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更新日:2022.11.23ヘルスケア通勤電車で猛烈な腹痛(便意)を催した時の対処法4選 片道2時間通勤している理学療法士が解説

日本において、通勤電車で突如襲いくる猛烈な便意を経験したことのない人はいるのでしょうか。
家を出る直前までトイレに座っていたのに、その時はなかなか出ない。
電車にのり、一駅目で「おや」と思い、2駅、3駅と進むごとに恐怖の足音は近づいてくる。
ピークを越したかと思い油断していると更に大きな波が押し寄せてくる。
考えただけでトイレに行きたくなるこの現象を経験しているのは筆者だけではないと思います。

今回は、排便のメカニズムに基づいて述べた上で、通勤電車で催した際の対処法をご紹介します。
この記事が、あなたの快適な通勤ライフに寄与することが出来たら幸いです。

排便のメカニズム

排便は次のようなSTEPで行われます1)

➀便が大腸の終点である直腸まで移動します。

➁直腸肛門反射

直腸内圧(便が直腸を内側から押す力)が40~50mmHg以上になると、

刺激が排便中枢に伝わり、脳に伝達され便意を感じます。

便より上の直腸が収縮し、便より下が緩むことで便が肛門へと送られます。

この際に、副交感神経が刺激され、反射的に直腸筋が収縮して内肛門括約筋が弛緩します。

➂便保持と便意の調整

脳で瞬時に排便可能な状況にあるかどうか判断し、

状態が整ってなければ、外肛門括約筋を収縮させて肛門を閉じることで便を保持します。

外肛門括約筋は自分の意志で収縮させることができ、排便を止めることができます。

➃排便動作を行うことで、腹圧と直腸内圧の上昇、直腸筋の収縮、横隔膜の押し上げなどの運動が協調して起こり、便が肛門から排泄されます。 (図1)

図1:排便のメカニズム

(出所:看護roo.便の成分・排便のメカニズム)

https://www.kango-roo.com/learning/3099/ 

 

ここで重要なのは

➀副交感神経の働きで、内肛門括約筋が反射的に(自動で)緩むこと

➁外肛門括約筋は随意的に(自分の意志で)閉じることができること

の2点です。

 

この2点を踏まえて対策を考えていきましょう。

 

通勤時の急な腹痛(便意)への対処法

通勤時などに急な腹痛(便意)が生じるのは、

朝食や朝に飲んだ飲み物が直腸に到達して、副交感神経が刺激されることが主な要因です。

 

自分の意志で外肛門括約筋を閉めておくのも抵抗手段ですが、ご存知の通り、肛門を占めて抗うのは容易ではありません。

 

そのため、副交感神経をいかに鎮められるかが重要です。

対処法1お腹を温める

最もスタンダードですが、筆者自身もまずは温めることから始めます。

副交感神経は血管を拡張させて血流を増やす働きがあります。

お腹を温めることで大腸全体の血流が改善し、副交感神経が役割を果たしたと錯覚して、

働きが穏やかになることが期待されます。

 

手をあてるだけでも少し穏やかになります。

カイロがあれば、時々をあてる場所を変えながらお腹全体を温めると良いでしょう。

対処法2楽しいことを考える

便意を意識することでなおさら行きたくなる(排便反射が促進される)経験は皆さんもあるのではないでしょうか。

排便から意識をそらし、過剰な副交感神経の働きを落ち着かせることがねらいです。

 

一方で意識をそらそうとすると、無事にトイレに座れている姿など想像してしまい、

反対に猛烈に行きたくなってしまうので注意しましょう。

 

週末の予定を考える、好きな動画を見る、ゲームに集中するなど、

集中できる内容でワクワクできるものがお勧めです。

 

仕事のことを考えるのも良いかと思いますが、筆者は夕方の会議のことを考えることで、余計にお腹が痛くなったことがあるのでご注意ください。

対処法3ツボを押す

便意をしずめるのにとっておきのツボがあります。

その名も「下痢点(げりてん)」。

 

