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更新日:2022.11.01ヘルスケア「適度な運動」とは、どのくらい何をすること? コロナ時代に役立てたい厚生労働省の指針

在宅ワークの浸透などで、多くの人が運動不足を感じていることでしょう。

当然、健康のためには「適度な運動」が必要です。しかし実際には、どんな運動を何時間行えば適度なのか?と疑問に思う人もまた多いことでしょう。

実は、厚生労働省が様々な研究結果をもとにした「健康づくりのための身体活動基準」というものを過去に公表しています。

これをもとに、適度な運動とはどのようなものかを具体的に見ていきましょう。

「健康二次被害」予防の必要性

スポーツ庁が、コロナ流行下で人との接触を避けて外出を自粛したことによる「健康二次被害」の予防を呼びかけています。

テレワークで座っている時間が増えている人

まず、テレワークで座っている時間が増えている人の場合は、以下の点に注意が必要だとしています*1。   ・テレワークで一日中座りっぱなし ・座りすぎで腰痛、肩こりが辛い ・最近なんだか気分が落ち込みがち ・通勤しなくなった/通勤することが減った   なお、一日に11時間以上座っている人は、座っている時間が4時間未満の人と比べ死亡リスクが40%も高まるといわれています*2。   そこで、適度な運動やスポーツにより、生活習慣病の予防や肩こり・腰痛の改善、ストレス解消などをはかる必要があります。

高齢者・子どもの注意事項

また、高齢者の運動不足は深刻な「健康二次被害」につながります(図1)。   図1 高齢者の外出自粛による健康二次被害 (出所:「Withコロナ時代に高齢者の健康二次被害をスポーツや社会参加で予防するために」スポーツ庁) https://sportinlife.go.jp/img/news/20201118_1/01.pdf   

高齢者の場合、身体活動量が減ってしまうと様々な影響がすぐに出てしまいます。   そこで、スポーツ庁は高齢者の健康二次被害の防止策として、下の項目を挙げています(図2)。

図2 高齢者の健康二次被害防止策 (出所:「Withコロナ時代に高齢者の健康二次被害をスポーツや社会参加で予防するために」スポーツ庁) https://sportinlife.go.jp/img/news/20201118_1/01.pdf   

また、子どもの運動不足についてはこのようなチェックリストもあります(図3)。

図3 子どもの健康二次被害予防チェックリスト (出所:「Withコロナ時代に運動不足による健康二次被害を予防するために」スポーツ庁) https://sportinlife.go.jp/img/news/20201118_1/04.pdf   

WHO(世界保健機関)は、成人の場合は「週に150分以上の中強度の身体活動」、子どもは「毎日60分以上の中高強度の身体活動」を行うことを推奨していますが*3、「適度な運動」として、日々何を行えば良いか具体的にはわかりにくいことでしょう。   そこで、厚生労働省が公表している指針についてご紹介します。

運動量を測る目安「METs(メッツ)」

厚生労働省が2013年に、「健康づくりのための身体活動基準」というものを作成しています。それによると、生活習慣病の予防や生活機能低下のリスクを避けるために必要な運動量は、日常の活動で補う場合   ・18歳〜64歳:強度が3メッツ以上の身体活動を週に「23メッツ・時」 ・65歳以上:強度を問わず、身体活動を週に「10メッツ・時」   となっています*4。 しかしこれでは具体的に何をすれば良いのかわかりません。 そこでまず、運動の強さを表す「メッツ(METs)」とは何かを簡単に説明します。

「メッツ(METs)」とは

メッツとは、運動や身体活動の強度を示すものです。 具体的には、安静時(横になって楽にしている状態)を1とした時に比べて、何杯のエネルギーを消費するかを示しています。   例えば、3メッツの活動を1時間行うと、   3メッツ×1時間 = 3「メッツ・時」   ということになります。   これをもとに、厚生労働省が示している活動量の指針を見ていきましょう。

