解を抑え、回復を促進するために、運動後にはたんぱく質を含む食事を摂ることが重要です。例えば、魚、肉、大豆製品などを意識的に取り入れましょう (Drummond et al., 2012)

 

まとめ|安静による体力低下を予防してリハビリをより効果的に!

長期間の安静は、加齢による体力低下よりも急速に筋力や心肺機能を衰えさせることが分かっています。特に高齢者は短期間の安静でも大きな影響を受けやすく、回復に時間がかかる傾向があります。しかし、適切な運動を取り入れることで、その影響を軽減できることが研究によって示されています。

軽いストレッチやウォーキング、レジスタンス運動を日常的に行うことで、体力や筋力の維持が可能になります。また、高強度インターバルトレーニング(HIIT)などを活用すれば、より効果的に体力を回復させることができます。

さらに、適切な栄養摂取も重要で、特にたんぱく質を十分に摂ることで筋肉の減少を抑えることができます。     病気や入院などで長期間動けない場合でも、少しずつ体を動かす習慣をつけることが、健康を維持する鍵となります。

できる範囲で、無理なく継続することが大切です。  

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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