お問い合わせ

更新日:2023.01.30その他マイナンバーカードの保険証利用開始 気になるメリット・デメリットを医師が解説

医療機関・薬局などで、マイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになりました。
本人同意の上で、過去の特定健診や薬剤情報を医師等と共有できることや、自分の特定健診や薬剤情報を閲覧できるなどのメリットがある一方、現時点ですべての医療機関や薬局が対応しているわけではないというデメリットもあります。
今回は、マイナンバーカードを保険証として利用することについて、医師の観点から、メリットとデメリットを解説します。

マイナンバーカードとは?

まずは、マイナンバーカードとは何かについてご紹介します。

(1)マイナンバーカードについて

マイナンバーカードは、マイナンバーが記載された顔写真付のカードのことです。

プラスチック製のICチップ付きカードで、券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーと本人の顔写真等が表示されます。

本人確認のための身分証明書として利用できるほか、自治体サービス、e-Tax等の電子証明書を利用した電子申請等、様々なサービスにも利用できるものです。*1

(2)保険証としても使えるように

マイナンバーカードは、公的な身分証明書として当初、運用が開始されました。

今後は、多くの場面で活用可能にするべく機能が追加される予定です。

医療の分野もその例外ではなく、令和3年10月からマイナンバーカードの健康保険証利用の本格運用がスタートしました。*2

 

それでは、マイナンバーカードを保険証として利用することのメリットとデメリットを、医師の観点から解説します。

マイナンバーカードを保険証として利用することのメリットとデメリットは?

(1)マイナンバーカードのメリット

1)-1 情報がまとまる

筆者としては、これが一番のメリットと言えるのではないかと思います。

持病が多い方だと、かかりつけ以外の病院を受診した際に、現在治療中の病気や内服薬について、すべて正確に伝えることは難しい場合があります。

お薬手帳やメモを持っていることは大切ですが、中にはそうした自己管理が困難な方もいるでしょう。

このような場合に、マイナンバーカードを保険証として利用すれば、情報が一元化できます。

 

1)-2 診療情報や特定健診の情報を医療機関で見ることができる

マイナンバーカードを保険証として利用できる医療機関には、オンライン資格確認等システムが導入されています。

その場合は、医療機関や薬局で、診療情報や薬剤情報、特定健診等の情報を閲覧できるようになります。*3

 

マイナンバーカードを保険証として利用できる医療機関では、カードリーダーで受付を行います。

その際に、過去の治療の情報を医療機関に連携するかどうか確認を促されます。*4

 

マイナンバーカードと保険証を紐づけておくことで、医療情報が医師に連携されるようになり、患者さん本人がすべてを説明する必要がなくなります。

これにより、正確な情報が医師に伝わるようになることが期待できるでしょう。

 

処方薬だけでなく、40歳以上の健康保険加入者に義務付けられている「特定健康診査・特定保健指導」(通称「特定健診」)の情報も、令和2年度以降に実施した5年分の情報を参照可能です。*5

 

ただし、処方された薬がレセプトにリアルタイムで反映されるわけではないので、月単位でのタイムラグが生じるという点には注意が必要です。

 

こうした情報共有は、旅行時や災害にあった際などの、「普段とは異なる医療機関を受診する」場合にも有効と考えられます。

また、急病で救急搬送される場合を想定した報連携なども検討がなされています。*6

 

医療に関する情報が1枚のカードから読み取れることは、医療従事者の側からも正確な経過を知ることができ、メリットになると言えるでしょう。

 

1)–3 自宅で自分の内服薬や特定健診の情報を見ることができる

病院だけでなく、自宅であっても、マイナポータルを使うと自分の内服薬や特定健診の情報を一覧で閲覧できます。*7

 

方法は以下の通りです。

引用)*8 マイナポータルの機能追加について

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20211126_myna_portal_01.pdf p1

 

自分の医療情報をまとめて確認できるということは、体調管理の上でも役にたつでしょう。

 

2)受付での対人接触の機会が減る

マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関では、顔認証機能付きのICカードリーダーが設置されています。*9

