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更新日:2023.01.20ヘルスケア生理前は便秘になりやすい?薬に頼らない便秘解消法を看護師が紹介

生理前の便秘で悩まれている方は多いと思います。

筆者も生理前は便秘になることが多く
「お腹が張って苦しい。」「下っ腹がぷっくらしている」と悩んでいました。

生理前の便秘には生理周期に伴う女性ホルモンの変動が関係しています。
生理に限らず若い女性は便秘になることが多いといわれていますが、
薬には頼りたくない・・という方も多いはず。

今回は生理前の症状と薬を使わない便秘解消法をご紹介します。

生理前の便秘は月経症候群?

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)とは

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)とは月経(生理)が始まる3~10日ほど前から、 女性ホルモンバランスの崩れにより出現する、心と身体の症状のことをいいます。  

 

心の面では、イライラ、不安感。攻撃的になったり、気分が落ち込んだりすることがあります。  

 

身体の面では、頭痛・肩こり、腰痛、下腹部の痛み、便秘、足のむくみ、肌荒れなどがあります。  

 

中でも便秘は、40代女性は41%、30代女性は39%、20代・50代女性は36%と、20代から50代の女性の約4割が悩んでおり*1、女性にとって重要な問題です。

便秘の定義と症状

まずそもそも便秘とはどういう状態でしょうか。  

 

慢性便秘症診療ガイドライン2017*2では、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。

 

一般的には、排便の頻度が1週間に3回未満と定義されることが多いです。  

 

症状としては、

  • 腹満感(お腹がはって苦しい。ガスが溜まっているような感じがすること)
  • 残便感(排便をしてもスッキリせずまだ残っているような不快感)
  • 硬便(水分不足で便が硬くて出しにくく、出でもコロコロした便)
  • 排便に時間がかかる などがあります。

 

便の性状はブリストル便性スケールで客観的に確認できます。

1または2に該当すれば便秘傾向と考えられます(図1)。  

 

 

図1:ブリストルスケール 引用:ナース専科.便秘の看護|種類・観察項目・看護計画など

https://knowledge.nurse-senka.jp/234622/

生理前の便秘の原因

便秘には様々な要因がありますが、 月経前症候群(PMS)の症状のひとつである、 生理前の便秘は特に「ホルモンバランスの変化」、 「ストレス」、「水分不足・食生活の乱れ」の影響が大きいと言われています。

① ホルモンバランスの変化

女性の月経は主に卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という 2つの女性ホルモンによってコントロールされています*3。  

 

生理前に便秘になるのは排卵日から生理まで多く分泌される黄体ホルモンの影響で、 大腸の腸壁から水分の吸収が促され、 腸の蠕動運動が抑制されるため生理前に便秘になりやすい状態になります。

② ストレス

生理前はイライラしたり、急に涙がでたり、不安になったりすることありますよね。  

 

ストレスを強く感じると副交感神経と交感神経のバランスが崩れ自律神経が乱れてしまいます。  

 

自律神経は腸の動きと密接な関係があるので腸の蠕動運動が弱くなります。

③ 水分不足・食事バランスの乱れ

生理前になぜかラーメン(油そば)や味が濃いものを食べたいと思う時はありませんか。  

 

炭水化物が多い、野菜が不足しているなど食生活が乱れると便秘の原因になる可能性があります。  

 

特に食物繊維が不足すると便秘になりやすくなります。  

 

過度なダイエットなども便秘を引き起こす要因になるため注意が必要です。

薬に頼らずに生理前の便秘を予防・解消する対策4選

➀ 適度に運動し、よく寝る

睡眠に関する大規模調査では、女性の睡眠は、性ホルモンの影響を受け、

月経周期とともに変動し、睡眠の質が不良となることが報告されています*4-6。  

 

寝不足が続くとホルモンバランスや自立神経の乱れが生じ、便秘に繋がります。  

 

寝不足に対する効果的な対策はずばり「継続的な運動」です。

 

ウォーキングなどの「有酸素運動」を「週2回以上、1回30分以上」行った人は、

行わなかった人と比べて睡眠の時間・質ともに良好であることが明らかとなっています*7。  

 

