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更新日:2022.12.29ヘルスケア骨粗鬆症を予防し健康寿命を伸ばそう!原因や対策について医師が解説

高齢化が進む日本では、健康寿命をいかに伸ばすかということが課題となっています。
骨粗鬆症は、骨がもろくなり、骨折しやすくなる状態のことで、寝たきりの原因にもなっています。
そこで今回は、骨粗鬆症の予防や対策、検査方法について解説します。
ぜひ参考にしてみてくださいね。

健康寿命とは?骨粗鬆症とは?

健康寿命とは

健康寿命という言葉をご存じでしょうか。

「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をさすものです。*1   

日本では高齢化が進んでおり、平均寿命も年々伸びていますが、健康寿命とは毎年差があり、

男性約9年、女性約12年となっています。

 

引用)*2 厚生労働省 健康寿命の令和元年値について 3枚目スライド
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf

 

 

健康寿命を延ばすためには、いかに健康な状態を保つかがポイントになります。

 

厚生労働省の2019年のデータによると、「介護が必要になった主な原因」のうち、第3位に「骨折・転倒を含む高齢による衰弱」が入っています。*3  

 

高齢者の骨折の背景には、骨量(こつりょう)の低下、つまり骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や、筋力・バランス機能の低下などによって転倒しやすくなっていることがあります。*4 

 

それゆえ、骨粗鬆症を防ぐことは、健康に生活できる期間を延ばすために重要だといえるでしょう。

 

骨粗鬆症とはどういう病気か

骨粗鬆症は、骨の代謝バランスが崩れ、もろくなった状態のことをいいます。*5

骨は、体の中の他の細胞と同様に、私たちが生きている間ずっと、

新しい骨に生まれ変わるための新陳代謝をくり返しています。

 

 

引用)*5 骨粗鬆症 Minds版やさしい解説 | Mindsガイドラインライブラリ
https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0046/G0000544/0004

 

 

骨芽細胞(こつがさいぼう)によって新しい骨が作られることを「骨形成(こつけいせい)」、

破骨細胞(はこつさいぼう)によって古くなった骨のカルシウムやコラーゲンが分解・吸収されることを

「骨吸収(こつきゅうしゅう)」といいます。*5

 

 

このバランスが崩れて、骨吸収が上回った状態が続くと骨がもろくなり、

簡単に骨折するような状態になるのが、骨粗鬆症です。*6  

 

女性に多いの?男性にはないの?

 

骨の量は男女とも20歳ごろに最大となり、40歳半ばまでほぼ一定です。

その後、緩やかに減少しますが、男性では70歳以降、女性では閉経前後の数年間に急速に減少します。*7

 

引用)*7 骨の健康、考えてますか? 3枚目
https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/honekenko_2017.pdf

 

女性の骨の量が減ってしまう原因は、閉経後、骨芽細胞を活発にする女性ホルモンである「エストロゲン」が激減するためです。

 

このため、骨粗鬆症は、一般に50代以降の高齢女性の発症リスクが高くなっています。*6  

 

このように、高齢の女性に多い骨粗鬆症ですが、男性であっても油断はできません。

男性は体が女性よりも大きいので、最大骨量も大きくなります。  

また、女性のように急激なホルモン減少もありません。

 

しかし、加齢とともに、当然男性であっても骨の量は低下し、骨粗鬆症のリスクは高まります。*8  

また、男性の場合は病気や薬、栄養障害などで起こることが特徴となっています。*9

 

引用)*9 男性の骨粗鬆症【健康ぷらざNo.503】
https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/503.pdf

 

男性でも、骨粗鬆症の予防は大切であると考えられます。

 

骨粗鬆症の予防方法

骨粗鬆症を防ぐにはどのようなことが効果的でしょうか。   骨粗鬆症の危険因子には、女性であること以外にも、以下のようなものがあります。*10  

引用)*10 骨粗鬆症の予防のための食生活 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-007.html

 

加齢や性別のように避けられない危険因子もありますが、カルシウムやビタミンD・Kなどの不足といった、避けられる危険因子もあります。  

 

骨粗鬆症の予防にとって大切なことは、 獲得する最大骨量、

つまり人生で一番骨の量が多くなる時に、 その量をできるだけ大きくすることと、

骨量減少を最小限にすることです。  

 

そして、除去可能な危険因子を早期に取り除くことです。*10  

 

若いうちからの対策としては、栄養素ではカルシウム摂取 身体活動では負荷のかかる運動が重要であるとされています。*11  

 

