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更新日:2024.06.09リハビリ【2024年度版】パーキンソン病のオンオフに合わせた自宅でできるリハビリ方法3選|理学療法士監修

パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり、特に運動機能に大きな影響を及ぼします。
パーキンソン病は、薬の効果が切れると急に動作が困難になるオンオフ症状が特徴です。

オンの時とオフの時は身体の状態が大きく異なるため、状態に合わせたリハビリが重要です。
また、ご自身のオンオフの状況を把握しておくことで、効果的な治療やリハビリに繋がります。

この記事では、理学療法士の経験をもとに、パーキンソン病患者がオンオフ症状に合わせて自宅で行える効果的なリハビリテーション方法を紹介します。


パーキンソン病のオンオフ現象とは?

  パーキンソン病のオンオフ現象は、患者が服用している薬の効果が現れている「オン」の状態と、効果が切れてしまう「オフ」の状態が交互に現れることを指します。オンの状態では、薬が効いているため、動きがスムーズで活動しやすくなります。一方、オフの状態になると、薬の効果が薄れ、動作が困難になり、体が硬直しやすくなります。この現象は、特に長期間薬を服用している患者に多く見られ、生活の質に大きな影響を及ぼします。   オンオフ現象は、日常生活の中で突然発生することがあり、日常生活への影響も少なくありません。例えば、朝の服薬後にはオンの状態が続き、午後や夕方にオフの状態が訪れることがあります。このため、パーキンソン病患者は、日々の活動を計画する際にオンオフのタイミングを考慮する必要があります。   リハビリテーションや運動療法は、このオンオフ現象に合わせて行うことが推奨されます。オンの状態では積極的に運動を行い、オフの状態では安全な環境で軽度のストレッチやリラクゼーションを取り入れることが重要です。オンオフの状態をしっかりと把握し、適切な対策を講じることで、症状の管理がより効果的になります。    

パーキンソン病のオンオフに合わせた自宅でできるリハビリ方法

 

パーキンソン病のリハビリテーションは、オンとオフの状態に応じて適切に行うことが効果的です。オンオフの変動を理解し、それに応じたリハビリプランを立てることで、患者の運動能力を最大限に引き出すことができます。

 

 

オンの時のリハビリ

 

オンの時は、体が比較的動きやすい状態にあるため、積極的に運動療法を行う最適なタイミングです。この時期に効果的なリハビリを行うことで、筋力の維持や向上を図ることができます。

 

筋力トレーニング

筋力トレーニングは、パーキンソン病患者にとって筋力を維持し、運動機能を向上させるために非常に重要です。自重を使ったトレーニングは特別な器具が不要で自宅でも簡単に実施できます。

例えば、スクワットや腹筋運動、階段の昇り降りなどがあります。これらの運動は、筋肉の強化を目指し、バランス能力の向上にも寄与します。

 

バランストレーニング

バランストレーニングは転倒を防ぐために重要です。以下の2つの方法が特に効果的です。

  1. 二重課題: 二重課題とは、歩行しながら別のタスク(例えば、簡単な計算や単語を言うなど)を行うことです。これにより、注意力と運動の調整能力が鍛えられ、日常生活でのバランスが向上します。
  2. 後ろ歩き: 後ろ歩きは、前方へのバランス感覚を鍛えるとともに、通常の歩行とは異なる筋肉を使うため、全体的なバランス能力を向上させます。これにより、転倒のリスクを減らすことができます。

 

メトロノームを使用したリズム運動

リズム感を養うためにメトロノームを使用したリズム運動も有効です。歩行やステップ運動にメトロノームを取り入れることで、一定のリズムを維持しやすくなり、運動の効果が高まります。

まずはご自身の歩行やステップにメトロノームのリズムを合わせてから、少しずつ変化させることで、スムーズに動く練習を行うことが出来ます。

オフの時のリハビリ

 

オフの時は体の動きが制限されるため、安全性を確保した環境でのリハビリが重要です。

軽度のストレッチやリラクゼーションを取り入れ、筋肉のこわばりを軽減します。

 