下痢点の場所は、手の甲側の中心部分。中指と薬指の骨が合流しているところのくぼみです。反対の手の親指を立ててギュッと押しましょう。 (図2)

図2:下痢点の位置と押し方

 

下痢点を押すことによる効果としては、交感神経を活発にしてくれること。

逆に副交感神経の働きを落ち着かせるので、猛烈な便意を穏やかにする効果が期待できます。

対処法4座るか壁にもたれかかる

今更ながら、肛門の手前の大腸の名前を直腸といいます。

直腸にかかる圧を直腸内圧と呼び、この直腸内圧が高いほど排便が為されやすくなります。

 

直腸内圧は姿勢によってことなり、しゃがむ・座るなど、股間説や腰が曲がっている方が低いと報告されています2)

 

また、直腸の向き(地面に対する角度)も排便のされやすさに影響します。

これは反対にしゃがんだ姿勢でもっとも排便を促します2)

その他にも Thinker position (考える人の姿勢)と呼ばれる、座って前傾になる姿勢も排便を誘導しやすいです3)

 

電車内でしゃがむことはないと思いますが、座って前傾になることは直腸内圧は下げるけど、直腸の向きがまっすぐになってしまいます。

 

これはあくまで筆者の経験ですが

➀電車の端に座れた場合は横にもたれかかる

➁真ん中の場合はお尻を少し前に出してうしろにもたれる

➂立っている場合はつり革を持って寝てるふりをしながら少し前かがみ

という姿勢が楽なように思います。

またほんとにギリギリな時は、肛門が開かないように、足をクロスしてピンとなり、門を閉ざすことに集中しています。

繰り返す下痢は疾患にも注意

ここまで、通勤電車で急な腹痛に見舞われた場合の対処法についてお伝えしてきました。

時々なる分には問題ないことが多いですが、腹痛や下痢を繰り返す場合は注意が必要です。

 

下痢を繰り返す症状を認める疾患の例として、安倍晋三元首相や陸上の桐生祥秀

なども罹患した、潰瘍性大腸炎4)があります。

 

潰瘍性大腸炎とは

  • 大腸及び小腸の粘膜に慢性の 炎症 または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患である、炎症性 腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)のうち、大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。

  • 特徴的な症状としては、血便を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。4)

  • 発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。4)

  • 治療は原則的に薬による内科的治療が行われます。しかし、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。4)

 

下痢や腹痛を症状とする疾患は他にも様々あるため、

1日に何度も腹痛を生じる場合や、連日、下痢を繰り返す場合は早めに近くの内科やかかりつけ医を受診しましょう。

まとめ

通勤電車で猛烈な便意に襲われた時の対処法について、

排便のメカニズムを踏まえてご紹介してきました。

 

シンプルですがお腹を温めるだけでも副交感神経の働きが穏やかになるので、

激しくさするというよりは、じっと手をあてる感じでやってみて下さい。

 

また、「意識」の影響もあなどれず、本記事の執筆中にも何度もトイレに行くことになりました。そのたびにツボ「下痢点」を押して、どのような姿勢が楽なのか試すことができました。

 

今回は便意への対処法ですが、そもそも便意が生じないようにする予防策や排便コントロールを最適化する方法なども今後掲載予定ですのでお楽しみに。

 

便意を支配して、有意義な通勤ライフを送りましょう。

参考文献

1)須藤紀子. 高齢者の排尿・排便障害. 日本老年医学会雑誌, 2012, 49.5: 582-585.

  https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/49/5/49_582/_pdf/-char/ja

 

2)SAKAKIBARA, Ryuji, et al. Influence of body position on defecation in humans. LUTS: Lower Urinary Tract Symptoms, 2010, 2.1: 16-21.

 

3)TAKANO, S.; SANDS, D. R. Influence of body posture on defecation: a prospective study of “The Thinker” position. Techniques in coloproctology, 2016, 20.2: 117-121.

 

4)潰瘍性大腸炎 概要・診断基準等(厚生労働省作成)

  https://www.nanbyou.or.jp/entry/218

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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