お問い合わせ

更新日:2023.01.13その他意外と知らない?薬局で医療費を節約する方法と薬剤師を「上手に」利用する方法

物価の上昇にともなう食品や生活必需品の相次ぐ値上げで、家計の見直しを迫られているご家庭も多いのではないでしょうか。
また、令和4年10月からは後期高齢者の窓口負担割合が変更された*1ため、
「医療費を節約したい」
「薬局で支払う金額をおさえたい」
と考えている方も少なくないでしょう。

実際、平成29年の健康保険組合連合会の報告によると、国民1人当たりの医療費負担が「重い」「やや重い」と感じている人は2,000人中1,488人でした。
重いと感じる理由として、「医療機関等にかかったときの自己負担費用が高すぎる」と答えた人が4割以上、「医療費そのものが高すぎる」と答えた人は5割を超えていました。*2

このように、医療費の負担が重いと感じつつも、どのようにすれば負担額を減らせるのかよくわからず、間違った情報を鵜呑みにしている方もいるようです。
また、薬剤師を「上手に」利用することで、医療費の節約につながる場合があることを知らない方も多いようです。

そこで今回は、薬局で医療費を節約する方法と、薬剤師を「上手に」利用して薬局窓口での支払額をおさえる方法を併せて紹介します。

薬局での支払額節約に関する嘘・本当

はじめに、薬局窓口での支払について誤って理解されていることが多い「誤情報」と、実際に医療費の節約につながる方法をいくつか紹介します。

薬局での支払額節約に関する「嘘」

まず、薬局での支払額節約に関して誤解の多い内容を見ていきましょう。

 

「薬剤情報の紙を拒否すると支払額が安くなる?」

薬剤に関する情報を記載した紙(薬剤情報提供書:通称「薬情」)を拒否しても、支払額は安くなりません。

 

数年前に、テレビで「薬情を断ると支払額が安くなる」という誤情報が大々的に放送されたため、「薬情をもらわないほうが支払額が安くなる」と信じている方もいるようですが、そもそも薬情単独での加算は設定されていません。

 

薬情には、手帳には記載されていない詳しい情報も載っています。「検査前に血液サラサラの薬を中止しなければならない」というような場合でも、薬情があれば薬の写真やマークなどを確認しながら中止すべき薬を間違えずに取り除けます。

 

このようなメリットもありますので、薬情はできるだけもらうことをおすすめします。

 

「ジェネリック品に変えれば必ず支払額が安くなる?」

 

ジェネリック品に変更しても、支払額が変わらない場合もあります。

 

例えば、先発品とジェネリック品で価格差がない場合は、ジェネリック品に変更しても支払額は変わりません。

 

また、ジェネリック品に変更することで、かえって価格が高くなる場合があります。こちらは、ジェネリック品への変更で錠数が増える場合などです。

 

例:先発品(服用量:1回1錠・1日量3錠)のものを、有効成分の含有量が半分のジェネリック品(服用量:1回2錠・1日量6錠)に変更する場合*5など

 

このような価格の逆転現象は、先発品とジェネリック品の価格の差が小さいときに起きることがあります。

ただし、「変更前の薬剤料よりも高くなる場合は、ジェネリック品に変更してはいけない」というルールがある*6ため、価格がかえって高くなる場合は薬局からジェネリック品への変更ができない旨の説明があるはずです。

 

このように、ジェネリック品に変更しても支払額が安くならない場合や、そもそもジェネリック品への変更ができないケースは多々あります。また、「薬局がジェネリック変更に対応しない」=「支払額が高くなる」という図式が成り立たない場合もあります。

 

ジェネリック品への変更を希望する場合は、どれくらい価格が変わるかをあらかじめ確認して、納得の上で変更してもらうようにしてください。

薬局での支払額を節約する方法

ここからは、薬局での支払額を節約する方法・無駄な出費をおさえる方法を紹介します。

 

薬局へ行く時間・曜日に注意する

急を要する場合でない限り、医師から処方された薬は、平日の日中か土曜日の午前中に薬局でもらうことをおすすめします。

 

あまり知られていませんが、早朝や夜間、休日などに薬局へ処方せんを持ち込み、調剤をしてもらうと、時間外加算や休日加算、深夜加算といった「割増料金」を支払うことになります。

 

時間外加算などが算定されるかどうかは、各薬局の営業時間などにより異なります。

よく利用する薬局がある場合は、あらかじめ時間外加算などが算定される時間帯などを問い合わせておくとよいでしょう。

 

以下に、時間外加算などが算定される時間帯や曜日、日にちなどを一覧にまとめます。

 

時間外加算などが算定される時間帯や曜日・日にち

注意:薬局の営業体制(24時間営業など)によっては、算定されない場合もある。
出所)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療保険>令和4年度診療報酬改定について>第3関係法令等>(2)2診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号>別添3調剤報酬点数表に関する事項」P.10-11*3を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000923500.pdf P.10-11

 

かかりつけ薬局を決める

かかりつけ薬局を決めておくと、薬の重複などの「無駄」に薬剤師が気付きやすくなります。必要であれば薬剤師が医師に連絡して、薬の変更・中止が行なわれることもあるため、医療費の削減につながります。

 

もちろん、薬の重複投与などはおくすり手帳でも確認可能です。しかしながら、かかりつけ薬局におくすり手帳を持参すると、窓口での支払額が安くなる場合もあるため(後述)、医療費の節約を目指す場合は、できるだけかかりつけ薬局を決めておくほうがよいでしょう。

 

おくすり手帳を持参する

おくすり手帳を持参して、3ヵ月以内に同じ薬局(=かかりつけ薬局)で薬をもらうと、窓口での支払額が安くなります*4

 

