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更新日:2022.12.22その他交通事故の後遺症が残ったら|損害賠償請求の内容・金額・手続きを解説

交通事故によるケガが完治せずに後遺症が残った場合、治療費・リバビリ費のほか、後遺障害慰謝料や逸失利益の損害賠償を請求できます。後遺症の内容次第では、損害賠償額が数千万円から数億円に上ることもあるため、主治医や弁護士と相談しながら対応をご検討ください。

今回は、交通事故の後遺症に関する損害賠償請求について、知っておくべき基礎知識をまとめました。

交通事故被害の主な損害賠償項目

交通事故によってケガをした場合、ケガに伴って発生する損害については、加害者に対して賠償を請求できます(民法709条)。主な損害項目は、以下のとおりです。

(1)治療費

治療のために医療機関に支払う費用です。

(2)通院交通費

通院のためにかかる交通費です。公共交通機関の運賃のほか、必要性があればタクシー代なども含まれます。

(3)付添費用

入院中に家族が付き添った場合の日当相当額、または職業付添人に支払う報酬です。

(4)入院雑費

入院中における日用品などの購入費用です(日額1,500円程度)。

(5)休業損害

ケガの治療やリハビリのため、仕事を休んだことによって失われた収入です。

(6)装具・器具購入費

義歯・義手・義足・眼鏡・車いす・コルセット・サポーターなどの購入費用です。

(7)介護費用

要介護となった場合に、将来にわたってかかる介護費用です。

(8)入通院慰謝料

ケガの治療のために、入院・通院を強いられたことにより被った精神的損害です。

(9)後遺障害慰謝料

後遺症が残ったことにより被った精神的損害です。

(10)死亡慰謝料

死亡したことによる、本人および遺族の精神的損害です。

(11)逸失利益

後遺症または死亡により、将来にわたって失われた収入です。

 

後遺症が残ったら後遺障害慰謝料・逸失利益|高額になるケースも

交通事故のケガが完治せずに後遺症が残った場合は、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の損害賠償を請求できます。

後遺障害慰謝料は数百万円から数千万円、逸失利益は数千万円から数億円と非常に高額になることもあります。

後遺障害慰謝料の金額目安

後遺障害慰謝料は、損害保険料率算出機構が認定する後遺障害等級に応じて、以下のとおり金額の目安が決まっています。

 

後遺障害等級は、後遺症の部位や症状・程度に応じて、後遺障害等級表*1に従って認定されます。

重症の場合はもちろん、痛みやしびれが残った程度であっても、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。

 

逸失利益の計算方法

逸失利益は、交通事故当時の年収(基礎収入)、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率、平均的に働くことのできる残りの期間(労働能力喪失期間、原則67歳まで)の3つの要素によって計算します。

逸失利益

=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数*2

 

たとえば、交通事故によって重度の高次脳機能障害(後遺障害3級)が残った方が、事故当時35歳、年収400万円だったとします。この場合、逸失利益は8,155万6,000円(=400万円×100%×20.389)と非常に高額です。

 

交通事故の後遺症について、損害賠償を請求する手続きの流れ

交通事故の後遺症について、加害者側に損害賠償を請求する際には、以下の手続きをとることになります。適正な損害賠償を受けられるように、主治医や弁護士に相談しながらご対応ください。

主治医から症状固定の診断を受ける

後遺症が残っているケースでは、損害賠償請求は「症状固定」の診断を待ってから行います。

症状固定とは、ケガの治療を続けたとしても、これ以上良くならないと医学的に判断される状態です。治療経過などを考慮して、主治医が症状固定の診断を行います。

 

症状固定の時点で後遺症の内容が確定するため、後述する後遺障害等級の認定を受けられるようになります。

なお、症状固定の診断を受けると、それ以降の治療費(通院費)は損害賠償の対象外となります。

 

治療費の支払いを打ち切るために、加害者側(保険会社)が「そろそろ症状固定にしませんか」などと言ってくることがありますが、決して応じてはいけません。症状固定の診断は、あくまでも主治医が医学的に判断するものだからです。

後遺障害等級の認定を受ける

交通事故の後遺症について損害賠償請求を行う際には、事前に後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

 

後遺障害等級の認定は、自賠責保険会社を通じて申請します。自賠責保険会社は、申請者から受け取った書類を損害保険料率算出機構に回付し、同機構にて審査が行われます。

 

申請方法には、加害者側の任意保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自ら書類を揃えて申請する「被害者請求」の2種類があります。 事前認定の方が手間は省けますが、被害者主導で手続きを進められる被害者請求の方が、適正な等級の認定を受けられる可能性が高いと考えられます。

 

後遺障害等級の認定に当たって、もっとも重要な資料となるのが「後遺障害診断書」です。 後遺障害診断書には、主治医が後遺症の部位・症状・程度などについて、医学的な意見を記載します。

 

後遺障害等級の認定要件を踏まえた記載がなされるように、主治医とコミュニケーションを取りながら準備することが大切です。

加害者(保険会社)と示談交渉を行う

後遺障害等級の認定を受けた後、実際に加害者側に対する損害賠償請求を行います。

 

いきなり訴訟を提起するのではなく、まずは加害者側と示談交渉を行うのが一般的です。示談交渉の相手方は、加害者が任意保険に加入していれば保険会社、未加入であれば加害者本人となります。

 

被害者としては、被った損害をすべて集計・合算して、漏れなく請求することが重要です。また、加害者側は適正水準よりも低い損害賠償額を提示してくる可能性が高いので、惑わされてはいけません。

 

判断に迷う場合は、弁護士へご相談ください。

 

なお、交通事故の示談交渉では、当事者間の過失割合が問題になることがよくあります。

 

過失割合が少し違うだけで、損害賠償の金額に数百万円程度の差がでることもあるため、重要な問題です。   過失割合は、「交通事故損害賠償算定基準」または「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」*3という書籍を参考に定めるのが一般的です。しかし、事故状況について当事者双方の見解が分かれている場合は、示談交渉が決裂する可能性が高くなります。

裁判所に訴訟を提起する

加害者側との示談交渉が決裂した場合は、裁判所に訴訟を提起して、損害賠償の金額等を争うことになります。

 

訴訟では、交通事故によって損害を受けた事実を、被害者側が立証しなければなりません。

 

したがって、損害に関連する客観的な資料を、十分に準備できるかどうかがポイントです。

 

訴訟における主張構成の検討、証拠の収集、裁判所に提出する書面の作成などを行う際には、事前に弁護士の無料相談などを利用することをお勧めいたします。

参考文献

*1出所)国土交通省「後遺障害等級表」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html  

 

*2出所)国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf  

 

*3出所)公益財団法人 日弁連交通事故相談センター「当センターの刊行物について(青本及び赤い本)」 https://n-tacc.or.jp/book  

この記事を書いた人

阿部由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

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