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更新日:2023.01.30ヘルスケア帯状疱疹はうつる?初期症状は?原因や対策を含め医師が解説

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気で、体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状に生じる病気です。
加齢、疲労、ストレスなどによる免疫力の低下が発症の原因となり、50歳代から発症率が高くなります。
新型コロナの関連や若い人でも発症する可能性もあり、注意すべき病気です。

今回はこの帯状疱疹について、実際に筆者の身近な人の例も交えて解説します。

帯状疱疹とは?

まずは、帯状疱疹とはどのようなものかについて解説します。

 

(1)帯状疱疹とは

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。

体の左右どちらかの神経が支配する皮膚の領域に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯のように生じます。*1

 

引用)*2 公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ヘルペスと帯状疱疹 Q11 帯状疱疹とは何ですか?

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa5/q11.html

 

水疱が見られる2〜3日前から痒みや痛みを感じるようになり、1週間程度たつと水ぶくれを伴う皮疹の多発や発熱、頭痛といった症状がみられることもあります。

そして、通常は2〜4週間で皮膚症状はおさまります。*1

 

 

(2)帯状疱疹の原因は?

水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスの初感染では、水ぼうそうになります。

この時に、ウイルスが、主に皮膚に出た発疹から神経を伝って、所属の脊髄後根神経節(せきずいこうこんしんけいせつ)と呼ばれる、神経が集まった、こぶのような場所〇〇にウイルスが潜みます。

神経節の中に潜んでいるウイルスが何らかの誘因で再活性化して発症することが、帯状疱疹の原因です。*2

 

引用)*3 武田薬品工業株式会社 50歳から気をつけたい帯状疱疹

https://www.takeda.co.jp/patients/disease/taijouhoushin/about.html

 

帯状疱疹の誘引となるものとしては、宿主の加齢、免疫低下などがあります。*4

また、85歳の人の約半数が帯状疱疹を経験していると報告されており、80歳までに3人に1人が帯状疱疹を経験すると推定されています。*5

 

 

 

(3)帯状疱疹になりやすい年齢は?

帯状疱疹について、日本では宮崎スタディという、世界で最大規模の疫学研究が行われています。*6 

下の図は、その宮崎スタディでの、帯状疱疹の性別・年代別発症率です。

引用)*7 NIID 国立感染症研究所 宮崎県の帯状疱疹の疫学(宮崎スタディ) 図1.年齢群別宮崎県の人口、帯状疱疹患者数と発症率(1997年から2011年の平均)を筆者加工し抜粋

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2256-related-articles/related-articles-404/4014-dj4048.html

 

図からわかるように、50代以上の年齢で、帯状疱疹の発症率が高くなっています。

(4)新型コロナウイルス感染症との関係もある?

米国の調査で、 50歳以上で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人は、診断されなかった人と比較して、帯状疱疹の発症リスクが高い可能性があることが示唆された報告もあります。*8

まだ十分にわかっていないことも多いのですが、新型コロナウイルス感染症と、帯状疱疹には何らかの関係があるようです。

合併症や後遺症は?若い人なら大丈夫?人に感染するの?

ここでは帯状疱疹の合併症や後遺症などについて解説します。

(1)合併症や後遺症は?

帯状疱疹の合併症として、帯状疱疹後神経痛がよく知られています。

これは、数か月または数年続くこともある慢性的な痛みのことです。

帯状疱疹になったあとに、この神経痛になる確率は10%から18%といわれています。*9 

 

その他の合併症も、帯状疱疹の現れた部位によってさまざまです。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、神経の流れに沿って障がいをおよぼします。

目や耳などの神経を傷つけると、視力の低下や難聴などを引き起こす恐れがあります。*10

ですので、目や耳の近くに帯状疱疹の病変が出た場合は要注意です。

 

(2)若い人なら大丈夫とは言えない

若い人であっても、過労やそれに伴うストレス、体調管理不足、不摂生などで免疫が低下し、帯状疱疹が発症してしまうこともあります。

実際に筆者の夫は、30代後半のもともと健康な男性ですが、帯状疱疹と診断されました。

経緯は以下のとおりです。

 

昨年夏、筆者は手足口病にかかり、高熱が出て寝込んでいました。

その際、筆者の夫は家事や育児などを一人でやらなくてはならなくなりました。

いつもよりストレスを抱えた状態で、体力的にも精神的にもかなり疲れがたまっていたようです。

そうこうしていたら、夫も発熱し、なんとなく違和感を覚えた太もものあたりに皮疹が出現していました。

熱が出てから2日目くらいに内科を受診すると「帯状疱疹」と診断されました。

 

帯状疱疹は、高齢者や免疫が落ちるような病気を持った人に起こるものと思っていたので、

恥ずかしながら医師である筆者も予想外でした。

 

(3)周りに感染させるの?

