お問い合わせ

更新日:2022.11.10医療・DX過疎地の医療充実に向けて注目される「遠隔医療」 どこまで進んでいる?

コロナの流行を機に、「オンライン診療」「遠隔医療」が再び注目されるようになりました。

ただ、「オンライン診療」や「遠隔医療」は、離島や過疎地域において重要なインフラとして導入の議論が以前から進んでいるものでもあります。

医師の移動を不要とするオンライン診療や遠隔医療は、医療現場の人手不足と山間・離島などの過疎地域で加速する少子高齢化といった2つの社会問題の解決につながると期待されているのです。

情報通信技術の進化によってオンライン診療や遠隔医療は現実のものとなりつつありますが、現在どこまで普及しているのか、その方法はどのようなものかを見ていきましょう。

オンライン診療・遠隔医療とは

「オンライン診療」が近年注目されるようになった背景には、新型コロナの感染拡大があります。

 

医療機関を受診したくても、実際に病院に行くと他の受診者を感染させてしまうかもしれない。

あるいは、自分が陽性でなくても、同じ病院に陽性者がいると感染の可能性が高まる。そのようなことを心配する人も少なくありません。

 

そのような理由から、病院に行かなくても診察を受けられるオンライン診療への注目は再び高まりました。

オンライン診療・遠隔診療のしくみ

オンライン診療・遠隔診療は、直接病院や医院に行かなくても、電話やスマートフォンで医師とつながることで症状について相談し、医師に指示をあおぐという診察スタイルです。外来や在宅診療とは異なる形です(図1)。

 

図1 オンライン診療の位置付け
(出所:「遠隔医療モデル参考書-オンライン診療版-」総務省)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000688635.pdf p10

 

厚生労働省の統計によると、令和3年12月末時点で、全国にある112,576医療機関(病院・一般診療所)のうち17,405の医療機関が「電話や情報通信機器を用いた診療を実施できる」として登録されています*1。

 

そして、その医療機関に受診歴のない患者にも電話やオンラインで診療を実施したという医療機関も出てきています(図2)。

 

 

図2 電話・オンライン診療の実施医療機関数

(出所:「令和3年10月~12月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000946496.pdf p6

 

なお、厚生労働省は電話やオンライン診療の患者は子どもや勤労世代に多く、全体的には軽傷と思われる患者を中心に初診からの電話・オンライン診療が行われている傾向にあるとしています。

また一部では、医療物理的に大きく離れた地域に対して電話やオンライン診療が行われていたとも報告しています*2。

離島・へき地でのオンライン診療

また、離島・へき地では、オンライン診療と最新技術を組み合わせたシステムの実験も進んでいます。

オンライン診療から離島への医薬品搬送

2021年12月には大分県佐伯市で、オンライン診療とドローンでの医薬品や検体の輸送という実証実験も行われました(図3)。

図3 ゼンリンなどが開発した遠隔診療システムのイメージ
(出所:「離島・へき地を支える医療現場の課題解決へ」大分県) p.3

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2129363.pdf 

 

その結果、佐伯市の「丹賀診療所」から、離島である大島中部の大島診療所、また大島の北部にある鶴見地域の診療所に向けてのドローン輸送は、

 

医薬品の場合、

・丹賀-大島間飛行(飛行距離:4.5km、飛行時間 10 分) 

 丹賀診療所と大島診療所でのオンライン診療後の医薬品配送 

 

検体の場合、

・丹賀-鶴見間飛行(飛行距離:11km、飛行時間 20 分)

 丹賀診療所で採取した検体の輸送(本実証では模擬又はサンプル検体を使用)

 

という結果が得られています*3。

 

図4 佐伯市丹賀と大島
©︎google

 

今後、受け渡し方法や安全な医薬品管理等の検証も進められます。

 

 

 

 

医師不在でのオンライン診療

また、山形県では、普段遠くの診療所へ通う患者の定期通院の一部をオンライン化するモデル事業が始まっています(図5)。

 

 

図5 山形県のオンライン診療モデル事業のイメージ
(出所:「令和4年度山形県へき地診療所等におけるオンライン診療モデル事業(概要)」)

https://www.pref.yamagata.jp/documents/29753/20220915-03outline.pdf 

 

医師は普段通り病院にいながら、現地の診療所では看護師が診療や機器操作の補助を行う形です。

これによって、患者と医師双方にこのようなメリットがあると期待されています*4。

 

まず、患者側としては、

・ 普段どおり診療所等に通うため心理的負担が少ない。

・ 機器の操作は看護師が補助するため、操作の負担もない。

 

医師としては、

・ 病院で診察できるため、へき地診療所へ移動する負担がない。

・ 有機EL照明等の利用により、患者の顔色や患部を肉眼に近い形で診ることができる。

 

というものです。

 

残る課題の解消に向けて

遠隔診療については、厚生労働省がガイドラインの策定を進めているところです*5。

 

厚生労働省が実施した令和3年10~12月の電話診療・オンライン診療に関する検証では、一部では時限的・特例的な取り扱いで禁止されている麻薬・向精神薬の処方が行われていたことも明らかになっています*6。

 

ガイドラインでは、以下のような事項を最低限遵守すべきとしています。例えば診察方法についてはこのようなものです(抜粋)*7。

 

・患者の状態について十分に必要な情報が得られていると判断できない場合には、速やかに直接の対面診療を行う

・リアルタイムの視覚・聴覚の情報を含む手段を取る。補助的に画像や文字を使ったとしても、文字、写真や録画動画のみのやりとりで完結してはいけない。

・同時に複数患者の診療を行ってはならない。

・医師の他に医療従事者等が同席する場合は、その都度患者に説明を行い、患者の同意を得る。

 

特に初診の扱いです。基礎疾患がある場合の把握、現在服用している薬の種類などの情報は、「かかりつけ医」との密接な関係も有効な手段でしょう。

 

医師の働き方改革や、少子高齢化が進む中でどこにいても適切な医療を受けられる制度の確保のために、遠隔診療は欠かせない手段になっていくでしょう。

 

トラブルや重大なミスが起きないよう、実施する医療機関側、受診する患者双方に知識の十分な周知が求められていきます。

参考文献

*1

「令和3年10月~12月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000946496.pdf p4

 

*2、6

「令和3年10月~12月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000946496.pdf p2

 

*3

「離島・へき地を支える医療現場の課題解決へ」大分県) p.3

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2129363.pdf 

 

*4

「令和4年度山形県へき地診療所等におけるオンライン診療モデル事業(概要)」山形県

https://www.pref.yamagata.jp/documents/29753/20220915-03outline.pdf 

 

*5

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf 

 

*7

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf p19

この記事を書いた人

清水沙矢香2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

関連記事

アプリのダウンロードはこちら

App Store Google Play