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更新日:2023.02.01ヘルスケア更年期かも?と思った時に知っておきたい症状と乗り越え方

40歳を過ぎて、眠たいのに眠れない、身体が暑くなる感じがする、頭痛がする....
など体調に変化を感じている方はもしかすると更年期の症状かも知れません。

しかし、ご自身でも更年期かも、、、と思いつつ、
そのままにされている方も多いのではないでしょうか。

更年期の症状をそのままにして対策を取らないと、
生活に支障をきたす「更年期障害」に発展するかも。

本記事では更年期の原因を踏まえて、症状と対策についてお伝えします。

更年期症状の原因と対策状況

うまく更年期の症状と付き合っていくために、

更年期症状にはどのような原因があるのかを知っておくことで、

どの対策が良いか判断することができます。

 

まずは、更年期症状の原因についてご説明いたします。

更年期症状の原因:性ホルモンの分泌量低下

更年期症状は、40歳代以降に男女の性ホルモン分泌量の低下が原因となって生じる、自律神経失調症に似た症候群で*1、様々な体調の不良や情緒の不安定など、心身の不調をきたします。

 

女性の場合は、閉経期前後の約10年間に卵巣ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少することによって症状が現れます。(図1)

 

男性の場合は、30歳以降に性ホルモンであるテストステロンの分泌が緩やかに減少し始め、40歳代後半で症状が現れることがあります。男性は女性よりも分泌量の変化が穏やかなため、老化現象の一部と認識されて気付かれないことも多いです。(図1)

 

引用:内閣府.男女共同参画局.I-特-34図 男性・女性ホルモンの推移*2

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-34.html

 

男女で症状の認め方に差はありますが、40歳を過ぎた頃から性ホルモンの分泌量低下が原因となって生じる、様々な心身の不調をまとめて更年期症状と呼びます。

性ホルモンの分泌量が低下すると自律神経のバランスが崩れる

自律神経は身体を活発に動かす時に働く「交感神経」と、身体を休める時に働く「副交感神経」がバランスよく働くことで保たれています。交感神経と副交感神経の概要は次の通りです*3。

 

交感神経

交感神経が働くと、心拍数を増やし、呼吸がしやすくなるように気道を広げ(拡張し)ます。これにより、筋肉により大きな力が入るようになります。この神経系はまた、手のひらの発汗、瞳孔の散大、体毛の逆立ち(鳥肌)なども引き起こします。その一方で、緊急時にあまり重要でない機能(消化や排尿など)を鈍らせます。

 

副交感神経

反対に、副交感神経が働くと、心拍数を減らし、血圧を低下させます。また、消化管を刺激して、食べものの消化や不要物の排泄を促します。食べものから吸収されたエネルギーは、組織の修復や形成に利用されます。

 

更年期では自律神経のバランスが崩れる

更年期では性ホルモンの分泌量低下により交感神経と副交感神経のバランスが崩れます。
バランスが崩れると、交感神経・副交感神経どちらか片方の働きが過剰となるので、
通常と異なる体の反応が症状として現れます。

 

 

更年期症状の対策は「何もしてない」人が一番多い

更年期症状は、加齢に伴い、性ホルモンの分泌量低下によって生じるため、ほぼ全員が何らかの形で経験します。

一方で、厚生労働省の調査によると、緩和のための対策をとっていない人の割合が、41.7%~54.0%と、全ての世代でもっとも多くなっています(図2)。

 

図2:厚生労働省.「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果*4

https://www.mhlw.go.jp/content/000969166.pdf

 

中には症状が無いために何もしていない人もいると思われますが、

何らかの症状を自覚しながらも、情報が無いことや日々忙しいことから後回しになってしまう方もいるのではないでしょうか。

そのような方に是非知っておいて欲しい、更年期症状の種類と対策をこの後ご紹介いたします。

更年期の主な症状とセルフチェック

更年期の症状は、先ほどお伝えしたとおり、性ホルモンの分泌量低下により、

自律神経のバランスが崩れることで「身体的な症状」と「精神的な症状」が現れます。

 

更年期症状

女性の閉経前では次のような症状を認めます。

 

