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更新日:2023.05.01ヘルスケア膝痛の原因と改善のための運動 エビデンスに基づき概要を解説

膝痛は多くの人にとって身近な問題であり、日常生活やスポーツ活動に影響を及ぼすことがあります。この記事では、膝痛の主な原因を解説し、効果的な運動療法を提案します。

システマティックレビューやメタアナリシスといったエビデンスを参考に、筋力トレーニングや柔軟性トレーニングなどの運動方法を紹介。膝痛を和らげ、生活の質を向上させるための情報をお届けします。

膝痛の主な原因と判別方法

膝痛の主な原因

膝痛は、多くの人が一度は経験する一般的な症状であり、原因にはさまざまなものがあります。  

 

主な原因としては、次のようなものがあります*1。  

 

a) 変形性関節症(OA): 日本では、高齢者の膝痛の主要な原因として変形性関節症が挙げられます。変形性関節症は、軟骨の摩耗や骨の変形が進行することで、関節の痛みや動きの制限が起こる疾患です。日本の高齢化社会において、変形性関節症の患者数は増加傾向にあります。  

 

b) 運動・スポーツによる負荷: 若年層においては、運動やスポーツによる過度な負荷が膝痛の原因となることが多いです。ランニングやジャンプなどの繰り返し行われる動作は、膝に負担をかけることがあります。  

 

c) 靭帯損傷・半月板損傷: 交通事故やスポーツによる急激な外力やねじれが、膝の靭帯や半月板に損傷を与えることがあります。これらの損傷は、膝の安定性や機能に影響を与えるため、痛みが生じます。  

 

d) 筋力不足・筋肉の緊張: 長時間の座りっぱなしや不適切な姿勢が原因で、膝周囲の筋肉が緊張したり、筋力不足が生じることがあります。これにより、膝への負担が増加し、痛みが生じることがあります。

膝痛の判別方法

膝痛の原因を特定するためには、医師による診察が必要です。診察では、患者の症状や病歴を詳しく聞いた上で、関節の動きや圧痛の有無を調べることが一般的です。

 

さらに、必要に応じてX線やMRIなどの画像診断や血液検査が行われることもあります。これらの検査により、関節の構造的な異常や炎症の有無を評価し、膝痛の原因を特定します。  

 

原因によって治療法が異なるため、正確な診断が重要です。

 

例えば、変形性関節症や筋力不足による膝痛の場合は、運動療法や生活習慣の改善が効果的です。

 

一方、靭帯損傷や半月板損傷の場合は、場合によっては手術が必要となることがあります。  

 

膝痛の原因を正確に判別し、適切な治療法を選択することで、痛みの緩和や関節機能の改善が期待できます。

 

また、早期の対応が重要であるため、膝痛が持続する場合は、適切な時期に医師の診察を受けることが望ましいです。

エビデンスに基づく膝痛改善のための運動

膝痛の治療として効果的な運動は、筋力トレーニング、柔軟性トレーニング、有酸素運動、平衡性トレーニングなどがあります。これらの運動は、筋力や柔軟性の向上、関節の安定性の改善、関節の動きや機能の向上、疼痛の軽減に寄与します*2。    

 

以下のシステマティックレビューは、膝痛改善のための運動療法に関するエビデンスを詳しく調査しています。  

 

  • Fransen, M., McConnell, S., Harmer, A. R., Van der Esch, M., Simic, M., & Bennell, K. L. (2015). Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews, (1).

 

このレビューでは、膝関節炎に対する運動療法が、疼痛の軽減や機能の改善に有効であることが示されています。特に、筋力トレーニングや水中運動が効果的であることが報告されています。また、運動療法は他の治療法と併用することで、さらなる効果が期待できます。    

 

 

別のメタアナリシスでは、膝痛患者に対するエクササイズ療法の効果*3について検討されています。  

 

  • Juhl, C., Christensen, R., Roos, E. M., Zhang, W., & Lund, H. (2014). Impact of exercise type and dose on pain and disability in knee osteoarthritis: a systematic review and meta-regression analysis of randomized controlled trials. Arthritis & rheumatology, 66(3), 622-636.

 

この研究では、筋力トレーニング、有酸素運動、および無酸素運動が、膝痛や機能障害の改善に効果的であることが明らかにされています。また、運動療法の効果は、運動の種類や強度、頻度、期間によって変わることが示唆されています。

運動療法の効果と安全性

運動療法は、膝痛の改善に効果的であるだけでなく、副作用が少ないため、安全性が高いとされています。ただし、運動療法を行う際には、適切な指導やフォームの確認が重要です。特に、関節炎や軟骨損傷などの患者は、過度の運動や不適切なフォームが関節への負担を増加させる可能性があるため、注意が必要です。

 

運動療法を行う際には、医師や理学療法士と相談し、適切な運動プログラムを選択することが望ましいです。また、個々の状況に応じて、運動の種類や強度、頻度、期間を調整し、効果的かつ安全な運動療法を実施することが重要です*2,3。

まとめ

総合的に見ると、運動療法は膝痛の症状を改善し、生活の質を向上させる有効な治療法であることが、システマティックレビューやメタアナリシスから明らかになっています。運動療法は、膝痛の原因や個々の状況に応じて、筋力トレーニング、柔軟性トレーニング、有酸素運動、平衡性トレーニングなどの組み合わせで実施することが推奨されています。  

 

運動療法の効果を最大限に発揮するためには、以下のポイントに注意して取り組むことが重要です。  

 

  • 医師や理学療法士と相談し、適切な運動プログラムを選択する
  • 運動の種類や強度、頻度、期間を個々の状況に応じて調整する
  • 運動のフォームや技術を正しく習得し、適切な指導を受ける
  • 運動中や運動後の症状の変化に注意し、必要に応じて運動プログラムを調整する

 

最後に、運動療法は継続的に行うことが効果を持続させるために重要です。

 

日常生活に運動を取り入れ、健康的な膝関節を維持することが、膝痛の予防や改善に役立ちます。  

 

運動療法を始める前には必ず医師や専門家と相談し、適切な指導を受けることが望ましいです。

参考文献

*1:Cross, M., Smith, E., Hoy, D., Nolte, S., Ackerman, I., Fransen, M., … & Buchbinder, R. (2014). The global burden of hip and knee osteoarthritis: estimates from the Global Burden of Disease 2010 study. Annals of the rheumatic diseases, 73(7), 1323-1330.  

 

*2:Fransen, M., McConnell, S., Harmer, A. R., Van der Esch, M., Simic, M., & Bennell, K. L. (2015). Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews, (1).  

 

*3:Juhl, C., Christensen, R., Roos, E. M., Zhang, W., & Lund, H. (2014). Impact of exercise type and dose on pain and disability in knee osteoarthritis: a systematic review and meta-regression analysis of randomized controlled trials. Arthritis & rheumatology, 66(3), 622-636.      

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この記事を書いた人

東馬場要1991年奈良県生まれ。医科学修士。脳卒中と神経難病の認定理学療法士。現在はロッツ株式会社でリハビリを実践しながら、災害支援団体にも所属して能登半島地震の被災者への支援活動を行っている。学生時代の経験から志した「障害や災害にあっても長生きを喜べる社会」の実現を目指している。

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