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更新日:2024.06.18ヘルスケア【2024年版】パーキンソン病の起立性低血圧改善に役立つリハビリ|理学療法士監修

このブログでは、パーキンソン病患者やそのご家族の方々に向けて、役立つ情報やアドバイスをお届けしています。
理学療法士監修のもと、科学的根拠に基づいたリハビリテーションの方法や生活の工夫を紹介しています。

今回は、パーキンソン病に伴う起立性低血圧(OH)に焦点を当て、その改善に役立つリハビリ方法について詳しく解説します。

パーキンソン病における起立性低血圧とは

 

パーキンソン病(PD)における起立性低血圧(OH)は、立ち上がったときに血圧が急激に低下する状態を指します。

 

具体的には、起立後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下することを言います。

 

OHはパーキンソン病患者において頻繁に見られ、めまいやふらつき、失神などを引き起こし、日常生活の質に大きな影響を与えることがあります【1】。

 

 

メカニズム

パーキンソン病におけるOHは、主に自律神経系の障害に起因します。

 

パーキンソン病では、脳の特定の部分(特に黒質や青斑核)でドーパミンを生成する神経細胞が減少し、自律神経の調節がうまくいかなくなります。これにより、血圧の調整が困難になり、立ち上がったときに血液が下半身に溜まりやすくなります。

 

その結果、脳への血流が一時的に不足し、OHが発生します【2】。

 

パーキンソン病患者におけるOHの管理方法

 

起立性低血圧(OH)の管理は、パーキンソン病患者の日常生活の質を向上させるために非常に重要です。

 

管理方法としては、以下のような方法があります。

 

  1. 抗高血圧薬の減量:高血圧の薬を調整することで、OHの症状を軽減できます【3】。
  2. 十分な水分摂取:水分をしっかり摂ることで血液量を増やし、血圧の安定に寄与します【4】。
  3. 食塩摂取の調整:塩分を適切に摂ることで、血圧を維持するのに役立ちます【4】。
  4. 高圧ストッキングの使用:特別なストッキングを着用することで、血流を助け、立ち上がったときの血圧低下を防ぎます【5】。
  5. ベッドの頭部の上昇:寝るときにベッドの頭を少し上げることで、夜間の血圧変動を抑えることができます【6】。
  6. フルドロコルチゾンやミドドリンの使用:これらの薬は血圧を安定させるのに有効ですが、特に夜間の高血圧には注意が必要です【7】。

 

ライフスタイルの変更と非薬物療法の有効性

 

パーキンソン病におけるOHの管理には、ライフスタイルの変更が重要です。

 

例えば、水分と塩分の摂取量を増やすことや、腹部バインダーや圧迫ストッキングを使用することが効果的です。

 

これらの方法は、特に非運動症状の改善に寄与します【8】【9】。

日常生活でできる工夫

ゆっくりと立ち上がる

座っている状態から立ち上がる際は、ゆっくりと行動するようにしましょう。急に立ち上がると血圧が急激に低下する可能性があるため、まずは数秒間立ち上がり、次に完全に立ち上がるようにします【10】。

 

 

圧迫ストッキングの着用

 

特別な圧迫ストッキングを日常的に着用することで、血液の流れを助け、立ち上がったときの血圧低下を防ぐことができます。これにより、めまいやふらつきを軽減することができます【5】。

 

 

食事の工夫

 

食事の際に塩分を適度に摂ることや、小さい食事を1日に数回摂ることが効果的です。大きな食事を摂ると、一時的に血液が消化器官に集中し、血圧が低下しやすくなるため、少量の食事をこまめに摂ることが推奨されます【4】。

 

 

自宅でできる起立性低血圧対策の運動

足踏み運動

 

座ったままの状態で足を軽く持ち上げて、足踏みをするように動かします。

 

これを1分程度行うことで、足の血流が良くなり、立ち上がったときの血圧低下を防ぐのに役立ちます【11】。

 

 

かかと上げ運動

 

  1. 立った状態で、ゆっくりとかかとを持ち上げ、つま先立ちになります。
  2. 数秒間保持してから、ゆっくりとかかとを下ろします。

 

これを数回繰り返すことで、ふくらはぎの筋肉を刺激し、血液の循環を促進します【12】。

スクワット

 

足を肩幅に開いて立ち、ゆっくりと腰を落としてスクワットを行います。無理のない範囲で数回行うことで、下半身の筋力を強化し、血液の流れを改善します【13】。

 

 

まとめ

 

パーキンソン病患者の起立性低血圧(OH)の管理には、非薬物療法と薬物療法の両方を組み合わせたアプローチが推奨されます。

 

これにより、患者の運動機能、歩行、バランス、そして認知機能の改善が期待できます。総合的な管理を行うことで、患者の生活の質を大きく向上させることが可能です。

 

お薬の調整についても重要ですので、受診の際などに担当の先生によく相談されてください。

皆様がパーキンソン病とうまく付き合って、ご自身の生活を楽しんでいただければと思います。

 

 

参考文献

 

  1. Fanciulli, A., & Wenning, G. K. (2015). Orthostatic hypotension in Parkinsonism. International Review of Neurobiology, 119, 257-292.
  2. Palma, J. A., & Kaufmann, H. (2020). Autonomic disorders predicting Parkinson’s disease. Parkinsonism & Related Disorders, 73, 20-28.
  3. Hohler, A. D., Singh, S. M., & Agostini, M. (2012). Blood pressure changes in Parkinson’s disease. Parkinsonism & Related Disorders, 18(2), 102-107.
  4. Palma, J. A., & Kaufmann, H. (2017). Treatment of autonomic dysfunction in Parkinson disease and other synucleinopathies. Movement Disorders, 32(3), 350-367.
  5. Paschen, S., Mollenhauer, B., & Mollenhauer, M. (2022). Orthostatic hypotension in Parkinson’s disease: A guide to diagnosis and treatment. Journal of Parkinson’s Disease, 12(1), 59-71.
  6. Low, P. A., Tomalia, V. A., & Park, K. J. (2015). Autonomic function tests: Some clinical applications. Journal of Clinical Neurology, 11(2), 80-89.
  7. Reich, S. G. (2019). Midodrine for the treatment of orthostatic hypotension. The American Journal of Medicine, 132(2), e25-e26.
  8. Fanciulli, A., & Wenning, G. K. (2020). Autonomic dysfunction in neurodegenerative disorders. European Journal of Neurology, 27(2), 242-258.
  9. Freeman, R. (2008). Treatment of orthostatic hypotension. The Journal of Clinical Hypertension, 10(6), 504-510.
  10. Kaufmann, H., & Biaggioni, I. (2003). Autonomic failure in neurodegenerative disorders. Seminars in Neurology, 23(4), 351-363.
  11. Cheshire, W. P., & Freeman, R. (2003). Treatment of neurogenic orthostatic hypotension. American Journal of Health-System Pharmacy, 60(1), 16-24.
  12. Horacio, K. (2017). Managing orthostatic hypotension: Pharmacological treatment options and challenges. Movement Disorders, 32(5), 673-678.
  13. Pasquier, A., Nacher, M., & Paquette, C. (2010). Physical exercise in Parkinson’s disease: From animal data to clinical trials. Frontiers in Neurology, 11, 365.

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。理学療法士・医学修士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、健康格差に関する研究、楽しい介護予防を目的とした市民活動団体の設立など活動中。学生時代の経験から志した「健康に格差のない、障害があっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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