「身体的症状」

・のぼせや顔の火照り、異常な発汗

・脈が速くなる、動悸や息切れ、血圧が上下する

・耳鳴り、頭痛やめまい

・生理不順

 

「精神的な症状」

・興奮亢進、イライラや不安感、うつ、不眠

 

などがあげられます。

 

また、閉経後はこれらに加えて、「膀胱炎や尿失禁」、「腰や膝の関節痛」、「目やのどなどの粘膜の異常」などの身体的症状と、「無気力感」などの精神的症状が現れてきます。

 

これらの症状は、加齢とともに生じる場合もあるので、泌尿器科や整形外科、眼科などの受診を考える方も多いと思いますが、更年期の可能性も考慮することで、解決の糸口となることもあります。

 

初期症状が、だるい、寝付けないなどの曖昧なものであるため、発症に気付かずに、身体が意のままにならない自分への不満が、ストレスとなって精神的症状を悪化させるケースが多いそうです。

 

何か不調を感じたら「更年期かも?」と選択肢に更年期を入れてみてはいかがでしょうか。

より具体的に更年期かどうかのチェックをするためには、次のようなセルフチェック*4が有用です。

更年期症状のセルフチェック(間略式更年期指数)

女性の場合、ご自身の更年期症状はどの程度なのか、受診をした方がいいのかを知る時は、

更年期症状の状況を示す一つの指標としての SMI スコア(Simplified Menopausal

Index、簡略更年期指数)が参考になります(図3)*4。

 

引用:小山ら 更年期婦人における漢方治療 : 簡略化した更年期指数による評価 (1992:9:30-34 産婦人科漢方研究のあゆみ)

 

更年期指数の自己採点の評価法(合計点) 

0~25 点:上手に更年期を過ごしています。これまでの生活態度を続けていいでしょう。

 

26~50 点:食事、運動などに注意を払い、生活様式などにも無理をしないようにしましょ う。 

 

51~65 点:医師の診察を受け、生活指導、カウンセリング、薬物療法を受けた方がいいでし ょう。 

 

66~80 点:長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。 81~100 点:各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合は、専門医での長期的な対応 が必要でしょう。

 

 

更年期障害との違い

更年期症状とよく似ている「更年期障害」という言葉を聞くことも多いのではないでしょうか。簡単にいうと、更年期症状が進んで、日常生活に支障を来すようになったら「更年期障害」になります。

 

更年期の対策・更年期障害の治療

日本産科婦人科学会によると、更年期障害は身体的な要因・心理的な要因などが複雑に関与して発症しますので、まず十分な問診を行うことが必要です。その上で「生活習慣の改善」を試み、それでも改善しない症状に対して「薬物療法」を行います*5,6。

 

生活習慣の改善

生活習慣では、特に食事と運動が重要です。

食事と運動のコツをお示しします。

 

 

食事:大豆イソフラボン、エクオール

 

更年期症状対策としてお勧めの食品はズバリ「大豆」です。

 

大豆に含まれる「イソフラボン」は、更年期症状特有の「ほてり」や「のぼせ」に対して緩和効果が報告されています*7。

 

また、大豆イソフラボンを材料として腸内細菌の働きによって作られる「エクオール」が、更年期の身体症状や精神症状の改善に加えて、血圧や動脈硬化改善に繋がるというほうこくもあります。

 

冬であれば豆腐を含む水炊きなど、大豆製品を摂ることを意識してみてはいかがでしょうか。

 

運動:有酸素運動

 

更年期症状に対する運動でおすすめなのは「有酸素運動」です。

 

とある研究では、週に3回、1回当たり60分程度の有酸素運動を行ったことで、

「身体の痛み」「活力」「日常役割機能・精神」「心の健康」が改善したと報告されています*8。

 

運動の種類は問わないそうなので、

ウォーキングやプールなどの軽い運動を少し長めに行うと良いでしょう。

 

継続が重要なので、好きなことや買い物のついでに出来ることなどから初めてみましょう。

 

薬物療法

更年期障害の薬物療法は大きく3つに分けられます。

 

ホルモン補充療法:HRT

 

更年期の原因は、性ホルモン(エストロゲン)の分泌量低下なので、少量のエストロゲンを補う治療法として、ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)が行われます*9。

 

