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更新日:2022.12.15ヘルスケア若い女性の行き過ぎた「痩せ」は危険! 隠れ肥満のリスクについて医師が解説

「モデルの〇〇ちゃんみたいにやせたい」
「カロリーを減らせば、何を食べていても、やせられるよね」

こうした考えを持つ方は、多いと思います。
しかし偏った食事制限によって痩せることができても、結果として隠れ肥満などの病気につながってしまうリスクがあることをご存知でしょうか。

今回は、若い女性のやせに潜むリスクや、その対策について、解説します。
ぜひ参考にして、健康的なダイエットの参考にして下さい。

「やせている」とはどういう状態?何が問題なの?

まずは、「やせている」とは何か、その定義などについて説明します。

1.「やせている」とは

やせている状態とは、肥満度を表す目安として国際的に使われている、BMI(Body Mass Index)という体格指数を用いて判断します。

 

なお、BMIは、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で計算されます。

 

日本肥満学会の定めた基準では、18.5未満が「低体重」つまり「やせ」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされています。*1

 

近年、日本では若い女性の「やせ」の増加が問題となっています。

 

2000年、政府は国民健康づくり対策「健康日本21」を開始しました。*2

そして、2013年に始まった「健康日本21」(第2次)では、20歳代女性の「やせの者」の割合を10年間で20%以下にすることを目標とします。3

 

しかしながら、厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査結果」では、20歳代女性の20.7%が「やせ」であり、未だ目標は十分に達成されたとはいえません。*4

現状では、20歳代女性のうち、約5人に1人が「やせ」の状態ということになります。

*4 引用)厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要

URL https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf  p19

 

健康上問題のない「やせ」もありますが、無理なダイエットによる食事制限は、さまざまな健康障害を引き起こします。

 

2.若い女性の「やせ」に潜むリスク

ここからは、若い女性が無理なダイエットをしてやせることで起こりうる問題について、解説します。

 

(1)隠れ肥満

若い女性のやせには、BMIが「ふつう」以下であっても、体脂肪率が30%以上という高い値を示す「隠れ肥満」という問題が報告されています。*5

 

隠れ肥満の原因ははっきりとは解明されていませんが、幼少時からの運動量が少なかったことや、肉類、卵類をよく食べる、といったことも報告されています。*6

 

(2)糖尿病のリスクが高まる

順天堂大学の研究グループは、日本人の体格指数(BMI)が18.5未満のやせた若年女性で、食後に高血糖となる「耐糖能異常」、つまり「糖尿病予備軍」が多いことを報告しました。*7

 

その研究では、日本人のやせた若年女性は、標準体重の女性に比べて、糖尿病予備軍の割合が約7倍高いことも分かりました。

また、痩せた若年女性の多くは、食事量が少なく、運動量も少ないという、「エネルギー低回転タイプ」になっており、体の筋肉量も減っていたということも報告されています。

 

3.その他、栄養不足による健康障害

その他、適切な食事をしないことによる、食物繊維不足による便秘、カルシウムやビタミンD不足による骨粗鬆症、鉄分不足による貧血、月経異常などが起こる可能性があります。*8

3.その他、栄養不足による健康障害

その他、適切な食事をしないことによる、食物繊維不足による便秘、カルシウムやビタミンD不足による骨粗鬆症、鉄分不足による貧血、月経異常などが起こる可能性があります。*8

若い女性の「やせ」による健康障害を防ぐには?

先に述べた、やせた若年女性が「糖尿病予備軍」になることへの対策として、研究者らは、「十分な栄養と運動により筋肉量を増やすような生活習慣の改善が重要と考えられる」と述べています。*7

また隠れ肥満を予防する食生活として、食物繊維を多く含む食品をとることが勧められるでしょう。*5

 

こうした事実のもと、若い女性のやせによる健康障害を予防・改善するためにはどうすればいいのか、具体的な方法を見ていきましょう。

1.バランスの良い食事を心がける

まず、カロリーだけでなく、栄養バランスのよい食事をとるようにすることが大切です。

とはいえ、なかなかどのようにすればよいか、わかりづらいかと思います。

そこで、厚生労働省が提唱している「食事バランスガイド」を一例としてお示しします。*9

*9 引用)厚生労働省 「食事バランスガイド」について

URL https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html

 

これは、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストで示したものです。

 

「何を」に当たる「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つの料理区分を。

「どれだけ」食べたらよいかは「ひとつ」「ふたつ」を意味する「つ(SV)」という単位で示されています。

「どれだけ」の目安は、その人の性別や年齢、そしてどれくらい活動するか、によって異なります。

 

上記の図に示されているのは、10〜69歳の女性で、活動量が普通、つまり「座り仕事が中心ですが、歩行や軽いスポーツを5時間くらいは行う」というレベルの場合です。

もし、1日中座っていることがほとんどという場合は、「主食」が4〜5に、「主菜」が3〜4と、少しずつ減ることになります。

 