安全な環境整備

自宅内の環境あオフの時の状態に合わせて設定しておくことをお勧めいたします。オフの時でも安全かつ円滑に移動や入浴などの動作を行えるように、家具の配置を工夫します。必要に応じて手すりの設置やお風呂のシャワーチェアや滑り止めマットなどの福祉用具の使用も検討して下さい。

 

ストレッチ

軽いストレッチを行うことで、筋肉の緊張をほぐし、こわばりを軽減します。特に、脚や腰のストレッチが効果的です。これにより、柔軟性が向上し、動きやすさが増します。

 

リラクゼーション

深呼吸や瞑想を取り入れることで、精神的な緊張を緩和し、リラックスすることができます。これにより、ストレスが軽減され、心身のバランスが保たれます。あまりリハビリの現場で行うことは少ないですが、精神状態によって動きやすさが変化する方も多くいるので、意外と重要ではないかと思います。

先行研究でも、63人のPD患者を対象にした8週間のマインドフルネス・瞑想ベースの複合運動プログラムでは、筋力、バランス、持久力などの運動症状が大幅に改善されました。さらに、不安、うつ、認知機能、睡眠障害、生活の質などの非運動症状も有意に改善されています。(Son & Choi, 2018) 

心身をバランスよく整えることがパーキンソン病の方には重要なのかなと思います。

 

 

オンオフの状態を把握するための方法

  オンオフの状態を正確に把握することで、リハビリテーションの効果を最大化することができます。以下の方法を活用して、オンオフのパターンを記録しましょう。    

オンオフ表をつける

  毎日のオンオフの状態を詳細に記録するために、オンオフ表を作成しましょう。   以下のような項目を記録することで、パターンを把握しやすくなります:

  • 時間帯ごとの動きやすさの評価(1から5のスケールなど)
  • 排便状況
  • 服薬時間とその効果

  受診の際に相談すると冊子を貰えることもありますが、「パーキンソン病オンオフ表」などで検索するとPDFなどでダウンロードすることができます。   参考までに筆者が以前利用者さまに合わせて作成した表をダウンロードいただけます。 https://drive.google.com/file/d/1SZ60d5uffklcFgtcDRr1f-HkcIGabkY_/view?usp=sharing    

アプリの活用

  専用のアプリを使って、症状の変動を記録することができます。 日本語で利用できるアプリとして「ポケットPD」や「リハビ日誌~毎日のリハビリとパーキンソン病治療~」などがあります。   これらのアプリを活用することで、より効果的なリハビリプランを立てることができます。  

受診の時など定期的なチェック

  日々の記録を定期的にチェックし、リハビリテーションの内容を調整することで、効果を最大化することができます。受診の際には、医師に相談し、内服薬の調整やその他の対応について助言を貰うことをおすすめします。  

オンラインリハビリの活用

  最近では、オンラインでのリハビリテーションも増えています。オンラインリハビリは、自宅にいながら専門家の指導を受けられるため、非常に便利です。ビデオ通話を通じて、個々の状態に合わせた運動プログラムを提供してもらうことができます。  

オンラインリハビリの利点

  オンラインリハビリは、専門家の指導をリアルタイムで受けることができ、自分のペースでリハビリを行えるため、忙しい日常生活にも組み込みやすいです。また、定期的なフォローアップにより、リハビリの効果を最大化できます。  

まとめ

  この記事では、パーキンソン病患者が自宅で行える効果的なリハビリテーション方法を紹介しました。 オンの時には積極的に運動療法を行い、オフの時には安全な環境を整え、リラクゼーションを取り入れることが重要です。   また、オンラインリハビリも効果的な手段として推奨されます。   患者さん一人ひとりの状況に合わせたリハビリプランを立て、ご自宅でも継続的に取り組むことで、パーキンソン病のオンオフ症状とうまく付き合って頂ければと思います。  

この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。理学療法士・医学修士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、健康格差に関する研究、楽しい介護予防を目的とした市民活動団体の設立など活動中。学生時代の経験から志した「健康に格差のない、障害があっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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