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更新日:2022.11.01リハビリお金がもらえるわけじゃない?介護保険制度の概要と注意点をFPが解説

かつては子どもなど、家族が担う前提とされていた「親の介護」。
しかし現在は高齢層の急増から、家族だけでは手が回らないなど、様々な問題が生じるようになってきました。
そこで開始されたのが「介護保険制度」です。

特定の状態になれば支援を受けることができる便利な制度ですが、注意点もあります。

そこで本稿では、介護保険制度の概要と注意点、自己負担額が大きくなった場合に払い戻しを受けられる便利なサービスなど、介護保険制度を取り巻く複雑な内容を分かりやすく解説します。

「介護保険制度」とは

介護保険制度は、2000年4月からスタートしました。

制度を運営しているのは、お住まいの市区町村です。*1

 

医療保険に加入する40歳から64歳は「第二号被保険者」と呼ばれ、自動的に被保険者となります。

第二号被保険者は医療保険と一体的に保険料が引き落とされます。

対して、65歳以上は「第一号被保険者」と呼ばれ、保険料は原則年金から天引きされています。

徴収した保険料を財源に、様々なサービスが運営されています。

 

介護保険制度は、現在約606万人が利用しており、介護を必要とする高齢者を支える制度として定着しています。

特定の病気が原因で早期に介護が必要になった方や、高齢化によって介護が必要になった方を、社会全体で支えていく制度なのです。*2

介護保険制度の注意点

介護保険制度は、介護の不安を社会で支える便利な制度である一方、注意点もあります。

 

一つは、自己負担金が発生することです。

介護保険制度は、あくまでサービスを提供するものであり、金銭を支給するものではありません。

サービスを利用した場合は、自己負担が1割(一定以上の所得がある場合は、2〜3割)発生します。

また、利用限度額を超えると全額自己負担になるため、想定以上に費用負担が大きいということも予想されるのです。*3

 

各年齢において所定の状態にならないと、サービスを受けることができない点も注意が必要です。

 

65歳以上は、病気やケガなど原因を問わず、要支援・要介護状態と認定されればサービスを受けることができます。

しかし、40歳~64歳は、がんや関節リウマチなど16の疾病で要支援・要介護状態と認定されなければなりません。*4

引用)厚生労働省「介護保険制度について 厚生労働省(40 歳になられた方へ)」 p2

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf

 

がんにおいては、要支援・要介護状態と認定されるだけでなく、末期症状であることが必要など条件も厳しく設定されています。

これは、介護保険制度が老化に起因する疾病を対象としているためです。

したがって、40歳で怪我を原因として半身不随になっても、サービスの適用は受けられないことになります。

 

介護保険制度は全年齢が平等に受けられるサービスではないこと、自己負担額が発生することは、忘れてはならない注意点です。

介護状態区分と具体的なサービス内容紹介

介護保険制度では、要支援状態と要介護状態とで受けられるサービスが異なります。

まずは要支援と要介護状態がどのような状態なのか解説します。

要支援・要介護状態の区分

引用)厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順 要介護状態区分別の状態像」p11

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf

 

介護状態は「要支援1〜2」、「要介護1〜5」の7段階に分かれます。

要支援1が最も軽く、要介護5が最も重い状態です。

 

要支援1については、自分で「起き上がり」や「立ち上がり」ができない場合に認定されることが多く、症状が重くなるにつれて要介護状態に移行します。

ただし、要介護状態に認定されるためには、厳しい条件があります。

 

例えば、後述する特別養護老人ホームの入所条件である要介護3に認定されるためには、「寝返り」「排尿」「排便」「口腔清潔」「上衣の着脱」「ズボン等の着脱」ができない状態でないといけません。

要支援・要介護状態認定の条件の厳しさは、念頭に置いておく必要があります。

 

もし、ご家族やご自身が要支援・要介護認定を受ける際には、どのようなことができないかを事前に確認しておきましょう。

各サービスの照会

〇要介護1~5

要介護1〜5に認定された場合は、最も手厚いサービスを受けることになります。

代表的なものは、施設に入所し生活を送る「施設サービス」です。

入浴、排泄、食事等の介護や、日常生活の世話、機能訓練、健康管理など全般的なサービスを受けられる、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)などがあります。*5

ただし、特別養護老人ホームは公的施設であり、誰でも入所できるわけではありません。

要介護3以上に認定されている必要があるため、注意が必要です。*6

 

そのほか、訪問介護や訪問看護などの「居宅サービス」や、夜間対応型訪問介護などの「地域密着型サービス」もあります。

 

〇要支援1~2

要支援1〜2に認定された場合は、これ以上状態が悪化しないように、予防サービスを受けることになります。

介護予防訪問看護や介護予防通所リハビリなどの「介護予防サービス」、介護予防小規模多機能型居宅介護などの「地域密着型介護予防サービス」が代表的です。

 

