更新日:2022.11.16その他亡くなった家族が内緒で持っていた保険や株はどうしたら?そんな時は各「照会制度」を利用しよう
親や配偶者が亡くなると、口座解約や名義変更などの相続手続きが必要です。家族がどんな保険や株を持っているか知らなければ、保険金や財産を受け取れなくなるリスクが生じます。その場合は、保険や株の「照会制度」を活用するのが有効です。
今回は、家族の生命保険契約や証券口座の有無を確認できる「照会制度」について詳しく解説します。
目次
保険や株の「照会制度」とは
照会制度とは、家族の生命保険契約や株・投資信託などの証券口座の有無を確認できる制度です。
家族が亡くなったり、認知症になって意思疎通がとれなくなったりすると、保険金の請求や相続手続きなどに支障が出てしまいます。
近年は親と同居しない人も多く、家族が保険契約や金融資産の存在を把握していないケースが増えています。そんな時は、以下2つの照会制度を利用することで、家族の生命保険や株・投資信託の有無を把握できます。
- 生命保険契約照会制度(生命保険)
- 登録加入者情報の開示請求(上場株式等)
ここからは、「生命保険契約照会制度」と「登録加入者情報の開示請求」の概要について詳しく見ていきましょう。
生命保険契約照会制度の概要
生命保険契約照会制度とは、家族の生命保険契約の有無を照会できる制度です。
亡くなった家族がどんな保険に加入していたかわからないと、保険金の請求を行うのは困難となります。
その場合は、生命保険協会を通じて、協会に加盟している生命保険会社全社に対して保険契約の有無を照会できます。保険契約の照会が認められる事由は以下の通りです。
- 平時の死亡
- 認知判断能力の低下
- 災害時の死亡・行方不明
照会対象者が上記の状態にあり、生命保険契約の存在が不明な場合に調査を依頼できます。調査結果は生命保険契約の有無のみで、契約内容の調査や保険金の請求などは自分で行う必要があります。*1
利用できる人
照会対象者が死亡している場合、照会制度を利用できる人は以下の通りです。*2
- 照会対象者の法定相続人
- 法定相続人の法定代理人または任意代理人
- 照会対象者の遺言執行人
配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外は亡くなった方の「(1)子ども」「(2)父母や祖父母」「(3)兄弟姉妹」の順序で配偶者と一緒に相続人となります。*3
照会できる生命保険の範囲
生命保険協会が照会を受け付けた日現在、有効に継続している個人保険契約が調査対象です。契約者および被保険者の名寄せを行い、照会対象者の生命保険契約の有無について調査を行います。
ただし、以下の保険契約は対象外です。*1
- 財形保険契約
- 財形年金保険契約
- 支払いが開始した年金保険契約
- 保険金が据え置きとなっている保険契約
保険金の据え置きとは、保険金の全部または一部を所定の利率で保険会社に預かってもらうことをいいます。*4
手続きの流れ
照会対象者が死亡した場合の手続きの流れは以下のとおりです。
- 必要書類を準備する
- WEBまたは書面で申し込む
- 利用料を支払うと調査が開始される
- 生命保険協会から照会結果が届く
申込方法は「WEB(オンライン)」と「書面」の2つです。利用料は照会1件につき税込3,000円で、クレジットカード払いまたはコンビニ払いで決済します。
調査の結果、契約が存在しなくても利用料は返金されません。また、調査開始後に申込内容を訂正する場合は新たな照会申込となり、利用料3,000円が別途発生するので注意しましょう。*2
利用料の支払い確認後、通常は2週間程度で照会結果が通知されます。保険契約が確認できた場合は、保険会社のコールセンターなどに問い合わせて保険金の請求手続きを行いましょう。
必要書類
法定相続人が照会を行う場合の必要書類は以下の通りです。
- 照会者の本人確認書類
- 法定相続情報一覧図または相続人と被相続人の関係を示す戸籍など
- 照会対象者の死亡診断書
書類は原本ではなく、すべてコピーを提出します。代理人が申請する場合は、上記書類のほかに代理権を確認できる書類(登記事項証明書、委任状など)が必要です。*2
「登録済加入者情報の開示請求」の概要
登録加入者情報の開示請求とは、上場株式などの口座がある金融機関を確認できる制度です。亡くなった家族が、株や投資信託を保有していた証券口座を把握したいときに利用できます。証券保管振替機構(ほふり)を通じて、情報の開示請求が可能です。*5
利用できる人
照会対象者が死亡している場合、開示請求を利用できる人は以下の通りです。*6
- 照会対象者の法定相続人
- 法定相続人の法定代理人または任意代理人