18歳〜64歳の運動量の目安

まず、18~64歳の基準である 「強度が3メッツ以上の身体活動を週に23メッツ・時」 についてです。

「身体活動」の基準

日常生活の主な場面では、メッツは以下のようになっています*5。   ・普通歩行:3メッツ ・犬の散歩:3メッツ ・そうじをする:3.3メッツ ・自転車に乗る:3.5~6.8メッツ ・速歩きをする:4.3~5.0メッツ ・子どもと活発に遊ぶ:5.8メッツ ・農作業をする:7.8メッツ ・階段を速く上る:8.8メッツ   例えば「普通歩行」の場合、1時間で「3メッツ・時」です。1週間毎日1時間歩くと「3メッツ・時×7日」で、週に「21メッツ・時」の活動量となります。

「運動量」の基準

そして運動量の基準として、18~64歳の場合は、   「強度が3メッツ以上の運動を毎週4メッツ・時行う」というものです*6。   おもな運動のメッツは下のようになっています*7。   ・ボウリング、社交ダンス:3.0 メッツ ・自体重を使った軽い筋力トレーニング:3.5 メッツ ・ゴルフ:3.5~4.3 メッツ ・ラジオ体操第一:4.0 メッツ ・卓球:4.0 メッツ ・ウォーキング:4.3 メッツ ・野球:5.0 メッツ ・ゆっくりとした平泳ぎ:5.3 メッツ   ウォーキングであれば週に1時間は心がけたいところです。

65歳以上の活動基準

次に、65歳以上では、   「強度を問わず、身体活動を週に10メッツ・時」   となっています。   先ほどご紹介したように、「通常歩行」が3メッツです。散歩で活動量を達成するならば週に3時間以上プラスアルファ程度が必要、ということになります。しかし65歳以上の場合は、3メッツを超える活動をしなければならないわけではありません。 それよりもメッツが低い活動であっても、トータルで週に10メッツこなすことが目標です。 具体的には横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行う、ともされています*9。   なお、どのような活動や運動が何メッツにあたるかについては、国立健康・栄養研究所がとても詳しい表を示しています*8。 これをもとに、趣味に合う活動をうまく取り入れると良いでしょう。ボランティア活動も、体を動かす良い機会です。

無理なく「プラス10」を目指そう

また、厚生労働省は全世代に共通する考え方として、「プラス10」を推奨しています*10。

「より10分多くからだを動かす」ことで健康寿命を伸ばせるというものです。

 

ただ、重要なのは、「無理をしない」ということです。

もともとスポーツなどで体を動かすことが好きな人もいれば、そうでない人もいます。

運動が苦手な人が無理をしていきなりスポーツに挑戦しても、長続きしない場合のほうが多いことでしょう。

 

よって、人それぞれの生活の中で自然に取り入れられる身体活動を「もう少しだけ長めにやってみようかな」という軽い気持ちで続けていくことが大切です。

 

そのためにもメッツ表は参考になります。「これなら少し増やせそうだな」という気楽なところから始めてみるのが、健康維持への第一歩なのです。

 

 

*1、2

「Withコロナ時代に運動不足による健康二次被害を予防するために」スポーツ庁
https://sportinlife.go.jp/img/news/20201118_1/02.pdf 

 

*3

「Withコロナ時代に運動不足による健康二次被害を予防するために」スポーツ庁
https://sportinlife.go.jp/img/news/20201118_1/02.pdf 

https://sportinlife.go.jp/img/news/20201118_1/04.pdf  

 

*4、9

「健康づくりのための身体活動基準2013」厚生労働省e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-01-001.html 

 

*5、*6、*7

「運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書」厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf p6-8

 

*8

「改訂版『身体活動のメッツ(MTEs)表』」国立健康・栄養研究所

https://www.nibiohn.go.jp/eiken/programs/2011mets.pdf 

 

*10

「いつでもどこでも+10」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpr1.pdf

この記事を書いた人

清水沙矢香2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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