中高年者でも、カルシウムやビタミンDの十分な摂取は重要とされています。  

 

た、身体活動では、歩行運動がリスクも低く、 大腿骨頚部の骨密度を上昇させることが期待できるとされています。*12  

 

そこで、以下に、カルシウム摂取のポイントと、効果的な運動について解説していきます。

 

カルシウム摂取

成人1人当たりが1日にとるカルシウムの目標量は600〜800mgとされています。

また、若いうちの成長期の子どもでは、700〜1000mgが目標です。

カルシウムが多く取れる食品は、以下のようになっています。*13  

 

引用)*13 大切な栄養素カルシウム:農林水産省 カルシウムを効率よく摂取しましょう
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_05.html
 

このような図も参考にして、しっかりとカルシウムをとるようにしましょう。

効果的な運動

 

歩行や太極拳などの軽い動的荷重運動は腰椎の骨密度を、

ジョギング・ダンス・ジャンプなどの強い動的荷重運動は大腿骨の骨密度を上昇させ、

さらに、両者の組み合わせでは両部位の骨密度が上昇したという研究があります。*12  

 

また、運動には骨を丈夫にするだけでなく、

姿勢が悪いために起こる慢性的な腰痛改善や背部痛の改善、

転びやすさの改善に対する効果もあります。*14  

 

骨粗鬆症財団によると、以下のような体操が勧められています。  

 

引用)*14 公益財団法人 骨粗鬆症財団 骨粗鬆症予防・改善体操 1枚目
https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/leaf_03_181003.pdf
 

一人ひとり体力や基礎疾患も異なりますので、

可能な範囲で、歩くことや軽い運動を組み合わせていくことが大切だと考えます。

日光に当たる

 

ビタミンDはカルシウムの吸収をよくするために、骨を作る上で欠かせない成分です。

 

食事からだけでなく、日光浴により皮膚でも作られます。

 

夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度、日光に当たると良いでしょう。*15

 

骨密度の検査は検診で受けられる?

 

現在国が行っている公的な検診には、40、50、55、60、65、70歳の女性を対象にした節目検診があります。*16

 

自治体によっては、それ以下の年齢の人に対しても検診を行っている場合もあります。

 

住んでいる地域の広報誌などに情報が掲載されていますので、参考にしてみて下さい。  

 

公的な検診の他、人間ドックなどでもオプションで骨密度測定を追加することもできる場合もあるため、

40代以降の女性の方はもちろん、20代の方でも、

若い時の値を知っておくためにも一度受けてみるとよいでしょう。

 

まとめ

 

今回は、骨粗鬆症とはどのようなものか、また予防や対策、検査について解説しました。

 

粗鬆症になった状態を放置しておくと、骨折の原因となり、生活の質が下がってしまいます。

 

若いうちから対策をとることは大切ですが、中高年になっても、遅すぎることはありません。

 

栄養や運動に気をつけて、健康寿命を伸ばしていきましょう。

参考文献

*1 平均寿命と健康寿命 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-002.html

 

*2 厚生労働省 健康寿命の令和元年値について 3枚目スライド

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf

 

*3 厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況 p24

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/05.pdf

 

*4 公益財団法人 長寿科学振興財団 骨折  健康長寿ネット 高齢者の骨折の原因

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/kossetsu.html

 

*5 骨粗鬆症 Minds版やさしい解説 | Mindsガイドラインライブラリ

https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0046/G0000544/0004

 

*6 骨粗鬆症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-043.html

 

*7 骨の健康、考えてますか? 3枚目

https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/honekenko_2017.pdf

 

*8 基礎老化研究 34(3);13-17,2010【総説】男性骨粗鬆症 p13

https://www.jsbmg.jp/backnumber/pdf/BG34-3/34-3_13-17.pdf

 

*9 男性の骨粗鬆症【健康ぷらざNo.503】

https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/503.pdf

 

*10 骨粗鬆症の予防のための食生活 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-007.html

 

*11 骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版 p44

http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

 

*12 骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版 p46

http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

 

*13 大切な栄養素カルシウム:農林水産省 カルシウムを効率よく摂取しましょう

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_05.html

 

*14 公益財団法人 骨粗鬆症財団 骨粗鬆症予防・改善体操 1枚目

https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/leaf_03_181003.pdf

 

*15 公益財団法人 骨粗鬆症財団 日光浴はどのくらい必要? 

https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/case/sunbathing.html 

 

*16 厚生労働省 健康増進事業実施要領 p18 

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/14.pdf 

この記事を書いた人

nishicherry2480行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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