- 照会対象者の遺言執行人
確認できる情報の範囲
開示請求で確認できるのは、開示時点で口座が開設されている証券会社や信託銀行の一覧です。銘柄名や取引履歴、保有残高などは開示されません。開示請求の結果をもとに、金融機関に直接問い合わせる必要があります。*5
手続きの流れ
開示請求の手続きの流れは以下のとおりです。
- 必要書類を準備する
- 必要書類を郵送で提出する
- 開示結果を受け取る
窓口では受け付けていないため、必要書類は郵送で提出します。開示結果は書類受付から2~3週間程度で代金引換、簡易書留で届きます。郵便局職員に費用を支払い、開示結果を受け取りましょう。
相続人が請求する場合、開示費用は1件につき税込6,050円です。法務局発行の法定相続情報一覧図(原本)を提出すると税込1,100円割引となります。*6
必要書類
法定相続人が開示請求を行う場合は、以下の必要書類を準備します。
- 開示請求書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 法定相続情報一覧図(原本)または相続人と被相続人の関係を示す戸籍など
- 被相続人の住所確認書類(本人確認書類、住民票の除票など)
開示請求書は、ほふりのホームページからダウンロードできます。法定相続情報一覧図がない場合は、戸籍謄本などが必要です。*7
住民票の除票とは、転出や死亡などで除かれた住民票のことで、自治体の窓口で入手できます。*8
照会制度を利用する前に確認しておきたいこと
保険や株の照会制度を利用する前に、以下について確認しておきましょう。
家族が元気なうちに話し合う
まだ相続が発生していない場合は、家族が元気なうちに話し合うことが大切です。生前のうちに家族がどんな保険や財産を持っているかを把握しておけば、相続が発生した際に困らずに済みます。帰省したタイミングなどを利用して、話し合う機会を作りましょう。
生命保険証券や郵送物、預金通帳明細を探す
照会制度を利用する前に、生命保険証券や保険会社・金融機関からの郵送物がないかを探しましょう。これらの書類は、保険契約や証券口座の有無を把握する手掛かりになります。
また、預金通帳明細を見れば、保険料や株の購入資金などの口座振替履歴を確認できるかもしれません。取引している保険会社や証券会社が判明すれば、直接問い合わせることが可能です。
まとめ
亡くなった家族がどんな保険・財産を持っていたかわからないときは、照会制度を利用すると保険契約や証券口座の有無を確認できます。生前のうちに話し合えるのが理想ですが、急に相続が発生し、保険や株に関する手掛かりがない場合は照会制度をうまく活用しましょう。
参考文献
*1
出所)生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」
https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/
*2
出所)生命保険協会「生命保険照会制度(死亡)」
https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/decease/
*3
出所)国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
*4
生命保険文化センター「生活基盤の安定を図る生活設計(据置)」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/834.html
*5
出所)証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」
https://www.jasdec.com/system/less/certificate/kaiji/index.html
*6
出所)証券保管振替機構「ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合」
https://www.jasdec.com/system/less/certificate/kaiji/chokusetu/index.html
*7
出所)証券保管振替機構「必要書類 -法定相続人による請求-」
https://www.jasdec.com/system/less/certificate/kaiji/chokusetu/souzoku1.html
*8
出所)中野区「住民票の除票とはなんですか?」
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/faq/001/002/d000499.html