更新日:2025.03.27リハビリ療法士との信頼関係がリハビリの効果を高める理由 ~「人と人」として向き合うことが、からだの回復につながる~
はじめに:リハビリで大切なのは“運動”だけじゃない
リハビリテーションというと、「筋トレ」「ストレッチ」「歩行練習」などの身体的なトレーニングを思い浮かべる方が多いかもしれません。
でも実は、誰と、どんなふうに取り組むかによって、その効果は大きく変わることがわかってきています。
中でも注目されているのが、「療法士との信頼関係(治療的同盟)」です。
「担当の療法士と話しやすいかどうか」
「納得してリハビリに取り組めているか」
「この人となら頑張れそうと思えるか」
こうした気持ちが、リハビリの“やる気”や“継続力”、
そして最終的な機能回復にも関係することが、最近の研究で明らかになってきました。
この記事では、療法士との信頼関係とリハビリの結果についての論文をもとに、
信頼関係の大切さやどうすればいいかについて記載します。
目次
信頼関係の力を科学的に検証した研究
2021年に発表された研究(Alodaibiら)では、腰痛の患者さん676人を対象に、リハビリ期間中の信頼関係(治療的同盟)とリハビリ成果の関係を調べました。
この研究では、以下のような流れでデータを集めています:
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アメリカの45の理学療法クリニックでデータを収集
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患者がリハビリの中間時点で「療法士との関係性」についてのアンケート(WAI-SR)に回答
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最終的なリハビリ効果(機能の改善度)は「腰部コンピュータ適応型テスト(LCAT)」で測定
その結果、次のようなことがわかりました。
結果①:信頼関係スコアが高い人ほど、リハビリ成果も高い
リハビリ中間時点での「信頼関係スコア(WAI-SR)」が高い人ほど、
リハビリ終了時の身体機能(LCATスコア)や、その改善度が高かったのです。
つまり、
「この療法士なら信頼できる」「話しやすい」「リハビリの目標に納得している」
→ だから「前向きに取り組める」「継続できる」
→ 結果として「体もよくなる」
という流れが、統計的にも確認されたのです。
結果②:「どんな人か」より「どう関わったか」が大事
さらに興味深いのは、「患者さんの年齢や性別、初回の機能レベル」などとは、この信頼関係スコアがほとんど関係していなかったという点です。
つまり、信頼関係は「患者さんのタイプ」ではなく、「どう接したか、どんな関係を築いたか」にかかっているのです。
信頼関係があると何がいいの?
この研究や他の文献から、信頼関係がリハビリに与える良い影響には以下のようなものがあります
信頼関係があると… | 効果 |
---|---|
話しやすい | 悩みや痛みを早く相談できる |
やる気が出る | リハビリを「やらされる」から「自分のために」へ変化 |
継続しやすい | 面倒な日でも「行こう」と思える |
納得できる | 自分の目標と一致したメニューなら頑張れる |
成果が出やすい | 結果的に、機能の改善や満足度が高まる |
信頼関係を育てるにはどうしたらいい?
では、実際に「信頼関係を育てる」にはどんなことができるのでしょうか?
患者さん、そして療法士さん双方にできることがあります。
◎ 患者さん側の工夫
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気になることは遠慮せずに聞いてみる
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「こんなふうに過ごしたい」など、自分の目標を話す
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「こういう運動が不安」と素直に伝える
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良かったことは「今日はちょっと楽でした!」とシェアする
◎ 療法士側の工夫
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最初に「目標や困っていること」をしっかり聞く
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リハビリの目的を毎回かんたんに説明
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小さな成果でも「できてますね」とポジティブに伝える
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雑談や共感で安心感をつくる
おわりに:リハビリは“共同作業”
体の回復を目指すリハビリは、運動だけでなく「人との関係づくり」も含めた総合的なプロセスです。
「この療法士さんとなら頑張れる」
「私のことをちゃんと見てくれている」
そんなふうに感じられる時間が、からだと心を動かし、リハビリを成功に導く大切な力になります。
そして、これは療法士さんにも、患者さんにもできることがあるという意味でもあります。
リハビリを「一緒につくる時間」と考え、遠慮せず気持ちや目標を伝えてみましょう。
それが、よりよい関係・よりよい回復につながっていきます。
参考文献
Alodaibi, F. A., et al. (2021). The Relationship of Therapeutic Alliance to Patient Characteristics and Functional Outcome During an Episode of Physical Therapy Care for Patients With Low Back Pain: An Observational Study. https://doi.org/10.1093/ptj/pzab026