水痘と帯状疱疹は同じウイルスが原因です。

帯状疱疹患者の水ぶくれのような皮疹には水痘・帯状疱疹ウイルスが含まれており、水ぼうそうワクチン未接種者などの免疫を持たない人が接触すると、感染して水ぼうそうを発症することがあります。

 

しかし、全ての水疱が痂皮化すれば、周囲への感染力は無くなります。*11

仮に帯状疱疹の患者から水ぼうそうウイルスが感染しても、帯状疱疹になることはありません。

帯状疱疹の治療法や予防法は?ワクチンはあるの?

ここでは帯状疱疹の治療や予防、ワクチンについて解説します。

(1)帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療は、ヘルペスに対する薬が用いられます。*12

この薬はより早期に使用すると高い効果が期待できます。

また、重症例では入院して点滴治療を行います。

水ぶくれが破れた際は、化膿防止のため塗り薬を併用します。*11

治療は早く始めた方が効果が高いので、痒みを伴う皮疹が集まってできた際には、帯状疱疹も疑い、早めに皮膚科へいくとよいでしょう。

(2)帯状疱疹の予防にはワクチンが有効

先述のように、50歳以上では帯状疱疹のリスクが高くなります。*7

帯状疱疹ワクチンを打つことによって、帯状疱疹の重症化を防ぎ、帯状疱疹後神経痛の発生率を下げる効果が期待できます。*13

 

日本では、もともと水ぼうそう予防目的で使われていた生ワクチンを、2016年3月より、50歳以上の人に対して帯状疱疹予防目的で使用できるようになりました。

さらに、2018年3月からは、帯状疱疹に特化した、乾燥組み換え帯状疱疹ワクチンが使用可能になりました。*11

2種類のワクチンは、接種方法や回数、打っては行けない人や値段などが異なります。*14

 

引用)*14 高齢者に勧められるワクチンは | 2020年 | 記事一覧 | 医学界新聞 https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2020/PA03369_06

 

帯状疱疹ワクチンは、2022年8月の時点では、定期接種を検討されているワクチンの一つではありますが、現時点では任意接種となっています。*15

自治体によっては、助成制度を設けている場合もありますが、基本的には自費での接種となります。

帯状疱疹ワクチンを希望する際には、医師と十分に話し合った上で、自身にあったワクチンを選択するのがよいでしょう。

 

加えて、日頃から免疫力が低下しないように体調管理をしておくことも大切です。*11

 

 

まとめ

今回は、帯状疱疹について、原因や後遺症、合併症などについて解説しました。

帯状疱疹の予防のためには、ワクチンも有効ですが、接種対象の年齢でない人でも帯状疱疹になってしまう可能性はあります。

帯状疱疹の予防のために、日頃から十分な休息をとりながら免疫力の維持を心がけ、免疫力を低下させる疲労やストレスのない規則正しい生活を送ることが大切だと考えます。

そして、50歳以上の場合はワクチンの接種も検討するとよいでしょう。

参考文献・参考サイト

*1 東京都福祉保健局 帯状疱疹に気をつけましょう

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/taijouhoushin.html

 

*2 公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A ヘルペスと帯状疱疹 Q11 帯状疱疹とは何ですか?

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa5/q11.html

 

*3 武田薬品工業株式会社 50歳から気をつけたい帯状疱疹

https://www.takeda.co.jp/patients/disease/taijouhoushin/about.html

 

*4 NIID国立感染研究所 水痘帯状疱疹ウイルス疾患の病理

https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2256-related-articles/related-articles-404/4017-dj404b.html

 

*5 帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成 29 (2017)年 2月10日 国立感染症研究所 p1

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184909.pdf

 

*6 NIID 国立感染症研究所 帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」アップデート 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8235-462r07.html

 

*7 NIID 国立感染症研究所 宮崎県の帯状疱疹の疫学(宮崎スタディ) 図1.年齢群別宮崎県の人口、帯状疱疹患者数と発症率(1997年から2011年の平均) 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2256-related-articles/related-articles-404/4014-dj4048.html

 

*8 Bhavsar A. et al.: Open Forum Infectious Disease. 9(5), 2022

https://academic.oup.com/ofid/article/9/5/ofac118/6545460

 

*9 Prevention of herpes zoster: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18528318/

 

*10 帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成 29 (2017)年 2月10日 国立感染症研究所 p8

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184909.pdf

 

*11 東京都感染症情報センター » 帯状疱疹 Shingles(Herpes Zoster) https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/herpes_zoster/

 

*12 NIID 国立感染症研究所 抗ヘルペスウイルス薬による水痘・帯状疱疹の治療https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8238-462r10.html

 

*13 帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成 29 (2017)年 2月10日 国立感染症研究所 p3

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184909.pdf

 

*14 高齢者に勧められるワクチンは | 2020年 | 記事一覧 | 医学界新聞 https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2020/PA03369_06

 

*15 定期接種化を検討中のワクチンの 検討について p2 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000972790.pdf

 

この記事を書いた人

nishicherry2480行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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