HRTは、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗など血管の拡張と放熱に関係する症状に特に有効ですが、その他の症状にも有効であることがわかっています。

また、更年期にHRTを開始した人では心臓・血管の病気や骨粗鬆症など老年期に起こる疾患が予防できるという利点もあります。

 

注意点としては、子宮がある方とない方で少し内容が異なります。

エストロゲン単独では子宮内膜増殖症のリスクが上昇するため、子宮のある方には黄体ホルモンを併用します(エストロゲン・黄体ホルモン併用療法)。

手術で子宮を摘出した方には、黄体ホルモンを併用する必要はありません(エストロゲン単独療法)。

 

HRTに用いるホルモン剤には飲み薬、貼り薬、塗り薬などいくつかのタイプがあり、またその投与法もさまざまです(図2)。

 

産婦人科医とよく話し合いながら、ご自身に合った治療法を選択していきましょう。

 

 

漢方薬

多様な症状を来す更年期には、漢方が心強い味方となってくれます。

 

産婦人科で相談する際に「婦人科三大処方」とも呼ばれる当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸を中心に、漢方薬の処方も検討して頂くといいでしょう。

 

その他にも、

・冷え症で貧血傾向がある方には「当帰芍薬散」

・不安・不眠などの精神症状には「加味逍遥散」

・のぼせ傾向や、下腹部の抵抗・圧痛には「桂枝茯苓丸」

 

など、更年期症状に対して幅広く対応しているので、試してみてもいいのではないでしょうか。

 

 

向精神薬

 

更年期症状のうち、精神症状がつらい場合には、向精神薬の処方を相談してみてはいかがでしょうか。

 

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など、比較的新しい抗うつ薬は副作用が少なく、ほてり・発汗など血管の拡張と放熱に関係する症状にも有効です。

 

向精神薬と聞くと少しハードルが高いですが、

あくまでも選択肢のひとつとして、

産婦人科の担当医に相談することがおすすめです。

 

まとめ

本記事では、更年期かも?と少し感じている女性にむけて、

更年期症状はホルモンの分泌量低下が原因なので、ほとんどの人が経験すること、

自律神経のバランスが崩れることで、のぼせや顔の火照り、異常な発汗などの「身体的症状」や興奮亢進、イライラや不安感などの「精神的な症状」を認めることをお伝えしました。

 

また、更年期症状の対策としては、食事や運動などの生活習慣の改善、お薬や漢方などがあります。

 

ご自身で取り組まれることもとても有意義かと思いますが、

機会があれば産婦人科などで専門医に相談しながら、

ご自身にあう解決策を見つけていってみてはいかがでしょうか。

 

最後になりましたが、日常生活をおくっていると更年期症状がつらいというお声をたくさん聞きます。

ご自身への優しさを大切に、上手に付き合っていただく手がかりに本記事がなれば幸いです。

 

 

参考サイト・参考文献

*1:厚生労働省.e-ヘルスネット.更年期障害

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary

 

*2:内閣府.男女共同参画局.I-特-34図 男性・女性ホルモンの推移 

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-34.html

 

*3:MSDマニュアル家庭版.自律神経系の概要

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/09-%E8%84%B3%E3%80%81%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%80%81%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%87%AA%E5%BE%8B%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%87%AA%E5%BE%8B%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

 

*4:厚労省:「更年期症状・障害に関する意識調査」 基本集計結果

https://www.mhlw.go.jp/content/000969166.pdf

 

*5:日本産科婦人科学会.更年期障害

https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14

 

*6:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017.CQ412 更年期障害への対応は?

  (日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会)

 

*7:久保田芳郎, et al. “大豆イソフラボンアグリコンの更年期障害に対する効果について.” 健康医学 17.2 (2002): 172-177.

https://doi.org/10.11320/ningendock1986.17.172

 

*8:上田真寿美, et al. “中年期以降の女性を対象とした 3 か月間のストレス緩和介入の効果―アロマセラピー・有酸素運動・筋弛緩法を用いて―.” 日本健康教育学会誌 20.4 (2012): 276-287.

https://doi.org/10.11260/kenkokyoiku.20.276

 

*9:日本産科婦人科学会.更年期障害.

https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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