2.運動をする

次は、運動をすることです。

しかし、こちらも、運動習慣が特にない人には何から始めれば良いか、わかりづらいかもしれません。

運動については、厚生労働省は以下のようなものを目標としています。*10

 

・日頃から「散歩」「早く歩く」「乗り物やエレベータを使わずに歩くようにする」など意識的に身体を動かしましょう

・1日平均1万歩以上歩くことを目標に

・週2回以上、1回30分以上の息が少しはずむ程度の運動を習慣に

・最初の運動としてはまずウォーキングから

 

例えば、上記の中から自分が取り組みやすいものを始めてみるのもおすすめです。

 

また、スポーツ庁は、仕事や子育てが忙しく、なかなか運動に時間を割くことができないという女性を対象にした、「Myスポーツプログラム」という運動プログラムを提案しています。*11

このプログラムは、今の生活の中に、”ちょっとした”運動を取り入れる、というものです。

 

例えば、仕事のスキマ時間にできる、「背中のストレッチ(わしのポーズ)」をご紹介します。

*12 引用)平成30年度女性スポーツ推進事業(女性のスポーツ参加促進事業)Myスポーツプログラム(例) p.1

URL https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/a_menu/sports/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/23/1416018_023_1.pdf

 

やり方は以下のとおりです。

 

1.座った姿勢で足を肩幅に開きつま先を広げる。

2.左手を右の肩に置く(指先が肩甲骨に届く位置)。

3.右腕を左肘の下を通して肩から手を離し、顔の前で手の甲を合わせるように腕を絡める。

4.上体を前に倒し、肘を体から離すようにして肩甲骨を広げ、背中の筋肉を伸ばす。このポーズを30秒キープ。反対も同様に行う。

 

ポイントは、できるだけ背中を丸め、手首が肘よりも下がるようにすることです。

1日に2〜3回行うと効果的です。*13

 

この運動は一例になりますが、このような、スキマ時間にできる運動を生活に取り入れていけると良いですね。

3.健康診断の結果を生かす

健康診断を受ける機会があり、貧血や血糖値、脂質、また骨密度の項目などで「要注意」や「要精密検査」という結果となっても、生活習慣の改善をしていなかったり、その後の再検査を受けていないといった人はいるのではないでしょうか。

 

これはもったいないことです。

将来の糖尿病や骨粗鬆症などのリスクを減らすためにも、健康診断の結果をみて、食生活を改善したり、運動習慣を取り入れたりする、といったふうに、ぜひ活かしていくと良いでしょう。

まとめ

若い女性の「やせ」の原因やリスクについて述べました。

そして、その対策についても解説しました。

見た目の細さだけにこだわることなく、バランスの良い食事をとり、運動も普段の生活に取り入れながら行っていきましょう。

そして、せっかく受けた健康診断の結果も、その後の生活に活かしていけると良いですね。

 

元気で健康に長生きできるよう、若いうちから健康的な体作りをしていきましょう。

 

参考文献

*1 厚生労働省 e-ヘルスネット BMI

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html

 

*2 厚生労働省 厚生省発健医第115号 21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の推進について

https://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/tsuuchibun/115.html

 

*3 厚生労働省 健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf p96

 

*4 厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf  p19

 

*5 J-STAGE 研究論文 女子大学生の隠れ肥満の出現実態と栄養摂取・食物摂取頻度状況 人間科学 2022年4巻 p33-40

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hsksu/4/0/4_4.0_33/_html/-char/ja

 

*6 J-STAGE 研究論文 女子大学生の「隠れ肥満」の実態調査とその背景因子の分析 人間科学 2013年23巻 p147-151

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2013/23/2013_147/_article/-char/ja/

 

*7 順天堂NEWS Juntendo News 2021.02.16 (TUE) プレスリリース大学・大学院

食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに~痩せていても肥満者と同様の体質 ~

https://www.juntendo.ac.jp/news/20210216-01.html

 

*8 厚生労働省 e-ヘルスネット ダイエット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-090.html

 

*9 厚生労働省 「食事バランスガイド」について

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html

 

*10 厚生労働省 健康日本21(身体活動・運動) 身体活動・運動

https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html

 

*11 スポーツ庁 女性のスポーツ参加サポートページ

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop11/list/jsa_00040.html

 

*12 平成30年度女性スポーツ推進事業(女性のスポーツ参加促進事業)Myスポーツプログラム(例)

https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/a_menu/sports/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/23/1416018_023_1.pdf  p.1

 

*13 スポーツ庁スポーツ庁Web広報マガジンDEPORTARE 「痩せていれば病気にならない」は誤解!? 女性の大敵「痩せ」「運動不足」のリスクと解決策【後編】

https://sports.go.jp/special/policy/post-22.html

 

この記事を書いた人

nishicherry2480行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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