〇非該当者

要支援・要介護認定非該当者は、サービス事業対象者が運営する、訪問型・通所型のサービスや、全ての高齢者が利用可能な介護予防普及啓発事業などのサービスを受けることができます。*7

 

このように、要支援・要介護などの認定状況で、受けられるサービスは変わるのです。

サービス利用者の費用負担

特別養護老人ホームなどの居宅サービスを利用する場合は、支給限度額が要介護度別に定められています。

要支援1の場合は50,320円、要介護5の場合は362,170円です。

引用)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等 <居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額>」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 

限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、1割(一定以上所得者の場合は2割又は3割)の自己負担があります。

限度額を超えてサービスを利用した場合は、超過分が全額自己負担となります。*8

 

厚生労働省が発表している施設サービスの自己負担額は、特別養護老人ホームの場合でも10万円を超えます。

個室を利用する場合は14万円超と、介護保険制度を利用しても多額の自己負担があるのです。*9

自己負担を抑えるための便利な制度紹介

上記で解説したように、介護には多額の自己負担が発生することがあります。

ここでは、自己負担を抑えるために、知っておくべき制度をご紹介します。

高額介護サービス費

福祉用具購入費や食費・居住費などを除く、月々の利用者負担額の合計額が、所得に応じて決められた上限額を超えると、介護保険から支給されます。

支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です。

所得に応じた設定区分は4段階に分かれます。

例えば、生活保護を受給している場合は個人で15000円、市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満の場合は世帯で44400円です。*10

高額医療・高額介護合算制度

同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険両方に自己負担が生じた場合は、合算後の負担額が軽減される制度です。

決められた限度額(年額)を500円以上超えた場合、医療保険者に申請をすると超えた分が支給されます。

この制度は年齢と年収によって負担上限額が異なります。

自己負担額が最も高いのは年収約1,160万円で212万円、最も低いのは市町村民税世帯非課税かつ年金収入80万円以下等(本人のみ)で19万円です。*11

 

介護費のみでの自己負担額が低く「高額介護サービス費」の支給が受けられなくても、医療費と合算することで「高額医療・高額介護合算制度」の支給が受けられるかもしれません。

お住まいの市区町村の対応窓口や、加入医療保険組合に問い合わせてみてください。

介護サービスの利用方法

最後に、介護サービスの利用方法について解説します。

介護保険制度を利用したサービス利用の場合、まず市区町村の窓口で介護認定を申請し、調査、判定を受ける必要があります。

調査内容は、認定調査員における本人や家族への聞き取りや、主治医による意見書などです。

認定結果通知受領までには30日ほどかかるため、即日認定を受けられるわけではないことを覚えておきましょう。

 

その後、要支援1〜2または要介護1〜5に認定された場合、ケアマネージャーに相談しながら利用サービスを決定し、ケアプラン作成を依頼します。

全ての処理が完了すると、サービスが開始となります。

 

このように、介護保険制度を利用してサービスを受ける場合には、1ヵ月以上の時間を要することが一般的です。

できるだけ早く利用を開始したいなどの希望がある場合は、事前に申請をしておくとよいでしょう。*12

まとめ

安くはない介護保険料を支払っているにもかかわらず、制度内容を正しく理解していないと、損をすることがあります。

これでは、介護が必要になった時に、慌ててしまいかねません。

ぜひご自身の知識を増やし、利用できるサービスや制度を最大限活用していきましょう。

本稿がその助けになりましたら幸いです。

 

 

*1

出所)厚生労働省「介護保険とは」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/about.html

 

*2

出所)厚生労働省「介護保険制度について 厚生労働省(40 歳になられた方へ)」 p1

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf

 

*3

出所)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 

*4

出所)厚生労働省「介護保険制度について 厚生労働省(40 歳になられた方へ)」 p1.2

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf

 

*5

出所)厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順 認定後の介護サービス利用」p12

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf

 

*6

出所)厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)特別養護老人ホームの重点化」

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663498.pdf p14

 

*7

出所)厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順 認定後の介護サービス利用」p12

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf

 

*8

出所)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等 <居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額>」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 

*9

出所)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等 <施設サービス自己負担の1ヶ月あたりの目安>」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 

*10

出所)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等 <高額介護サービス費>」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 

*11

出所)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等 <高額医療・高額介護合算制度>」

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

 

*12

出所)厚生労働省「介護保険制度について 厚生労働省(40 歳になられた方へ)」 p3

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf

この記事を書いた人

齋藤佑美/FPかぴさん主に保険を中心にお金のことについてブログを執筆中。大手コスメ紹介サイトの営業を経て、保険ショップへ転職。マネージャーを歴任。現在はフリーライター・シナリオライターとして独立。AFP/FP2級/TLC取得。「難しいを分かりやすく」がモットー。お金で損するのが大嫌いな2児の母。

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