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更新日:2022.12.12療法士キャリアはらこ飯 ー私が作業療法士として大切にしていること

こんにちは!
作業療法士の庄子と申します。

皆さんは、“はらこ飯”をご存知でしょうか?
はらこ飯(はらこめし)は、炊き込みご飯の一種で、醤油や味醂などと一緒に鮭を煮込んだ煮汁で炊き込んだご飯の上に、鮭の身とイクラ(はらこ)をのせて食べる郷土料理です。

“はらこ飯”、これが私が作業療法士として働く上で大切にしていることです。

大好きな祖父の得意料理

はらこ飯は、祖父の得意料理でした。

祖父は私が学生の頃、癌になり在宅で最期を迎えました。

 

祖父は母が子供の頃、現役で仕事をしていた頃から、家族の食事を用意することを日課にしていました。

癌になり私達と同居することになってからも、毎日手料理を振る舞ってくれました。

 

祖父は調子が悪い姿を人に見せようとせず、身の回りのことを、可能な限り自分でやろうとしました。

 

家族も祖父の意思をくみ、祖父ができる限り自分のやりたいことに取り組めるようにと思っていました。

 

医師に宣告されていた余命を越えてもなお食事をつくり続ける祖父の姿に、私はいつしか祖父の最期が近いことに対して、どこか現実離れした感覚を覚えていました。

 

「こんなに元気なのに癌なの?」

「いつどうなってもおかしくないと言うけど…」

「もしかしたら調子が上向きになるんじゃない?」

 

その当時は、作業療法士として働いている今ではとても口にできないような、浅はかな考えを持っていたことを覚えています。

祖父の最期の日

私は祖父にいつものように朝の挨拶を済ませ、学校へ行きました。私が学校にでかけた後、祖父は訪問診療に来てくださる主治医の先生に渡そうと、はらこ飯を用意していたそうです。

 

その日の夜、学校で課題に取り組む私の携帯電話に、母から連絡が来ました。

 

「じいちゃん、そろそろ危ないよ。早く帰っておいで!」

 

私は言われている意味が理解できず、頭が真っ白になりました。「朝まではいつもと変わりなく過ごしていたのに…」と呆然とする私に、友人が「どうした?」と声をかけてくれました。

 

事情を話すと友人は「早く帰りな!」と後押ししてくれました。私はハッとして走り出しました。

 

電車に乗り、自宅の最寄り駅につき、気持ちの整理ができないまま走っていると、今度は従兄から電話が来ました。

 

「じいちゃん、亡くなったよ…」

 

自宅につくと、祖父は家族に囲まれて眠るようにベッドに横たわっていました。

在宅で生活するということ

祖父が亡くなったあと、家族は口を揃えて「じいちゃん、頑張ったよね。」「最期まで、じいちゃんらしく過ごせたんじゃないかな。」と話していました。

 

私は今でも「もっと何かできることがあったんじゃないか?」「じいちゃんは幸せだったのかな?」と考えることがあります。

 

しかし、今振り返ると「当たり前の日常を過ごす」という一見して簡単そうでとても難しいことを、祖父が主体になってやりぬけたこと、それに家族が寄り添ったことは、大切なことだったのではないかと思います。

 

私は今、宮城県にあるリハ特化型訪問看護ステーションさんぽ仙台に勤め、利用者様のご自宅にうかがいリハビリを行っています。

 

利用者様ひとりひとりに価値観の違いがあり、生活の歴史があり、「自分らしく過ごしたい」という思いがあるのを日々感じています。私はまだまだ未熟で、精進しなければならないことが沢山あり、時には壁にぶつかることもあります。

 

そんなときはいつも初心に立ち返り、利用者様とよくお話することにしています。

 

利用者様にとっての“はらこ飯”が見つかるように。

この記事を書いた人

庄子貴洋1991年宮城県生まれ。作業療法士。病院勤務や老健勤務を経て、看護師である母の影響や祖父母との生活から、「利用者様が自分らしい暮らしができること」を目指して在宅支援を志すようになる。訪問看護ステーションでは精神科や小児の作業療法にも関わるように。 料理上手な祖父の影響で食いしん坊に。三度の飯がカレーライスだったらいいなと願っている。

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