また、普段から運動をしていないと基礎代謝が低くなり身体が冷えやすくなります。

適度な運動を継続的に行い、睡眠時間や睡眠の質を改善することが、

便秘を予防・解消するための対策となります。    

➁ ストレスを溜めない

強いストレスはPMSや便秘症状を悪化させる原因になります*8。

 

できるだけその日のうちに解消しましょう。  

 

好きな趣味や、リラックスできるアロマ、ヨガやジョギングなどの運動、マインドフルネスなど、

ストレス解消方法は人それぞれです。  

 

自分にあったストレス解消法を見つけましょう。  

③ 常温の水分・食物線維・イソフラボンを摂取する

生理前は便が硬くなってしまうので柔らかくするためにしっかり水分をとりましょう。  

 

特に一日の水分摂取量が500ml以下の場合は排便量を減少させ,便秘症状につながります*9。

 

腸に負担をかけないためにもできるだけ常温の飲み物を飲むようにしてください。  

 

食物線維は、便を柔らかくしてくれる栄養素です。

特に生理前は意識して摂取しましょう。  

 

また、女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンを含んだ大豆製品は、

ホルモンバランスを整えるといわれています*10。  

 

冷やっこや納豆などを意識して食べることで、

生理前の便秘のみならず、 月経前症候群(PMS)全般の予防・解消に繋がるでしょう。  

 

これらの食習慣は継続することでその効果を発揮します。

 

生理前に限らず、日ごろから「水分」「食物繊維」「イソフラボン」などに加えて、

食事バランスを意識しながら摂取することも大切です。

 

➃ 腹部マッサージ

お腹をマッサージすると腸を刺激し動きを良くします。

1日15分程度お腹の「の」の字マッサージ(図2)をやってみましょう。  

 

 

図2:お腹のマッサージ法|イラストAC

https://www.ac-illust.com/main/detail.php?

 

まとめ

4割近くの女性が悩む生理前の便秘について、 原因と対処法をご紹介しました。   生理前の便秘はホルモンバランスの変化に伴う症状である「月経前症候群(PMS)」のひとつですが、それは生理に伴ってホルモンが正常に動いている証拠でもあります。  

 

生理前や生理中は便秘以外にも様々な症状が出現します。

あまり無理をしすぎず身体と心を大切に過ごしましょう。

参考サイト・参考文献

*1 ビオフェルミン製薬株式会社.全国の一般男女1,000人に聞いた「おなかケア」に関するアンケート調査

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000035690.html  

 

*2 慢性便秘症診療ガイドライン2017   

https://www.e-healthnet.mlw.go.jp/information/food/e-02-010.html  

 

*3 藤原智子, and 中田理恵子. “若年女性の月経痛および便通に影響を及ぼす食生活因子の検討.” 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 64 (2012): 91.    

https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205559771520  

 

*4  厚生労働省.保健福祉動向調査 平成12年度.東 京:厚生統計協会;2001.  

 

*5 日本放送協会放送文化調査研究所,編.データブッ ク国民生活時間調査2010.東京:日本放送出版協 会;2011.   

 

*6 厚生労働省.第5章休養等に関する状況.国民健 康・栄養調査結果の概要 平成23年.

http://www. mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002q1st-att/2r9852 000002q1wo.pdf   

 

*7 水野康, et al. “中高年女性における運動習慣の有無と睡眠習慣および睡眠健康度との関係.” 体力科学 53.5 (2004): 527-536.   

https://doi.org/10.7600/jspfsm1949.53.527  

 

*8 大学女子アスリートにおけるストレス反応,コーピングおよび生活習慣と月経前症候群との関連性 −構造方程式モデリングによる検討−   

https://doi.org/10.7600/jspfsm.70.109  

 

*9 便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュ

https://doi.org/10.18892/jsnas.12.2_33  

 

*10 石渡尚子, 上杉宰世, and 上原万里子. “月経前症候群に及ぼす大豆イソフラボンの影響.” (2003): 135-139.

https://www.fujifoundation.or.jp/report/pdf/024/24_135.pdf

この記事を書いた人

杉本菜摘1996年奈良県生まれ。看護師。病棟勤務を経て「もっと1人1人に寄り添う看護をしたい」と思い、現在訪問看護ステーションで勤務している。ラーメンより「油そば」派。

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