かつては、おくすり手帳を持参するとかえって支払額が高くなったため、おくすり手帳の作成を断固拒否する方もいますが、非常にもったいないことです。

おくすり手帳は薬を安心して使うためのツールですが、上手に活用すれば医療費の節約にも役立ちます。

 

生活習慣病などが原因で毎月のように医療機関から薬を処方してもらっている場合は、かかりつけ薬局を決めて毎回おくすり手帳を持参するようにしましょう。

 

 

 

薬剤師と協力して支払額を安くする方法

次は、薬剤師を「上手に」利用して支払額をおさえる方法を紹介します。

残薬調整の相談

薬局から受け取った薬を「残ったから」といって薬局に返却しても、返金してもらうことはできません。

 

しかし、薬剤師から医師へ連絡して、残薬に応じた日数に処方を変えてもらうことは可能です。「残薬があることを自分から医師に伝えたい」という場合は、次回の診察時に残薬の状況を伝えられるメモなどを作成することもできます。

 

「自分で残薬を数えるのが面倒くさい」

「どの薬が何日分あまっているのかよくわからない」

という場合は、残薬を薬局に持参しても大丈夫です。

 

処方変更があった場合でも、残薬がある場合は薬剤師にご相談ください。残薬の中に継続して服用する薬がある場合は、同様の対応ができることもあります。

 

残薬を医師に伝えて処方日数が少なくなれば、医療費の削減につながります。「薬があまっているな」と思ったら、捨てる前に薬局へ相談しましょう。

飲みづらい薬の変更・中止に関する相談

飲みづらい薬がある場合も、薬剤師にご相談ください。

 

実は、ジェネリック品の中には剤型に工夫が加えられているものもあり、先発品に比べて飲みやすくなっているものもあります。実際、飲みにくさの相談がきっかけでジェネリック品へ変更となり、支払額の抑制につながった例もあります。

 

また、飲みにくくて薬をまったく飲んでいない場合は、薬剤師から医師に薬の中止を提案できる場合もあります。「飲んでいない」という情報は、医師にとっても非常に有用で、薬の減量や変更につながる場合も少なくありません

薬の数が多すぎることに関する相談

75歳以上になると、約4割の方が5種類以上の薬を使っていますが、薬が6種類以上になると副作用が発生しやすくなることが報告されています*7

また、副作用が起きると、副作用をおさえるための薬が処方されて、さらに薬の種類が増えることもあります。

 

引用)一般社団法人 日本老年医学会「一般向けパンフレット「多すぎる薬と副作用」作成のお知らせ>パンフレット」P.2
https://jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20161117_01.html
https://jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20161117_01_01.pdf P.2
 

このような「薬の種類が多いこと」に関する悩みも、薬剤師にご相談ください。

 

薬の数に関する悩みを薬剤師に相談すると、薬剤師から医師に患者様の悩みが伝えられ、他の医師から処方されている薬剤や併用中のサプリメントなどを知らせるきっかけにもなります。

 

そして、薬剤師から情報を伝えられた医師は、治療の優先順位を考慮して処方内容を再検討したり、副作用が起きやすい薬の処方を中止したりするなどして、薬の量や種類を調整します。

 

結果として薬の種類が減ることになれば、支払額を減らすことにもつながるでしょう。

薬剤師をうまく使って医療費の節約につなげましょう

薬局で保険調剤に携わる薬剤師は、薬だけではなく診療報酬(医療機関に支払われる費用)にも精通しています。医療費を節約したいと思ったら、気軽に相談してみてください。

 

相談は、患者様ご本人はもちろんのこと、ご家族や介護をしている方からでも大丈夫です。日頃の薬に関する悩みが、医療費の節約のきっかけになるかもしれません。

 

薬剤師を上手に利用して、医療費の節約につなげましょう。

参考文献・参考サイト

*1

出所)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療保険>後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21060.html

 

*2

出所)健康保険組合連合会けんぽれん「研究事業>調査研究報告書>平成29年度>(2)医療・医療保険制度に関する国民意識調査【全文】」P.56図表87

https://www.kenporen.com/study/research/

https://www.kenporen.com/include/outline/pdf/chosa29_02.pdf P.56図表87

 

*3

出所)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>医療保険>令和4年度診療報酬改定について>第3関係法令等>(2)2診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号>別添3調剤報酬点数表に関する事項」P.10-11

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000923500.pdf P.10-11

 

*4

出所)日本薬剤師会「薬局関連情報>令和4年度調剤報酬改定等に関する資料>調剤報酬点数一覧(R4.10.1~)>第2節 薬学管理料 服薬管理指導料」P.2

https://www.nichiyaku.or.jp/pharmacy-info/document/r04.html

https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/2022/1001-list.pdf p.2

 

*5

出所)リクナビ薬剤師「薬剤師の業界情報・特集TOP>Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット>後発医薬品へ変更したら、かえって負担金が増えた?!」

https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/054/

 

*6

出所)sawai medical site「お役立ち情報>トピックス>後発医薬品の変更調剤」P.6

https://med.sawai.co.jp/topics/knowledge/

https://med.sawai.co.jp/topics/knowledge/pdf/knowledge_33.pdf P.6

 

*7

出所)一般社団法人 日本老年医学会「一般向けパンフレット「多すぎる薬と副作用」作成のお知らせ>パンフレット」P.2

https://jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20161117_01.html

https://jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20161117_01_01.pdf P.2

この記事を書いた人

中西真理公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

関連記事

アプリのダウンロードはこちら

App Store Google Play