 

引用)*9 オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として

https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000663427.pdf p11

 

リーダーにマイナンバーカードをかざし、顔認証や暗証番号入力によって本人と確認されますので、対人接触の機会が減少するという効果が期待できます。

コロナのみでなく、かぜやインフルエンザの流行期などでは、できる限り人との接触をしないことが感染拡大予防にとって重要と考えられますので、こちらもメリットといえるでしょう。

 

(2)デメリット:すべての医療機関で対応しているわけではないこと

現時点では、マイナンバーカードの健康保険証利用はすべての医療機関が対応しているわけではありません。

 

2022年5月の厚生労働省の調査によると、マイナンバーカードと保険証の紐付けができる、つまりオンライン資格確認ができるようになっている施設は、顔認証付きカードリーダー申込施設数 57.6%、準備完了施設数 24.0%、運用開始施設数 18.4%でした。*10

 

そして、9月18日時点ではオンライン資格確認の導入状況は、顔認証付きカードリーダー申込施設数75.4%、準備完了施設数 34.7%、運用開始施設数 29.1%にまで準備が進んでいます。*11

つまり、2022年9月時点では、マイナンバーカードを保険証として利用できる医療機関は3割弱であったということになります。

カードリーダーの設置やマイナンバーカードの保険証利用が進んでいることがわかります。

なお現時点で対応する医療機関は、厚生労働省のホームページから確認ができます。*12 

 

筆者が勤めている医療機関は健康診断や内科診療を行うクリニックですが、マイナンバーカードの保険証としての利用が可能となっています。

全ての医療機関で、マイナンバーカードを保険証として利用することができない、ということはデメリットでしょう。

規模の小さい医療機関では、費用面や人員の面などから読み取り機械などを設置することが難しい場合もあるかもしれませんが、今後さらにオンライン資格確認ができる施設が増えることが期待されます。

 

まとめ

今回は、マイナンバーカードを保険証として利用することのメリットとデメリットについて医師の観点から解説しました。

高齢化に伴い、持病を複数抱え、自分が内服している薬や受けている治療をきちんと把握することが難しいという人も、増えることが予想されます。

こうした中、情報の一元化が可能になるということは、医療者側と患者側の双方にとってのより安全な医療につながると思います。

 

今回あげた以外のデメリットもありますが、医療に関する情報の共有が可能となるというメリットは大きいのではないでしょうか。

ぜひ、メリットとデメリットを知った上で、保険証とマイナンバーカードの紐付けをするかどうか、判断していただければと思います。

 

参考文献・参考サイト

*1 マイナンバーカードについて – マイナンバーカード総合サイト

https://www.kojinbango-card.go.jp/card/

 

*2 マイナンバーカードの健康保険証利用の本格運用がスタートしました|デジタル庁

https://www.digital.go.jp/news/lCQU-uoB/

 

*3 オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として

https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000663427.pdf p1

 

*4 オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として

https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000663427.pdf p3

 

*5 マイナンバーカードの健康保険証利用について~医療機関・薬局で利用可能

https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000577618.pdf p9

 

*6 マイナンバーカードを活用した救急業務の 迅速化・円滑化に向けた検討

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-118/01/shiryou1.pdf p4

 

*7 マイナンバーカードの健康保険証利用について~医療機関・薬局で利用可能https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000577618.pdf p8

 

*8 マイナポータルの機能追加について

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20211126_myna_portal_01.pdf p1

 

*9 オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として

https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000663427.pdf p11

 

*10 オンライン資格確認の進捗状況について

https://www.med.or.jp/doctor/sys/onshi/pdf/20220511/01_s02.pdf p2

 

*11 医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入状況 1

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/40dc0aa8-e266-4adf-84e8-f58e4faadbf5/8a64d4c1/20220929_meeting_my_number_outline_04.pdf

 

*12 マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局についてのお知らせ(国民向け) | 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/index_16743.html

 

この記事を書いた人

nishicherry2480行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

関連記事

アプリのダウンロードはこちら

App Store Google Play